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インターバル①

 昔々あるところに、オカルトやホラーのたぐいを一切信じない、それはそれは頭のおかたい探偵がいました。


 頭のおかたい探偵は学生のころ物理を学び、最先端の技術を使ったかがく捜査にも精通していました。彼は元来生真面目で、また犯罪行為に憎悪とも呼べるほどドス黒い感情をもっていて、犯人に対して一切のだきょうを許しませんでした。


 一度事件がおきれば、彼はそのナイフのように鋭い眼光で現場をくまなく捜査し、瞬く間に犯人を追いつめました。その手腕には、警察関係者も一目置いていたくらいです。たとえ女性や子供であろうが、有名人であろうが政治家であろうが、理詰めの推理で相手に有無を言わせないその姿は、人々から「推理の鬼」として恐れられていました。


 高校生探偵としてデビューしてから十年間。彼が捕まえた犯人の数は、実に三桁とも四桁とも言われています。彼は毎日毎日その体に鞭打ち、西から東へと奔走し事件を解決して来ました。



 ところが、そんなある日。



 それは、よく晴れた夏の午後に起きました。頭のおかたい探偵はいつものように、殺人事件が起きた古びた旅館に飛んで来て、いつものようにあっという間に殺人犯を見つけ出しました。殺人犯は、なんとその旅館の女将さんでした。彼はその鋭い眼光と、罪を憎む激しい口調で女将さんにつめよりました。


 すると、みんなの前で犯人はお前だと名指しされた女将さんは、泣き出してしまい、そのまま旅館の外へと飛び出しました。これに慌てたのは、関係者の皆々様です。旅館の外は海が広がっていて、断崖絶壁だったのです。追って来た皆々様の静止も聞かず、女将さんはそのまま走って荒れ狂う波の中へと身を投げ出しました。頭のおかたい探偵の、その目の前で。探偵はその場で立ち尽くし、助けようと手を伸ばしたままかたまってしまいました。


 やがて皆々様の視線は一斉に、反論の余地も許さない推理で女将さんを死に追いやってしまった、頭のおかたい探偵に向けられました。


 その時でした。


 突然彼の右横を、突風のようなものが駆け抜けました。

 それは黒い人型の影のようなもので、大きな翼が生えていました。


 探偵や皆々様が呆気に取られる中、黒い影は女将さんの後を追って崖から飛び降り、空中で見事彼女をキャッチすると、そのまま崖の上まで飛んで戻って来ました。


 一体全体、今何が起こったのだろう?


 全員がその場で、ぽかんと口を開けました。

 探偵も目を丸くして、ぼんやりと黒い影を見上げました。崖の下から戻って来た黒い影の腕の中には、泣きじゃくる女将さんが抱えられていました。


「バカヤロウ!!」


 黒い影はそう叫ぶと、立ち尽くす皆々様を次々に、記憶がなくなるほど思いっきりぶん殴り始めました……。


《続く》

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