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3話
「なあ、お前って好きな人とかいないのか?」
「確かに全然浮いた話とか聞かないよな」
この人達は普段活動を共にする松原と中井。
初めの席が近かったためよく話をするようになった。
「好きな人か…イマイチわからないな」
「なんだよ、初恋もまだって感じか〜?」
ニヤニヤとまるで新しいおもちゃを見つけたかのような目で松原は僕を見る。
「初恋くらいはあるよ。恋が実ったことはないけどね」
本当は初恋すらもない。
僕には人に対する執着心がない。
だけど、無関心というわけではない。
ただ、守りたいとか…自分の身を呈してまで関わる必要なんかないと思うんだ。
だから基本的に毎年毎年僕は一緒にいる人が変わる。
今彼らと一緒にいるのも"普通"に混ざるため。
嘘の返事も話の矛先をこれ以上自分に向けたくないから。
「なんだ、お前も童貞か!」
「お前、はは、もっと言い方あるだろ……はは!」
ほら、僕は休み時間何気ない会話をする普通の学生。
殺人鬼なんて物騒な名前…つけないでよ。




