表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/26

ステータス表示

3月24日改稿

神埼晶の職業を変更しました

 光が収まって、僕がゆっくりと目を開けると、そこには何時もの教室の風景ではなく、見たこともない場所だった。


 床は木ではなく、大理石の様なもので出来ており、壁には何かの絵が飾られていた。


 そこには様々な服装をした男女がおり、その背後には湖や山などが描かれていた。


 しかし突然の出来事に頭が追い付かず、無意識の内に絵から視線を外すと、ただ呆然と周囲を見回した。


「なんじゃ、ここは? 俺達はいったいどうなったんじゃ?」


 大山くんが声をあげると、僕同様呆然としていた先生はハッ!と目を見開くと、皆の安全を確認し始めた。


「! そうだ、全員いるか!?」


 先生の言葉を聞いて、正気に戻ったのか慌てて皆周りのクラスメイトを確認し始める。


「先生大丈夫です、全員います!」

「そうかよかった」


 皆無事であることが確認され、先生が安堵の息を漏らしていると、僕達の前にあった巨大な扉が開かれた。


「ようこそ! 勇者の皆さん!」


 不意にあまりにも場違いな明るい女の人の声が僕達の耳に聞こえてきた。


 僕達がその声の方を向くと、そこには今まで見たこともないような綺麗な女性がいた。


 顔立ちはとても整っており、年齢は僕達と同じぐらいだろうか?


