そのフラグは誰がために
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「ねぇステラ? どうせならご褒美をつけましょうよ。その方がやる気も出るでしょう?」
ニヤリと笑ったシルビアが私を挑発的に見つめた。
「ご褒美?」
私は首を傾げる。
「そう。試験結果の良かった方がナターシャを一日独占するの! その間負けた方は邪魔しない約束で」
「その勝負、乗ったっ!!」
「じゃあステラ、正々堂々戦いましょう。ま、健闘を祈ってあげるわ」
「シルヴィーこそ、負けても恨みっこなしだからね!」
言い合いながら、ぐぐぐぐぐぐっと額を近づけて力いっぱい笑い合った。その瞳に威嚇が含まれているのはお互い様だ。固い握手を交わし、これまたお互いに力いっぱい握り合うと、どちらともなく背を向け歩き出した。……戦いの火蓋は切って落とされたのだ。
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「ねぇ師匠……。何か隠してるでしょ?」
数日かけた試験が漸く全て終了した瞬間、私の席へ猛然とやってきたシルビアとステラの剣幕が物凄くて咄嗟に逃げ出してしまった私は現在、教室の見える天井裏でソウガを問い詰めていた。声を殺して笑いにお腹を引き攣らせている師匠をギロリと睨む。取り合ってくれないソウガに苛立ちで圧を増せば「待った待った」と指を広げた手の平を突き出された。
「隠すも何も……見たまんまだろ、姫さん?」
「……包み隠さず経緯を詳らかになさい。怒らないから、ね?」
「いやぁ……もう、姫さん怒ってますよねぇ……」
師匠は乾いた笑いで誤魔化そうとしてるけど、逃がさないんだから! 私がそんな意思を込めてソウガの服の裾を掴めば「へ~へ~」と楽しそうに肩を竦められた。……そのにやけた瞳をどうにかして!
「ん~……何と説明すればいいのか。あ~……姫さん、愛されてんなぁ?」
「……師匠?」
「わわ! そう睨むなって。可愛い顔が台無しだぞ……ってゴメンナサイ!! 話します話します!!!」
尚もおちゃらけるソウガに兄様直伝のブリザードを吹かせてみれば漸く師匠が素直になった。全く、最初からそうしてればいいのに。
「嬢ちゃん二人とも、姫さんの一番になりたいんだと」
「はい?」
真剣に耳を傾けていたのに、師匠から飛び出た言葉は予想外の意味不明さで。思わず飛び出た私の上ずった声が静寂に響いた。慌てて自分の口を両手で塞ぐ。数秒停止して落ち着いてみたものの、齎された答えを理解する事が出来ない。私は続きを促す様に上目遣いでソウガを見やった。師匠はクツクツと喉の奥で笑っている。
「あー、なんつうか……ガキの張り合い? 姫さんの親友は自分だ~って主張してる内に、どっちが上か勝負しようって話になって、その景品が姫さんってわけ」
「全然分からないわ……」
私は頭を抱える。……何だが頭痛がしてきた。私は痛みを堪えて目を瞑った。そのままやり過ごそうとしていると、だんだんお腹の底が沸々としてくる。
シルビアは元々勝負好きだ。誰彼構わず挑むので尻ぬぐいに奔走したのは苦い思い出として残っているが、年頃になって随分落ち着いていたのに……。私以外の女友達が出来てはしゃいで幼児化したのだろうか? 大体景品が私って何だ。意味が解らん。本人の承諾も無く変な事を勝手に決めないで欲しい。そもそも、教室内で大声を上げて悪目立ちするとかやめて欲しい。勝負でも喧嘩でも何でも構わないけど、そこに私を巻き込まないで! ……うん、何だか腹が立ってきた。
私は感情のままにすっくと身を起こした。
「ひ、姫さん……? お、落ち着いて……な? どうどう!」
何だかソウガの顔色が悪いけれど、私はとっても冷静ですが? 大丈夫だと微笑んで見せれば「ヒッ!」と叫ばれた。解せぬ。
「私、二人とちゃんと話してくるわね」
何だか震えているソウガを捨て置いて、私は天井裏を後にした。眼下では未だワーワーとシルビアとステラが言い合っている。私は二人に見つからないようにコッソリとクロードの傍に降り立った。
「わ!? ……何だ、アーシェか」
「し!」
突然湧いた私にく~ちゃんが驚いたけど、すぐさま人差し指を口の前に立てて制する。私の不穏な気配を感じ取ったのか、く~ちゃんは訝し気にしつつも素直に応えてくれた。
「く~ちゃん、あそこの二人を東屋に呼び出してくれない?」
「……私にあの中へ入って行けと?」
「く~ちゃんしか頼れないの! ね? お願い!!」
渾身のおねだりポーズで下から見上げれば、クロードが「う」と小さく呻いた。うるうると暫く見つ続けると、右へ左へ瞳がうろうろ振れていたクロードが観念したように大きなため息を落とした。ついでにがっくりと肩も落としている。
「……アーシェは、ズルい」
「え?」
あまりにもぼそりと言われたのでよく聞き取れずに聞き返せば「何でもない」と白を切られた。
「しょうがない。上手くやるから安心しろ。アーシェの頼みだからな」
眉の下がり切った困り笑いなのに、どこか嬉しそうにも見える表情でく~ちゃんが席を立った。途端真面目な顔つきになる。クロードは動き出す刹那に屈んだままの私の頭をサラリと撫でて、サッサと行けと手を振った。視線は言い合う二人を見据えたままで。……やだ、ウチのく~ちゃんが男前に育ってます!
きゅんとときめきつつ教室から忍び出れば、
「其方たち、何を騒いでいるのだ」
背後でく~ちゃんの声が響いた。
ありがとう、く~ちゃん!
短め続きでゴメンナサイ。次話でこの章ラストです(><;)




