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嬉しいです!ありがとうございます(T▽T)頑張りますっっ!!!
今回はステラのターン☆
入学式が終わり指定された教室に入ると、既に到着していた生徒たちがまばらに散らばっていた。
(……はぁ。ハルマは別のクラスかぁ)
心細さから自然と肩が落ちる。いやいや、寂しくなんかないもん! あいつが居ない方がうるさく無くて良いってものよ! 首を振ったり頷いたり一人忙しくしながら顔を上げた。
とりあえず空いている席を自由に選んでいるようだ。王都在住の人が多いからだろう、殆どが顔見知りの様で仲良さげに話し込んでいる。
私は教室の前扉から対角線上に一番離れた席に腰を下ろした。中の生徒数よりも空席の方が多いので、――これから続々と入室してくるだろう――これから一緒に過ごすクラスメイトの顔を拝もうと思ったのだ。
私はぼんやりと遠目を装いながら一人二人と到着する人達を観察する。程なく廊下が騒がしくなりその音が近付いてくると、明らかに扉の枠に入りきらない団子状の一団がぎうぎうと押し合いながらねじ込まれてきた。
(何あれ!? 何で誰も場所を譲らないの?)
スポン! と音が聞こえそうな態で団子が室内に入ってきた後ろから一人の男子が悠々と扉を潜った。団子壁の隙間からその気配が見てとれて、私は興味本位で首を伸ばす。瞬間、ザっと人垣が割れてお目見えしたのは金髪碧眼長身の超美男子だった。
(あ……あれ……第二王子殿下…………?)
あんな雅な人物を見間違うはずが無い。忘れようにもついさっき新入生代表として答辞を務めたその雄姿を拝んだばかりだったのだ。
(ウソっ!? 同じクラスっっ!!? マジ!!!??)
思わずあがりそうになった悲鳴をすんでのところで呑み込んだ。
優秀な王太子殿下を支える弟殿下は武に優れ、その偉才を遺憾無く発揮しながら敬愛する兄殿下に一心に仕えているという話はこの国内では有名だ。かくいう私も、一昨年から丸一年かけて起こった異常気象の被害地域への支援活動の話を聞いて酷く感動した口だった。そんな素晴らしい方と同学年というだけでも頑張って勉強した甲斐があるというものだけれど、さらに同じクラスだなんて!やだどうしよう!!
私は勢いのまま席を立つと、クロード殿下がお掛けになる席を選び終えたのを待って再び出来上がった人垣の中に加わった。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆
オリエンテーションの最中、私はとある人物が気になって仕方がなかった。クロード殿下では無い。『ナターシャ・ダンデハイム』確かにそう自己紹介した彼女は見事な深紅の髪を持つと~っても可憐な少女だった。
(……何よりあのクレハ奥様にも負けない爆乳! ほんとに同い年!!?)
思わず胸部を両手でそっと覆ってしまう。……うん。私は標準。あの子が規格外!
いや、豊満な胸に目を引かれたわけじゃない。そうじゃなくて、
(あれがハルマの肖像画の君かぁ……)
まさか彼女とも縁が繋がるとは思ってなかった。
クロード殿下以上に彼女の事は一方的に知っていた。何故なら事ある毎にハルマが彼女の肖像画を見せびらかしては私と比較するから。どういうわけか毎年更新されるその肖像画を後生大事に眺めては、やれ『美姫』だの『理想の女の子』だの、会ったことも話したことも無い女の子へ勝手な妄想を押し付けるハルマにドン引……げふげふ。呆れて閉口したものだ。……そういえばその肖像画も一昨年が最新のまま止まってたな。
(そうよ。最後に見た肖像画の彼女はまだつるぺただったわ!)
