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2話 乱入、そして戦闘?

沙耶の発言に、隼人は思わず声を荒げてしまう。


だが、それは仕方のない事ではあるだろう。


何せ、魔法のある世界から魔法のない世界に帰ってきた・・・はずなのに、そこで魔法が有ったなんて言われたのだから。


「マジか!?それ本気で言ってるのか!?」


「うん、本当だよ。確か、お兄ちゃんがいなくって1ヶ月後位にニュースで大騒ぎになってたから」


一方沙耶は、隼人の反応は予想していたようで落ち着いた様子で隼人の言葉に返答を返している。


「お前には衝撃的かもしれないが、この話は事実だ。俺たちだって、耳を疑ったけどな」


「でも、確か出来ることは多くなかったわね。瞬間移動とか、空を飛ぶとか・・・そういうのは出来ないみたいよ」


そして沙耶に続いて、修造と風香も言葉を連ねていく。だが、風香が言った事を聞いた時、隼人の顔色が一気に変わる。


それは、さっきまでの驚いた顔ではなく・・・クライノートの事を話していた時のような、恐ろしく真面目な顔へと。


「・・・母さん。その話、詳しく聞かせ・・・」


コン、コン


そして、隼人が風香にその魔法について聞こうとしようとした時・・・窓の外から、誰かが叩くような音が聞こえる。


なお、彼の家にはしっかりと庭がある。それはつまり、庭に誰かが不法侵入しているという事に他ならない。


「っ」「ぁ」


その事実にいち早く気付いた修造と隼人は、同時に立ち上がりその窓の方へと体を向ける。


修造は、いつでも飛び出せるような体勢を取っていた。だが、隼人は戦闘態勢なんてものは取っていなかった。


何せ隼人は・・・その窓を叩く人物が誰かを思い出してしまったから。


ガチャ


そして唐突に。内側から掛けられていた筈の鍵は、誰にも触れられていないにも関わらず開く。


それを見た修造は一瞬驚きながらもすぐに体勢を直し構える。隼人はまだ動かない。


バァン!


「ハァァァヤァァァトォォォオオ!!!」


「やっぱりお前かティア!」


そして、その窓は開け放たれ、黒いドレス調の服を着た若干身長高めの金髪の女性・・・ティアが飛び込んでくる。それも、超高速度で。


「お前なぁ!こっちが合図するまで外で待ってるって言ってなかったか!?」


「ええ、言ったわよ!でも、あのまま放っておいたら間違いなく私達放置で話進むでしょ!もう蚊を追い払いながら外で待つのは嫌なのよ!」


「お前がいきなりあんな事してなきゃ蚊除け位やってやるつもりだったわ!自業自得だ自業自得!」


「な、なんですってぇ!?」


ティアはそのままの勢いで隼人の肩を掴んで揺さぶりながら叫ぶ。そして、隼人は揺さぶられながらもティアに叫び返している。


「・・・だ、誰?」


「親しいの・・・かしら?」


「わ、分からん。分からんが・・・」


沙耶達3人はその状況が理解できず、頭上に?マークを浮かべている。


隼人は、異世界での出来事は伝えはしたがそっちで出来た仲間と一緒に帰ってきた事はまだ伝えていなかった。なので、この状況は当然の結果だろう。


「あーあー・・・まーた始まったよ」


「あの2人の場合、喧嘩するほど仲がいいっていう言葉がぴったり当てはまりますからねえ」


そして、ティアが開け放ったドアからシュネーとノーチェがゆっくりと入ってくる。


「え、追加?というよりマジで誰?」


それに気付いた沙耶はその2人に一体何者なのかを問いかける。・・・なお、彼女達が不法侵入してることに関しては隼人とティアが知り合いみたいなので敢えてスルーしている。


「あ、申し遅れました。私はシュネーと言います。・・・異世界クライノートから、ハヤトさんと一緒にこちらの世界に来た者です」


「私はノーチェ。シュネーと同じ異世界人だよ。・・・で、あっちでハヤトと言い争ってるのがティア。アレも私達と同じ」


そして、問われた二人は沙耶に向けて簡潔に自己紹介をする。色々と重要な情報をすっ飛ばした簡潔な自己紹介をだ。


「へ、へぇ・・・。あれ?でも、なんでそれなら最初から入ってこなかったの?」


「二年半ぶりの家族との再会を邪魔するのは無粋だと思ったものですから。・・・一応、ハヤトさんが合図をしてから入るっていう予定だったんですけどね」


「話が予想外の方に進んで行ってたからね。ティアが、「こんな所に居られるか!私は入るぞ!」って言い出して、ああなった」


その自己紹介を聞いた沙耶は、一つ疑問に思ったことを2人に質問してみたものの即座に返される。


そして、沙耶はその返答を聞いて少し後悔した。何せ、重要なことだったとはいえ話をずらした原因は彼女だったからだ。知らなかったとはいえ、ずっと外で待たせていたと思うと申し訳なくなってくる。


