つながり
お待たせしました!……が、またまた短くてすみません(> <;)
ブクマ&評価もありがとうございます!お陰さまで、またチラホラと日間や週刊ランキングにのっかるようになったようです(大歓喜)
完全に人目を忘れて嗚咽を繰り返すステラは滂沱する涙を止められないようで、手を握られたままで動けず、状況の掴めないミケルが半泣きで私に助けを求めてきた。……う~ん、どうしようかな。当人の目には入っていなくても、突然声を上げて泣き出したステラは衆目の的になってしまっている。
ミケルの視線の意図を汲んだうちの子たちの視線が自然と私に集中した。
「……はぁ。僕が知っている事もそう多くはないけど、分かる範囲で話すよ。とりあえず、一旦外に出よう」
私が周囲を見回して肩を竦めると、仲間たちがステラを囲むようにして衆目から隠してくれた。察してくれたミケルも苦笑しながらひとつ頷くと、「お姉ちゃん、行こう?」と優しくステラを誘導しだす。戸惑いの抜けないハルマを強引に促して私たちは一度外へ出た。そのまま「孤児院の方へ行こう」と言って進路を決める。目的地が定まれば、団子のように固まったままのろのろと移動を始めた。
「ほんで、ステラがこうなった理由をお前が知っとんのか?」
少しの間、ステラの嗚咽を残し私たちを包んでいた気まずい沈黙を、ハルマが終わらせた。いつもの威勢は感じられず、完全に弱りきった張りの無い声音だ。
「私がお嬢様の命を受けてイースン家へステラ様の話をお持ちしたのは覚えていらっしゃるでしょう?」
数年前、ハルマにあれこれレクチャーしたのは私だ。ハルマは静かに頷いてちょっとだけ眉を顰めた。
「……今は公式の場じゃない。ダンデも昔みたく砕けた言葉でええ」
「おや? 昔もそれ程態度を崩していた記憶はないのですが……?」
私が器用に片眉だけ上げると、ハルマが嫌そうに手を振って先を促した。私はそれに小さく笑って話を戻す。
「続けるけど、平民であるステラが貴族学園に入学できるように根回ししたのはナターシャ様なんだ」
私の投下した暴露話にハルマ以外のうちの子たちが目を瞠った。しかしステラとナターシャの繋がりが分からなくて戸惑っている。私は静かにミケルを見つめた。
「ねぇミケル。僕が君に渡した手紙を覚えてる?」
「手紙って、魔法の手紙?」
すぐに返事をしたミケルが首を傾げるのに肯定して見せると、ミケルは当時を思い起こす様に少し遠い目になった。ミケルのくりくりした赤目が懐かしさに細まる。すると回想から正解を得たようでハッと私を見上げた。それに優しく頷く。
「ミケルは多分間違ってないと思う。……これは僕の側から見た予想だから、詳しくはステラに聞かなきゃわからないけど。恐らく全ての始まりは僕がミケルに渡した手紙だと思う」
そう言って私はゆっくりと思い起こす。
思い出しながら情報を整理しつつ、ひとつひとつを口の端に乗せた。
……ダンデハイムの領地視察でミケルと仲良くなったこと、ナターシャたちが領地での社交の中で偶然ミケルの母を引き抜く話になったこと、受け入れ準備が整うまで万が一が無い様にナターシャが配慮してダンデハイム家への直通の連絡手段を残したこと、それがミケルが知る手紙であったこと。
元々手紙を管理していたのは母親のハンナだし、当時のミケルは小さくて記憶も曖昧だろう。私は都合よく時系列を歪め改変した事情を皆に聞かせた。勿論、領地で起こったいざこざは暈した。
うちの子たちにはダンデがナターシャの影として動いていると説明してあるので、ここまで特に不審に思うでもなくふんふんと聴き入っている。
そのまま「ここからは報告をまた聞きした形になるんだけど」と前置きして再びミケルと目を合わせた。
「ミケル、君がダンデハイムの領地から引っ越してくる道中でステラにその手紙を譲ったんでしょう?」
「うん」
すっかり思い出したミケルは力強く頷いた。それにレイが非難めいた悲鳴を零す。
「え!? そんな大事そうなものを行きずりの他人に渡したのか!!?」
状況だけ淡々と聞くと確かにそうなる。ミケルが困り顔になって説明した。
「知らなかったんだ。僕はダン兄ちゃんに『願いを叶える魔法の手紙』って言われて信じてたし、信じられないかも知れないけど僕の願いは叶ったんだ。だから道中の休憩場所で偶然出逢ったお姉ちゃんがすごく困って悲しんでいるのを知って、魔法の手紙をあげたんだ。僕の願いは叶ったからって」
「だからって……」
呟いたレイの言葉は続かなかった。ミケルの性格を知っているので、手のかかる弟を優しく見守る様な苦笑を浮かべて肩を竦めるに止めたようだ。私も労わる様にミケルの頭をぽんぽんと撫でながらうちの子たちを見回した。発言権が戻ったのを感じてまた言葉を紡ぐ。
「その手紙を受け取ったのがステラで、彼女が望んだのが教養と貴族学園への入学だった。速やかに報告が旦那様に伝わり、お嬢様の承認を経てステラをイースンに預ける事になったんだよ」
「じゃあ、お姉ちゃんの願いは叶ったんだね!」
自分の仕出かしたことの大きさに不安を浮かべていたミケルが話の帰結に破顔した。漸く落ち着いてきたステラが赤くなった目元を緩めて微かに笑み、ハルマが面白くなさそうに鼻を鳴らした。
漸くほんわりと空気が緩んだ頃、私たちは孤児院に到着し、子どもたちに先導されながら広間に入った。
オフ生活の都合上、中々更新が進まず心苦しい毎日ですが、短くとも出来る範囲で更新を続けますので気長に待っていただけると幸いです(涙)




