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謎の空間と???

読んで下さってくれている方々のお陰で、pv20000、ブクマ100を突破しました。

これも読んでくださってくれている皆様のお蔭です!

これからも弱虫勇者の覚醒をよろしくお願いします

「んん? あれ? ここどこだろ? 皆は?」


 目が覚めたら何故か僕は、何も無い真っ白な空間にいた。


「アレス~? フェル~? メルト~? サクヤ~? ねぇ、皆何処~?」


 体を起こした後、声を上げながら周りを見渡したけど、誰の姿も無いし、僕の声だけが虚しく響いていくだけだった。

 そのまま立っていても意味ないし、とにかく誰かいないか探しに行こ。


「お~い、誰かいないの~?」


 だけどどれだけ歩いても、見えてくる風景は変わらないし、真っ白な空間が何処までも続いていくだけで、人っ子一人いない。

 どれだけ歩いたんだろう、流石にずっと歩き続けたからか足が痛くなってきた

 一度休憩を取るために、僕は歩くのを止めて尻餅をつくように地面に座り込んだ。


「駄目だ。 誰もいないし、何も無い。 ホントここ何処なんだろ? 皆大丈夫かな?」


 座り込みながらそんなこと言ってたら、涙を流しながら、僕の名前を呼んでいたアレスの顔が浮かび上がってきた。

 又泣かせちゃった、と軽く罪悪感に飲まれながら、頭を切り替えるために二、三度頭を振る。

 一度気になってしまったせいなのか、他にも色んな事が頭に浮かんでは消えていく。

 数分ぐらいかな?そのままずっと考え込んでたら、ある男の事を思い出した。


(結局あの人誰だったんだ? 何か僕の事、我が王とか呼んでた気がするんだけど……?)


 何を隠そう頭に浮かんだのは気を失う前に優しそうなに微笑みながら、フェルを腕に抱えて現れた|あの男のこと(・・・・・・)。

 色々と考えつくんだけど、どれも具体性に欠けるし、まず名前すら知らないことに気が付いた。

 幾ら考えても、あの男が何者かも、何が目的かも分からない。

 だから結論を言うと、僕は結局―――――


「まあいいか、分かんないものは分かんないんだし、諦めよ」


 あっさりと諦めることにした。

 でもそんな事を考えていたお陰か、足の疲れはある程度回復したみたいだ。

 ん~~、と軽く伸びをしてから、もう一度立ち上がる。

 又何も無いところを歩くのかと、軽くうんざりしながら、足を動かそうとしたら、何も無いはずの背中から何かの気配を感じた。


(あれ? 後ろには何も無かった筈だよな? でも確かに何か気配感じるんだよな~)


 しばしば考え込んだあと、埒が明かないので、意を決して振り返ってみる。


 後ろに振り返ったら、僕の目に先程までは無かった筈の物が映り込んだ。 

 それは――――――





「……扉……?」


 そう扉だ。

 さっきまで確実にこんな物無かったし、あったら見落とすなんてことはありえない。

 僕は警戒しながら、扉の周囲をぐるぐる回ったり、近づいて触れてみたりしたけど、分かったことと言えば、これが何の変哲もないただの扉だってことだった。

 その後も色々調べてみたけど、何も分からずじまいだった。

 折角現れたチャンスだから、扉を開けてみたいけど、何があるか分からないんだよな。

 まあ、でもどれだけ考えても変わらないから、結局の所扉を開けてみることにしてみた。


「さてと、鬼が出るか、邪が出るか。 ……まあどっちもやだけど」


 そんな事を言いながら僕は、扉を開けるために、思いっきり力を入れて扉を押した。

 ズズっという音をたてながら、徐々に扉が開いていく。

 とゆうかこの扉見た目のわりに結構重い。

 それでも精一杯押していたら、不意に扉からズルっという音がしたかと思ったら、扉が一気に開いた。


「……へ? て、ぐへっ!!?」


 いきなり開いたから、バランスを崩して頭から地面に激突した。

 ゴチっという嫌な音とともに、頭を激痛が襲ってきた。

 あまりの激痛に頭を抑えながら、蹲る。

 とゆうか、冗談抜きで痛い……これ頭とか割れてないよね?血とか出てないよね?