「・・・なんか、ごめんなさい」


「?なんで謝ってるんですか?」


「いや、私が話をずらしたからこんなことになっちゃったから・・・」


「私達が居ることは知らなかったんだから仕方がないよ。それに、悪いのは我慢できなかったティアの方だから」


しかし、そう思って沙耶が2人に謝ると2人は一様に首を傾げた。何故、彼女が謝る必要があるのだと。


どう考えたって、そこで言い争ってるソレが原因なのだから。


「一発殴らせなさい!そうすれば許してあげる!」


「むしろお前が殴られろ!そうすれば許してやる!」


「むきぃぃぃい!!ハヤトの癖に生意気な!」


「癖にってなんだ癖にって!」


「何度私が助けてあげたと思ってるの!命の恩人なんだから敬いなさい!」


「前みたいにカリスマ見せてたら敬ってたかもな!今みたいな威厳の欠片もねえ姿を敬えってのが無理な話だ!」


「はぁ!?そこまで言うなら見せてあげるわよ!比類無き夜の王の力、その身に刻んでやる!」


「上等だオラァ!返り討ちにしてやんよ!」


そして、そんな2人は・・・なぜか、お互いに戦闘態勢を取っていた。


・・・一応言うと、ここは隼人の家の中だ。やりあおうとしてる2人のうち片方にとっては生まれ育った家なのだ。


帰ってきたとはいえ、まだそこまで時間が経っている訳でもない。だから、彼はいつもの感覚(・・・・・・)で喧嘩をしようとしてしまっていた。


「spell 《(オペレイト)》type 《(エア)》shape 《(ランス)》number 《(エイト)》!」


ティアがよくわからない言葉を連ねていく。そして、それとともにティアの周りにはとても見辛いが・・・風で出来た8つの槍が浮かび上がる。


「shape 《(シールド)》!」


対する隼人は、ティアのそれよりはるかに短い詠唱を行う。しかし、それによって何か変化が起きたようには視認出来ない(・・・・・・)


あくまで視認出来ないだけで、当然変化は起きている。だが、それは魔力に対しての反応が鈍いこの世界の人では到底見切れないもの。


「「「っ!?」」」


だから、沙耶と修造と風香には隼人の前に立ちふさがる()は見えてはいない。そのせいで、彼らは槍が何にも隔てられる事なく隼人に撃たれると認識してしまった。


だが、彼らは魔法の実物を見たことがなかった。それ故に、体が思うように動いてくれないのだ。このままでは隼人が危ないと思っているのに。


「行k「いい加減にしろ、この戯けが」っ!?」


「なっ!?」


だが、その風の槍を放つために手を振り下ろそうとしたティアとそれを防ごうとした隼人の動きは突如として止まる。


手を掲げたまま、盾を構えたまま、お互いに身動き一つ取らずに止まっている2人。例えるなら・・・蛇に睨まれた蛙という状況だろうか。


「特にハヤト。ここはお前の家だろうが。そこをタカが喧嘩でぶっ壊してどうする」


「・・・あ、ああ・・・悪い、頭に血がのぼってだな・・・」


そして、そんな固まった隼人に真っ先に声をかけたのはノーチェだ。口調が先ほどより乱暴なものとなっているが、彼らはそれに関しては気にしてはいない様子である。


「まあ、お前は迎撃しようとしただけだからまだマシな方だがな。ティア、お前は何考えてんだ?家内で『風槍』8つ同時展開とか何時に増して馬鹿げた真似だな。そんなにこっちの世界を乱したいのか?」


「そ、それはハヤトが煽るか「ああ?」ご、ごめんなさい」


ノーチェは、隼人の次はティアを睨みながら言葉を連ねていく。睨む瞳には、先ほどまでは浮かんでいなかった魔法陣のような模様が浮かんでいる。


そして、そんな目で睨まれながら凄まれ、ティアは反論を取り下げて謝罪の言葉を述べる。それほどまでに、今のノーチェには迫力があった。


「はあ、次からは気をつけろよ?お前らが何か問題を起こすとこっちに迷惑が掛かるんだからな。面倒でしょうがねえ。・・・じゃあ、能力切るがもう暴れるなよ?」


「わ、分かってる」


「わ、分かったわよ」


ノーチェが2人にそう言ってから目を閉じ、再度目を開ける頃には・・・その瞳に浮かんでいた魔法陣は跡形も無く消え去っていた。


そして、その直後。


「っ、おおう・・・。この感覚は何度やられても慣れねえな・・・!」


「っ、全くね・・・。いつ聞いても、視界に入るだけで身動き取れなくなるとかただの反則にしか思えないわよ・・・!」


2人は、体のバランスを崩しよろめく。先ほどまで石のように動かなかったのが嘘のように、2人の体は普通に動いている。


そして、先ほどまで威厳を見せていたノーチェは・・・今は、シュネーに背負われながら気怠げそうな顔を浮かべていた。


「・・・はぁ、面倒臭い。何もかもが面倒臭い」


「お疲れ様です。気がすむまでゆっくり休んでてくださいね」


「そうさせて・・・」


彼らは、そのよくわからない状態が何かを把握しているからお互いに深く追求はしない。


「・・・なあ、隼人よ」


「・・・ん?」


だがこの場には、その事情なんてものは微塵も知らない人が3人ほどいるのだ。


「この子達・・・ティアちゃんに、シュネーちゃんに、ノーチェちゃんだったかしら?」


「あ、ああ・・・そう、だが・・・」


そして、状況が落ち着いた今、それを気にしない者はいるだろうか?いや、いない。


「ねえ、お兄ちゃん。彼女達が異世界から来た人だってのは聞いたけどさ。私達、それ以外何も分かってないんだよね。だからさ、その辺り、しっかり教えてくれないかな?」


「・・・お、おう」


そうして隼人は、修造、風香、沙耶の3人から詰め寄られ、逃げる場所を無くされた。

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