何という人体の神秘! 成長期にも程があるでしょ!! 何食べたらそうなるの? 教えて欲しいわ~。
……ってそうじゃなくて。
ストンと背中に流れる一つのうねりも無い真っすぐな艶髪を眺めながら思う。ダンデハイム。彼女の家名。いつだったかハルマが教えてくれた。イースンの寄親であるダンデハイム家は、王国の東側の広大な土地を治めている。私が生まれ育った北の辺鄙な村もダンデハイム家が総領主として統治していた……。
(ノーサル様……)
私がこうして今ここにいられるのは、ダンデハイム領の北の寄子であるノーサル家当主様のお陰だ。私が特待生となれたのは彼の家が後見についてくれたから。そしてその発端となったのがこのナターシャ嬢だというのだ。私が天使様から授かった魔法の手紙、それは彼女のものだった。開封していないので私は中身を知らない。でも彼女の手紙が無ければ私みたいな貧乏人は見向きもされず、こんなに沢山の人から助力されなかっただろうとはノーサル様の言だ。彼は私の後見につくにあたって事のあらましを簡単に教えてくれた。
私を最初に助けてくれた天使様。彼との関係も気になるけれど、私の幸運の始まりが彼女だというのならまずはお礼を言いたい。
つらつらと物思いに耽っている内にオリエンテーションが終わっていた。そして、ナターシャが席を立ったのを追いかけた。物思いの最後が『彼女にお礼を言いたい』ってところで途切れたので半ば反射だったのだ。そんなナターシャはいつの間にか教室を出ようとしていたので慌てて声をかけた。
「ねぇ、貴女、ナターシャ・ダンデハイム?」
夢中の考えなしの行動だったから変な風になってしまった。振り返った彼女はとてもびっくりしたようできょとんと眼を丸くしている。そんな表情も可憐なんだから間違いなく美少女なんだろう。
「え、ええ……。早速名前を憶えて頂けたなんて光栄ですわステラ様」
ナターシャはすぐに落ち着きを取り戻してにっこり微笑んだ。深みのある緑色の瞳――まるで森の中みたい――が上品な思慮深さを湛えている。深窓の令嬢とは正しく彼女の事だろう。こうやって私がバカな事考えてる間にも彼女が通行人の邪魔にならないように身をずらしたのに気付いて更に感心してしまう。
(気配りも完璧ってこの子超人? しっかし本当に可愛い子……。肖像画より本物の方が可愛いなんて事現実にあるんだ。瞳なんてまあるくっておっきくてキラキラ宝石みたいだし、肌も真っ白ってか毛穴ないんじゃない!? 髪も超艶々で触り心地良さそうだし。てか指通させてくれないかな、ダメかな……)
「あ、……あの?」
鈴のような声に困惑の色を感じてハッとすると、超間近にド級の美貌。
ヤ ラ カ シ タ !
観察に熱が入り過ぎて現実を忘れてしまったよ傾国か!?
私は慌てて飛びのくと思いっきり頭を下げた! 偉いお貴族様相手に何てことを!! 打ち首だけは勘弁してくださいっ!!
「ご、ごめんなさいっ!つい……」
二つ折りになるくらい深く頭を下げて沙汰を待っていると、すぐにクスクスと可愛らしい笑声が聴こえた。
「いえ、構いませんわ。でも、私に何か御用ですか?」
おずおずと頭を上げればうっとりとするような微笑を浮かべたお姫様が立っていた。……どうしよう、ドキドキしてきた。え? 何で女の子にときめいてるの私? ていうかそもそも何しに来たんだっけ??
軽く錯乱する私を正気に戻したのはとっても馴染んだ声だった。
「おーーーーい、ステラ! 何してん?」
ポンと両肩に手を置かれて我に返る。――馴染んだハルマの手だ――喧しく捲し立ててくるいつもの調子にほっとしたところで、急にハルマの動きが止まった。その視線を追って私も固まる。―――――あ。
ナターシャは少しの間目をパチクリさせてキョトンとした後、訳知り顔になり、不自然な私たちを気遣ったのか優しい言葉を残して帰って行った。そっと握られた手の平はすべすべで柔らかくって、彼女が立ち去った事でこの場が良い香りに包まれていたことに気付いた。
「おいっ! あれ、ヒメやんっ!! ステラ、どういうこっちゃ説明せぇ!!!」
がくがくとハルマに前後に揺さぶられてうっとりした気分をぶち壊された。もう! 放してよっ!
腕を振り上げて私の肩を掴んでいたハルマから離れるとキッと睨みつけた。
「なぁ!! ナターシャ嬢やろ、今の!!?」
必死に言い募るハルマを見て思い出した! そうよ、私は彼女にお礼を言いたかったんじゃないか!!
バッと振り返ると丁度ナターシャが廊下の角を曲がる所だった。
ハルマなんかに構っている場合では無い。この機会を逃したら何だかズルズルと上手く言えない気がする。彼女は目と鼻の先だ。まだ追いつける!
思うが早いか私は走り出した。ハルマもすぐに後ろを追ってくる。二人してバタバタと行儀悪く廊下を駆けて角を曲がった。私はもう一度彼女を呼び止めるために息を吸い込む。が、しかし。
「え……?」
ナターシャを呼び止める為に吸い込んだ息はそのまま感嘆詞と共に吐き出された。
「誰もいない……」
曲がり角の先は見通しの良い回廊が続いている。長く伸びた突き当りに階下へ降りる階段があるが、令嬢然とゆったり淑やかに歩いていた彼女に追い付けないほど距離も時間も経って無かったはず。
「おい、何呆けてんねや! 追いかけるでっ!!」
「え、あ、うん!」
後ろから私を追い越したハルマの背中を追って再び走り出す。外へ向かう階段を駆け下りながら何となく校内ではもう彼女に会えない気がした。
『また後程、……別の機会にゆっくりとお話致しましょう?』
……うん。この後の舞踏会でまた会えるよね?
私は今晩の予定を追加し、頭の中で赤線を引いた。
隠れたいナターシャ(主役)の容姿の進化が凄まじい件。
漸くお披露目出来て作者はご満悦です。どうしても隠せない一部位w
さ、次話以降でドンドン成長したうちの子たちを出していくぞ~!オー――!!