 恐る恐る抑えている所を数回触れてみると、触れるたびに痛むが、外傷は無いようなので、一安心だ。


「おいおい、相変わらずドジだなぁ、お前」


 頭に怪我が無いことを確認して、安堵の息漏らしながらひと安心していると、唐突に僕の頭上から声が聞こえてきた。

 その声を聞いた瞬間、僕の体の中を先程の痛み以上の衝撃が駆け巡った

 何故ならば僕はこの声の持ち主を知っている。

 いや、正確に言うと、知っていたになるのか?

 まあ、どちらでもそこまでの違いは無いだろう。

 だって、この声の持ち主が、居るはずが……生きている・・・・・筈がないのだから。

 そのせいか、僕の頭の中の、思考が、知識が、記憶が、その存在を否定しようとする・・・・・・・・

 だというのに……頭では分かっている筈なのに、思い出が、心が、感情が、この声の主があの人の物だと・・・・・・・肯定してしまう・・・・・・・

 だから、真相を確かめるために、覚悟を決めて僕は頭を上げて、そこにいるはずの人物に視線を向ける。

 そして、視線の先にいる人物を見て、やっぱりそうだという安心感と、ありえないという感情が僕の中を渦巻いて、僕の頭をぐちゃぐちゃにしていく。


 だって、そこにいたのは―――――――――――








「んん? おい、どうした勇気。 そんな鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔して…… あ! もしかして父さんの顔に何か付いてるのか?」



 僕の前に当たり前のようにいたのは、もうこの世にいないはずの―――――――



「………父さん?」

「おう! 久しぶりだな、勇気。 お、よく見たらお前、少し大きくなったんじゃないか?」


 僕が子供のころに死んでしまったはずの、僕の実の父親が――――夜刀神命やとがみみことがそこにはいた―――――


「父さんっ!!」


 父さんの姿を見てしまった僕は、すぐに立ち上がるとそのまま力一杯父さんの体を抱きしめた。


どうざん……」

「何だ勇気、見た目成長しても中身は変わってないのか?」

「だっで、だっで……」

「あーもー分かったから、ほら、早く泣きやめ。 全くお前は本当に昔から泣き虫だな~」


 口ではそんな事を言いながらも、父さんは僕の体を引き寄せると、頭を撫でてくれた。

 その仕草が懐かしくて、僕はさらに涙が溢れてくる。

 父さんの体からする匂いも、頭を優しく撫でてくれている少しごわついた手や、抱きしめてくれている腕の感触も、何処かからかうような口調や声も全てが懐かしい。

 昔から僕が泣いているとめんどくさそうにしながらも、こんな風に慰めてくれていた。

 もう二度と触れ合えないと思っていた。

 もう二度と言葉を交わすことなんて出来ないと思っていた。

 こんな風に又会えるなんて夢にも思っていなかった。

 それが嬉しくて、僕はより一層強くしがみついた。


「おい、勇気頼むから、そろそろ離れてくれよ。 これじゃ何も出来ねぇじゃねぇか」

「う、ぐずっ……分かった」

「お! 昔よりは成長してるみたいで父さん嬉しいぞ! 今までどれだけ言っても離れなかったのにな~」

「う、うるさいよ……ぐずっ……で? どうして父さんがいるの? 父さん死んだはずだよね?」


 渋々父さんの体から離れた僕は、一向に止まる気配の無い涙を必死に拭いながら、どうにか言葉を切り出す。

 そもそも僕の記憶が正しいのなら父さんは僕が子供の頃――――より正確に言うなら小学四年生の頃――――車に轢かれそうにそうになった僕を庇って死んだはずだ。

 かと言って目の前にいるのが、偽物なのか?と聞かれたら、僕は分からないとしか答えられないだろう……

 少なくとも感覚を信じるならば、偽物でなない……と思う。


「おいおい、酷いな勇気。 父さんを勝手に殺さないでくれよ…… あ! もしかして……勇気、父さんにいなくなって欲しいとか思ってるんだろ? 父さん傷ついちゃうな~」

「ち、違うよ!! 父さんにいなくなって欲しいなんて考えたことないよ! えっと、その、そうじゃなくて……」

「じゃあ、何で父さん死んだはずじゃ?とか聞いたんだ? 見ての通り父さんこうしてちゃんと生きてるぞ?」

「え、だって……あれ? おかしいな……父さんは生きてて……いや違う、死んでて……あれどっちだ?」


 もう訳が分からない。確かに父さんは死んだはずなのに……あれ? 生きてたんだっけ?


