ステラ meets ユーリ
お久しぶりです!
そしてブクマ900突破、ありがとうございます!!
中々更新出来ずすみません><
今回ちょっと短いのですが、更新を優先にして中途半端に切りました……(悔泣)
平民という身で入学初日に社交界へデビュタントを果たした私は、平民でありながら社交界へ参画する資格を有している。というのも、それがクロスネバー学園の学則だからである。
クロスネバー学園の門戸を叩いた者は須く貴族に準ずる身分が与えられ、学生の間はよっぽどのことがない限りその恩恵から外される事は無い。
平民である私は本物の子息令嬢のように自身がホストとなってお茶会やホームパーティを開くことはできないけれど――とてもじゃないけどそんな資金は持っていない――、大きな夜会や国家行事にはしっかり招待状が届くため参加しなければならなくなった。……義務として国からの招集命令に背くことなど出来ないから。しかし、社交界とは貴族の世界。一介の平民が身支度を贖うのは簡単なことではないのだ。
では私はどうやって資金調達しているのか。
答えは『イースン家で労働に励む』だ。
下働きから始まり、学園入学を目指して必要な教養を身につけた私は現在、イースン家の侍女見習いまで出世している。学業との両立で目が回る忙しさだけれど、その分給金は中々のもので、長年コツコツと積み立ててきた貯金が学園での私の運営資金だったりする。
そんな生活を送る私は、特別手当に目が眩み、今夜はハルマの付き添いとして、ハルマのクラスメイト主催の夜会に参加していた。
「今晩はお招き頂きありがとう、ラッフェル嬢」
「こちらこそ、来て頂けて光栄ですわハルマ様。精一杯の持て成しをご用意しましたので、楽しんでいらしてね」
キラキラと胡散臭い笑顔を振りまくハルマに決まり文句を返すラッフェル嬢。にっこりと笑んだ彼女がハルマの腕につかまっている私を向いた。貴族らしい笑顔を貼り付けているけれど、その瞳の奥の奥で私を値踏みするように見ているのに気づいて背中が粟立つ。……怖い。
「ハルマ様? エスコートなさっているこちらの方も紹介して下さいまし」
「失礼。ご紹介が遅れました。こちらはステラ嬢。縁あって我が家で預かっています」
「まぁ! では貴女があの特待生なのですね?」
ラッフェル嬢がわざとらしく目を瞠るのに白々しさを感じつつ、私は愛想笑いを消さない様に表情筋に力を込めた。
「ラッフェル様、初めまして。ステラと申します。御目文字出来ましたこと、光栄に存じますわ」
するりとハルマの腕から手を放し、一歩下がってカーテシー。ラッフェル家は子爵位。伯爵家子息のハルマより家格は下だが、社交界において現状最下位の私は誰に対しても上位者に対する振る舞いが求められる。今日はハルマのパートナーとして出席しているが、婚約者でもない私はあくまでハルマの介添え人。誹謗中傷も甘んじて受けなければいけない身分なのだ。
ラッフェル嬢が格下を嘲る視線を向けていても、気づかぬふりで従順に跪く私の姿勢に満足した彼女は、すぐに私への興味を無くしハルマと会話を続けた。
「……そうそうステラ様、あちらには我が家自慢の料理長が腕によりをかけたご馳走がならんでおりますの。きっと満足して頂けると思いますので、是非ご賞味下さいな」
ハルマに向かっていた楽し気な声より少し低くなった声音で、ラッフェル嬢が私をチロりと流し見た。
(あ~、はいはい。邪魔だからどっかいけってことね?)
貴族らしい牽制に内心で溜息を落としながら私は微笑み続ける。「それは楽しみですわ」と喜ぶふりをしてこの場を辞する為の礼を取ると二人に背を向けた。瞬間少しだけ焦りを浮かべたハルマに呼び止められたけれど、「色々とお付き合いがございますでしょうから、また後程」とにっこり笑んで黙らせた。ハルマはもっと女の世界の厳しさを知った方が良いと思う。数歩歩いた先で自然と眉間に力が入る。ふと、何度も背に庇われた緋色の髪を思い出して会場を見回した。……ナターシャが招かれていたりしないだろうか?
キョロキョロと辺りを見回していると、背後から声をかけられた。
「ねぇ君。そんなに辺りを見回して、誰か探しているの?」
そんなにあからさまだったろうかと恥ずかしく思いながら振り返り、声の主に焦点を合わせて固まった。
目の前に現れたのは、くるりと巻かれた萌黄色の長髪を豪奢なリボンで一つに結わえた美青年だったのだ。
「君、デビュタントの時もそうして一人でキョロキョロしてたでしょう?」
クスクスと上品に笑う唇は緩く弧を描き、優しく細められた目尻が垂れている。その左目尻にある黒子が何とも言えない色気を出していた。新緑色の瞳が、新しい玩具を見つけた子供のように煌めいているのがまた絶妙なアンバランスさで、彼の清廉な佇まいに背徳的な妖艶さを醸し出していた。
麗しの貴公子に見惚れて何も言えずに立ち呆けている私を、「ああ、そうか。先に私が名乗らなくっちゃね」と身分違いで声が出せないと勘違いしたようで、美青年が優雅にお辞儀をした。
「私はユーリ。サリュフェル家の者です。さて、特待生のお嬢様、貴女の事も教えていただけますでしょうか?」
顔だけ正面に持ち上げてふわりと笑んだ貴公子の甘いマスクに、私の全身が沸騰したのが判った。
はい。そんなわけで、続きを出来るだけ早く上げたいのですが、ままならない感じでお約束出来ないのが現状です(涙)
不定期更新の中、お待ち頂いております皆様には本当に感謝しております。
誤字報告や、評価も大変ありがたいです!!
次話ものんびりお待ち頂けると幸いです。
宜しくお願い致します<m(_ _)m>




