新たな関係図
暫く覗かない間に、日間ランキングが300位まで見られるようになっていたのですね!? 以前は総合しか300位まで表示されなかったので驚きました。
そしてそして、ここ数日、どうやら日間100位以内に入っていた模様。私が確認した時は75位あたりでした。ブクマ&評価して下さった皆様、ありがとうございます。
短くても良いから更新して欲しいという要望があった為、導入部分のみですが上げさせて頂きました。
「ねぇナターシャ、こうして一緒に出掛けるのも何だか久し振りね!」
向かい合って座る馬車の中で、シルビアが私を向いて晴れやかな笑顔を見せる。
「そうね。……でも、到着したらナターシャではなくダンデって呼んでね?」
「分かってるわよぅ……」
簡易のお忍びドレスからダンデ姿に着替えた私が苦笑しながら釘を差すと、シルビアは口先を尖らしてちょっとむくれた。
クロスネバー学園に入学して一月が経とうとしていた。新生活にも漸く慣れてきて、学生生活のライフワークも固まり出し、やっと生まれだした余裕を利用して、安息日である本日、久々に『木漏れ日の丘』へ向かっている道中だ。マル爺やミケルたちは元気にしてるだろうか。
ガタゴトと揺れる馬車の中、シルビアと楽しくお喋りしている内に丘の上に到着した。
「あ。」
開けられた馬車の扉から待ちきれず真っ先に下り立とうとしたシルビアが中途半端な体勢で不自然に動きを止めた。私が首を傾げて「シルビア?」と声をかければ、酸っぱいものを飲み込んだような何とも言えない表情のシルビアが私をチラリと振り向く。その瞬間だけ思いっきり眉を八の字にした情けない顔を見せたと思えば、サッと表情を引き締めたシルビアがスッと姿勢を正してタラップを降りていった。……どうやらお嬢様を取り繕わなきゃいけない相手が外にいるらしい。私もキュッと気を引き締めて後に続いた。
タラップに足をかけ、すぐそこの眼下に見えたのはユーリ。その隣には何故かステラとハルマがいて、私を見上げて興奮気味のステラと違い、ニコニコとシルビアを見ていたハルマが私に視線を移した瞬間不愉快そうに顔を顰めた。
「おい、お前。同乗してるなら何でレディをエスコートせんねや」
私はハルマにギッとキツく睨まれつつ感心に目を瞠る。慣れた場所に行くという油断と慢心があったのは確かだ。ここは素直に謝罪した方が良い。だって私は今ダンデなのだから、女性をエスコートしていない現場を目撃されたのは非常にマズい。女の子好きの――そうでなくても紳士として――ハルマが怒るのは当然なのだ。
地面に両足が着くと私はピッと姿勢を正した。従者然として折り目正しく謝罪に頭を下げようとして――
「あなた、誰?」
生意気に顎を上向けたシルビアの敵意むき出しの牽制に阻まれた。ハルマが私に飛ばした叱責に腹を立てたらしいシルビアが早くも臨戦態勢になっている。自己紹介をするより早く、正しい事を言った自分に向けられたシルビアの怒りにハルマの表情が困惑に歪む。ユーリが興味深げに成り行きを見守る中、緊迫した空気に気付いたステラが慌てて私たちの間に割って入った。
「シルヴィー、ごめんなさい。こいつに悪気は無いの、許してあげて?」
シルビアからハルマを背に隠すようにしてステラが庇う。後ろで面白く無さそうにハルマが渋面を作り、それに気付いたシルビアの醸し出す空気の温度が下がっていく。「ヒッ」とステラが顔を青くした。
「シルヴィー、そこまで。ユーリも少しはフォローして。……ハルマ様も久しぶりですね。再会を喜びたいところですが、まずは謝罪させてください。ハルマ様の言う通り、私の落ち度により不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」
視線を落とし、少しだけ上体を前に倒す。遜らないように気を付けながら真っすぐにハルマを見れば、腕を組んだハルマが鼻を鳴らした。「ちょっと!」とステラが困った顔でハルマを小突いている。私はシルビアの正面に立つとしっかりと彼女と視線を合わせた。
「シルヴィー、この状況で悪かったのは僕だ。それは解るよね?」
一度目を閉じて思考したシルビアが素直に肯いたのを見ながら私は苦笑を漏らす。「ありがとう」と小声で庇ってくれたお礼を言えば、不満そうな顔のシルビアがそっぽを向いた。膨れているが、もう怒っていない事は軟化した態度で分かっている。照れ隠しの方法が一々可愛いシルビアに癒されながら、私は改めて後ろを向いた。
「さてユーリ。色々と説明してくれるんでしょう?」
にこりと笑んだ私に、笑顔を返すユーリの口端が僅かに引き攣った。
出来るだけ早めに続きを更新できるように頑張ります(涙)