「勇気。 確かに父さん、お前の事庇って車に惹かれたけど、お前を一人にしたくない一心で頑張ったのに、さっきの言葉は酷くないか?」


 ああ、そうだ、そうだった。

 父さんは車に惹かれた後、お医者さんも驚く程の生命力を見せて、無事だったんだ。

 父さんが無事だとわかって、あんなに泣いてたのに、何で僕は父さんが死んだなんて思ってたんだろ?


「うん、ごめん父さん。 何かびっくりして、勘違いしてたみたい。 そうだよね、父さんが僕を置いて死んじゃうなんて、ありえないもんね」

「そうだぞ~、勇気は父さんのたった一人の大切な家族だからな、一人になんてさせるもんか」


 父さんは僕の頭をわしわしと撫でてくれる。

 くすぐったいけど、何でか安心できる。

 僕と父さんが初めて出会った時も、こんな風に頭を撫でてくれてたっけ


「ねぇ、所で父さんここってどこなの? 僕皆がいるところに帰らないと……」

「んん~? ここか? ここはな……父さんもよく分からん!」

「そっか、分かんないんだ……じゃあしょうがないか……て、え? 今父さん分からないって言った?」

「ああ、言ったぞ? どうした勇気そんな慌てた顔して。 折角の可愛い顔が台無しだぞ?」

「父さん! 僕男だから、可愛いは止めて!!! てゆうか、ホントに何も知らないの!?」

「知らん! てかな、勇気父さんがそんな事気にするわけないだろ? 目の前に可愛い息子がいたから、愛でる! それで良くないか?」


 今更ながら父さんの適当さの事を忘れてた。

 昔からそうだ。

 何処かに行きたいといえば、何処にあるのかも分からずに進み。

 何か料理を作って欲しいと言えば、切って、味付けをして、煮込むだけ。

 ようは大雑把な性格だ。

 そのせいで家の事は全部僕がやっていた。

 少し前まで当たり前だったはずなのに、何故か懐かしい気分になる。

 さながら、もう何十年・・・も昔のことみたいだ


「はぁ、もういいよ。 僕は出口探すから。 皆心配してるだろうし……」


 僕は未だに僕の体を抱きしめながら、頭を撫で続けている父さんからどうにか脱出する。

 そのときに父さんがひどく残念そうな声を出しながら、名残惜しそうに手を伸ばしていたけど、流石にずっとここにいるわけにもいかない。


「よいっしょっと。 それじゃ、父さん僕行くから」


 僕自身久々に再会した父さんともう少し一緒にいたいきもするが、元の世界に戻れたら、又会えるんだし、問題ない。

 そんな事を思いながら、父さんに手を振ったあと、僕は踵を返して、歩いていこうとした。


「え~? もう行くのか勇気? もっと父さんと触れ合おうぜ、語り合おうぜ。 久々に会ったんだしさ~」

「あ〜も~、我が儘言わないでよ。 元の世界に帰れたら、何時でも会えるんだから、我慢してよ!」


 いい大人なのに、駄々をこねる父さんに、若干めんどくささを感じながらも、僕は言い返した。

 てっきり又言い返してくると思っていたのに、父さんは口を開かずに、今まで見たことの無いような真剣な眼差しで僕の事を見つめていた。


「な、なに、父さん? どうしたのそんな―――――」

「なあ、勇気。 そんなにあっちの世界の事が大事か?」


 父さんは少し食い気味に僕にそんな事を聞いてきた。

 大事かどうかなんて決まっている。


「そりゃ、大切だよ。 あっちには新しい友達もいるし」


 僕の答えに納得がいかないのか、父さんは元に戻ってくれない。


「でもな、勇気。 お前の事情も考えず、無理やり呼び出して、挙句生き物を殺させるような世界だぞ?」

「それは、そうだけど……」


 父さんが言う通り、ある程度慣れたとは言っても、何かを殺すことには少しだが抵抗がある。

 勝手に呼ばれたことに、文句が全く無いと言ったら、嘘になる。


「だろ? お前相手が助けを求めてるからって、絶対に応えないといけないなんて考えてないよな?」

「いや、でもそれは」

「勇気。 お前は英雄、若しくは聖人君子か何かなのか? 誰かに助けを求められたら、助けずにはいられないのか?」

「そうゆうわけじゃないけど……」

「じゃあ、何でお前がそんな事しないといけないんだ?」


 父さんに言われてみて、改めて考えてみると、その通りなのかもしれない。

 僕はそもそも何の力もない普通の高校生だ。

 大山くんや神崎さん、それに新くんみたいに運動能力が優れているわけでもない。

 純粋に偶然巻き込まれてしまった――――言ってみればイレギュラーみたいなものなのかもしれない。

 それでも―――――


「父さんの言ってることは正しいのかもしれない。 確かに僕は何処にでもいる凡人で、特別何かが凄いわけでもないよ」

「そうだろう? なら―――――」

「でも、こんな僕にも心配してくれる仲間が出来たんだ。 特別じゃなくてもいいって言ってくれる大切な人が出来たんだよ」


 僕の頭の中に浮かぶのは、新くんや、ラルクさん、それとメルトと……アレスの顔だった。

 まだ聞いてないけどフェルやサクヤももしかしたら、僕の事を心配してくれるかもしれない。

 勿論大山くん達が、僕の事を何とも思っていないなんて思ってないし、他にも僕を心配してくれている人がいるかもしれない。


「父さん。 確かに僕は巻き込まれただけかもしれない……でもそれでもいいかなって、そう思えるんだ」

「何でだ? お前には何の力も無いんだろ? お前が世界の為に戦わないといけない義務なんて無いんだろ? それじゃあ、何でだ? 何でそんなことが言える? 何故お前は昔のように、己の無力を嘆きながら、逃げ出さない? お前の何が変わったというのだ?」

「多分殆ど変わってないよ、別に強くなったとも思ってない」

「ならば何故だ、何故お前は笑ってられるのだ」


 ?笑ってる?

 そう言われて、僕は徐ろに自分の顔に触れた。

 どうやら無意識の内に、笑っていたみたいだ。

 自分でも不思議だ。何で僕は笑ってるんだろう。


「まあ、強いて言うなら、そうだな……心構えかな?」

「心構えだと……? それが一体何だというのだ」

「僕は少なからず力を手に入れて、戦う方法も学んだからね。 だから僕は決めたんだ。 誰かを守れる自分・・・・・・・・になるんだって。 変わったのはそれぐらいだよ」

「たかがその程度で、お前は笑ってられるというのか? 何時死ぬかも分からぬ世界が大切だと言うのか?」

「まあ、それはいいんだよ。 ところでさ、君……父さんじゃないよね?」

「は?」


 僕が放った一言を聞いて、父さん……父さんの見た目・・・・・・・をした何か・・・・・は間の抜けた声を上げた

 さっきまでの真剣な空気は霧散し、辺りに静寂が訪れる。

 見た目では分からないけど、動揺しているのか、慌てているような雰囲気が漏れ始めている。


「お、おいおい、勇気。 何を言ってるんだよ? そんなわけないだろ? よく見てみろ、間違いなく父さんだろ?」

「まあ、見た目はそうだね。 実際騙されてたし……」

「父さん、別に勇気のこと騙してなんかいないぞ? 冗談はよせよ」

「いや、今更取り繕っても遅いよ。 ちょくちょく口調変わってたし、それになんかぶれてるよ?」

「!!? そんな馬鹿な!?」


 そいつは慌てながら自分の体を見回す。

 勿論ぶれてなんていない、嘘だ。

 嘘なのだが……


「化けの皮が剥がれたね」

「……何時から気付いてた?」

「最初におかしいって思ったのは、やっぱり言ってることかな? 父さんは諦めろとか、言わなかったし、況してや僕の事を貶すみたいなことは今まで一度も言われた事ないしね」

「他には無いのか?」

「えっと、その……もう一つはその……」


 何故か言い淀んでいる僕に、そいつは首を傾げながら催促するみたいに睨みつけていく。

 いや、でもな~これ言うのは流石に恥ずかしいんだけど……

 多分僕は今凄い挙動不審何だろうと自分で思いながら、黙っていると


「早く言ってくれないかな?」


 ニコリと笑顔を浮かべながら、発言を促してきた。

 顔は笑っているのに、とてつもない殺気が溢れ出ていて、僕は思わず後ずさってしまう。


(ヤバイ。この人アレスと一緒で怒らせたら不味い人だ)


 このまま黙っていてこれ以上の殺気を当てられたくなかった僕は、観念して最後の理由を告げた。


「その撫で方がね? ちょっと乱暴な感じがしたのと、それと……」

「それと?」

「僕のこと、あ、愛してるって言ってくれなかったから……」


 うう、自分で言ってて、恥ずかしい

 それ以上に気付いた理由がこれじゃあまるで―――――――


「君……意外と甘えたがり屋というか、女々しいというのか……てか君達親子なんだよね? 君男なんだよね?」

「うわ~!! 言わないでよ! 気にしてるんだから!!」


 風邪でもひいたみたいに、頬が熱くなっていくのを、感じる。多分僕の顔は今真っ赤に染まっているんだろう。

 だから、言いたくなかったんだよ!絶対言われると思ってたし!


「てか、悪いのは全部父さんだ!! 小さい頃に、男は誰かに甘えるのが当たり前とか言うし! 頭を撫でるのも、抱きしめあうのも、お互いに愛してるって言い合うのも、普通に皆やってるって僕に吹き込んできてたし! 挙句に可愛いから安心しろとか言って、僕に女の子の服着せてたんだよ!? そのこと話したら皆に笑われて、おかしいと思ったら、そんなの普通じゃないって皆言うし!」

「あの、ゆ、勇気? 一旦落ち着いて……」

「そのこと父さんに言ったら、可愛い息子を愛でることの何が悪いというんだ!とか言って、開き直るし! 僕がこんな性格になったのも、全部父さんのせいだ!」

「いや、分かったから、本当に落ち着いて。 話進まないから」


 僕のいきなりの独白に驚きながらも、そいつは必死に話を進めようとしてるけど、そんな事知ったこっちゃない。

 まだまだ言いたいことはたくさんあるんだ。


「あとそれと―――――――」

「いいから、話を進ませてくれよーー!!!」


 そいつの叫び声をバックにしながら、僕はそのまま二時間ぐらい父さんに対する感情を吐き出し続けたのだった。



 ********




「勇気? 落ち着いたかい?」

「うん……その何かごめん」

「まあ、別にいいよ。 でも聞いてて思ったことは、君……命のことどれだけ大好きなんだよ」

「言わないでよ!」


 本当に穴があったら入りたい気分だ。

 あれから僕の一方的な独白をした後、そいつは生温かい目で僕のことを見るようになっていた。

 正直言えば止めてほしいのだが、さっきの事があった手前止めてとも言い出せない。

 仕方がないので、甘んじて受けることにした。


「さてと、それじゃあ勇気の命に対する愛情を嫌になるくらい聞いたし、そろそろ本題に入ろうか」


 そいつは少し楽しそうに微笑みながら、やっと本題を切り出してくれた。

 まあ脱線させたのは僕なので文句は言えないが……とゆうかいい加減恥ずかしいから、弄るのはやめてほしい。


「で、勇気。 僕に何が聞きたいの?」

「まずここ何処なの?」


 僕は今のところ一番疑問な事を聞いてみた。


「ここ? ここはまあ何と言えばいいのか……強いて言うなら、勇気の心の中であり、覚醒の中だね」

「僕の精神世界ってこと?」

「ちょっと、違うけど。 だいたいそんな感じだね」


 詳しく聞いてみたい気もするが、それは次の機会にしよう


「じゃあ、次の質問。 君って何者?」

「ああ、そういえば名乗ってなかったね」


 よくよく考えたら、この人が何者なのか以前に、名前すら分からないんだけど


「そう言えば名乗って無かったね。 うっかりしてたよ。 それじゃ、改めて僕の名前はルルベル。 君が持っているスキル覚醒の最初の所有者だ」



 そいつ……ルルベルは又少しだけ笑いながら、僕に名乗った。

 先程からちょくちょくルルベルは微笑んでいるが、今は父さんの姿はしていない。

 見た目は幼い子供のような容姿に、腰ぐらいまである長い紫がかった黒髪と紅い瞳が特徴的だ。

 ちなみに父さんの見た目は普通に黒髪黒目の少し平均より背が高いだけの何処にでもいそうな感じだ。

 て、しまった。若干話がずれてる。


「最初ってことは他にもいるの?」

「う~ん、いるはいるけど。 まあそれについては追々話すよ」


 他の所有者についてのことははぐらかされちゃったけど、しょうがないか。

 待ってれば話してくれるみたいだし


「じゃあ、次の質問。 ルルベルの目的って何? 何の目的も無しにわざわざ父さんの姿で現れたわけじゃないんでしょ?」

「まあ、あるよ。 僕の目的は、勇気がこの力に相応しいのか見るのと、後はあの鎧についての説明かな」


 あの鎧のことと言われて、僕の脳裏を過るのは、一つしかない。

 僕は詳しく聞くために、座り直す。


「相応しいかについては、少なくとも僕は君の事を認めるよ。 中々面白いしね君。 で、鎧についてなんだけど……」


 僕は緊張しているのか、一度唾を飲み込み、ルルベルの次の言葉を静かに待った。


「正式な名前はまだ言えないけど、あれはこのスキルに備わっている隠された能力にして、使用者を蝕む諸刃の剣みたいなものだよ」


 諸刃の剣とは一体どういうことなんだろう。

 それと正式な名前が言えないのは何でなんだろ?


「勇気さ、あの鎧を身に付けているとき、気分が良くならなかったかい?」


 確かにあの鎧を身に付けている全能感というか、誰かに負けることが想像出来なかった。

 僕は心当たりがあったので、何も言わずに黙って頷き返す。


「やっぱり……簡単にあの鎧の力を説明すると、条件無効化はそのまま鎧がある間だけ、望むだけで、覚醒スキルを発動出来る能力。 消滅魔法は黒い靄に触れたものは、例外なく消し去る魔法で、兎角斬は魔力体みたいな実体が無いものを斬ることが出来て、防御無効は文字通りの意味だね」

「それが鎧の能力?」

「その通り。 ただし使い過ぎたり、感情の赴くままにしてると、自分を失うから気を付けてね。 今回は良かったけど、次はどうなるかは僕は知らないからね」


 ついさっき迄の自分がそんなにギリギリだったのかと思うと、ぞっとする。

 これは本当にアレスやメルトに感謝しないといけないかな……


「普通に使うぶんには強力だし、リスクも無いけど、あの力に甘えちゃ駄目だからね? あの鎧は奥の手みたいなものだからね」

「分かった。 ヤバくなった時以外は極力使わないように気を付けるよ」

「うんうん、聞き分けがいいのは良い事だ。 頭を撫でてあげよう」


 僕の答えに満足したのか、ルルベルは僕に近づいて来て、よしよしと僕の頭を撫で始めた。


「あ、それと次からは分かりにくいだろうから、覚醒スキルが発動するたびに、liberationリベレーションって僕が言うようにするよ」

「それ、いるの?」

「そこはまあノリだよ」


 どうやら断れる感じではないので、僕は渋々了解することにした。

 実際何か合図があったほうが、便利なのも事実だしね。


「じゃあ、もう特に僕から言うことないし、勇気そろそろ目を覚まそっか」

「分かったよ。 又話って出来るの?」

「そんなに頻繁には無理だけど、多分出来ると思うよ。 あ、でもここでも会話全部覚えられるわけじゃないからね。 多分一部の記憶は忘れる」

「そうなの? まあ了解、じゃあ目覚めさせてくれる?」

「了解。 それじゃあ、目覚めさせるね」


 ルルベルが僕に向かって手をかざすと、僕の足元から闇が吹き出して、徐々に視界を覆っていった。

 何となくだが、あと少しで目が覚めるのかと思っていたら


「あ、そうだ! 言い忘れてたけど、勇気。 君半分人間じゃないから」


 ルルベルが最後の最後でとんでもないことを言い放ってきた。

 てゆうか、半分人間じゃ無いって今言ったような……


「ちょっ! ルルベルそれどうゆ―――――――」


 ルルベルからの衝撃告白を問いただそうとしたが、僅かに間に合わず、僕の意識はそこで途切れた。















それでは、誤字、脱字、ご意見、ご感想などお待ちしております

次話からは坂田新がメインの話が始まりますので、楽しみにしていただけると、嬉しいです

それでは、皆様、次の更新でお会いしましょう

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