 背の高さは恐らく僕より少し低いぐらいの様なので160cm前後だと思う。


 髪は綺麗な赤色で、肩ぐらいの長さに切り揃えられており、瞳の色も同じように赤色だった。


 服装はドレスの様なものを着ていて、どことなく高貴な印象を受けた。


 実際この人の美貌に何人かの生徒は目を奪われてしまっているのか、じっと見つめていた。


 その視線に慣れているのか、特に気にすることなく、スカートの裾を摘みながらお辞儀をして、再度僕達に声を掛けてきた。


「初めまして、私はヴァニル王国第一王女リリスと言います。 勇者様方、詳しいお話をさせていただきたいので、着いてきていただけますか?」


 王女様が確認を取るように言うと、今まで呆然としていた皆が思い出したかのように騒ぎ始めた。


「はぁ!? 巫山戯ふざけんじゃねーよ!! いきなり意味分かんねー処に連れて来られて、はい、分かりましたって着いてく訳ねーだろ!?」


「そうよ!! 一体ここ何処なの!? 元いた場所に帰してよ!!」


 一人が意義を唱えると、一人又一人と王女様に非難の声を浴びせていった。


 王女様も反応が予想以上だったのか、戸惑っている様だった。


「み、皆さん。 落ち着いて、一度私の話を……」

「うるせぇ!! 落ち着けるか!!」


 興奮が収まらないのか、男子生徒の一人が王女様に掴みかかろうとしたが、小鳥遊先生が手を前に出すことによってそれを止めた。


「んだよ、先生。 邪魔すんなよ」


「一度落ち着きなさい。 ここで暴れても何も変わりません」


「それは、そうだけどよ……、でも……」


「ここは先生が対処しますから、良いですね?」


「……分かったよ」


 先生の有無を言わせない雰囲気に負けたのか、渋々ながらその男子生徒は後ろの下がっていった。


「ご無礼をお許しください、王女様。 皆この状況について行けてないのです」


「いえ、此方こそ配慮が足りず申し訳ありませんでした。 突然この様な事になったら、戸惑うのは当たり前ですから」


「そう言って頂けるとありがたいです。 質問ですが、私達に危害を加えるつもりは無いのですのね?」


 王女様に対して先生が確かめる様に質問を投げ掛けた。


 すると王女様はにっこりと笑顔を浮かべながら、静かに頷いた。


「ええ、それは勿論です」


 王女様の言葉を聞いた先生は数秒程目を閉じると、結論が出たのか目を開き王女様に話し掛けた。



「分かりました。 説明をしてくれると言うなら着いていきましょう。 皆さんもそれでいいですよね?」


 確認するように後ろを振り返りながら先生がそう言うと、一応納得したのか全員が頷き返していた。


「ありがとうございます。 ではこちらです」


 そういって、王女様が歩き出すと、まず最初に先生が立ち上がった後、次々と生徒が立ち上がっていき、その後ろを着いていった。


 僕もその後ろを追いかけるように、歩き出すと、


「なあ、どう思う? この状況?」


 神崎さんが僕に近寄ってきて話しかけてきた 。


「うーん、やっぱりあれなのかな? 漫画や小説でよくある異世界で勇者として世界を救う、みたいな」

「あー確かにそんな感じだなこれ」


 そんなことを話しながら長い廊下を歩いていると、扉の前で王女様が足を止めた。


「着きましたよ皆さん。 どうぞお入りください」


 扉が開かれて、中に入ってみると、頭に王冠を載せているいかにも王様といった感じの人が座っていた。


「リリス、案内ご苦労。さて、勇者の皆様、私がこの国の国王アージナル=ヴァニル7世です」

「初めまして国王陛下。 私このクラスの担任を勤めさせていただいている、小鳥遊深雪と申します。

 早速で申し訳ないのですが、今私たちが置かれている状況を教えていただきたいのですが……」


 先生が国王にそういうと、


「分かっております。こちらもそのつもりです。ですが、その前に皆さんには私から謝らねばならぬことがあります」


 国王様の言葉に皆が首を傾げていると、突如王様が玉座から立ち上がった。


「この度はこちらの都合で勝手に呼び出してしまい、真に申し訳ない!」


 玉座から立ち上がった国王様はそう言いながら僕達に頭を下げた。


「王よ、なりませぬ! 王ともあろうものが易々と頭を下げるなど、示しがつきませんぞ!」


 突然の行動に驚きながらも国王様の横にいる少し太っている男が、国王様に言うが、国王様は頭を上げようとはしなかった。


「お前こそ何をいっている! 王だからこそ頭を下げるのだ! 謝らねば示しなどつくはずがないだろう! こちらの都合で勝手に呼んだのだぞ!」


 国王がそう叫び返し、なおも頭を下げつつける。


「こ、国王様! 頭をお上げになってください。 私たちもそこまでのことは望んでおりません!」


 先生が慌てていうと、国王様は渋々頭を上げてくれた。

「寛大な心に感謝します。ですが、もう一度言わせていただきます。こちらの都合で呼び出してしまい、本当に申し訳ありませぬ。心からお詫びいたします。それでは何故貴方達を呼んだのかご説明しましょう」


 そういって国王は話を始めた。


「今私達の世界は滅亡の危機にあります。

 何故かと言うと太古の昔に封印されたとされる魔神が復活しようとしているからです。

 かつて魔神は大陸を割り、海を干上がらさせ、この地を滅亡させようとしました。

 しかし、その時代の王が異世界より勇者を召喚したお陰で、どうにか魔神を封印することが出来、この世界は救われました。

 ですが、あくまでも封印しただけであり、滅ぼしたわけではありません。

 その事を危惧した勇者達は後の世のために独自に研究し、作り上げたとされる武器を、ダンジョンの奥深くに置かれているそうなのです。

 しかしこの世界の者達ではとても、攻略することが出来るものではありませんでした。

 なので、苦肉の策ではありましたが皆様をこの世界に召喚させていただきました。

 差し当たっては、皆様にはダンジョンを攻略して貰い、武器を手に入れ、魔神を倒し、この世界に真の平和をもたらせて頂きたいのです」


 王様が説明し終わった後、僕が内申ありきたりな小説のような展開だな、等と思っていると、


「つまりなんじゃ? 俺達は力を付けてダンジョンを攻略して、魔神とやらを倒せば、元の世界に帰れるのか?」


 大山くんが王様に確認するように質問をした。


「ええ、その通りです。 魔神さえ倒していただければ、皆様を元の世界に帰すことが可能になります」


 王様の説明を聞いて、先程までの動揺が嘘のように思えるほどの興奮を感じていると、王様の説明に小鳥遊先生が声を張り上げて抗議をした。


「ちょっと待ってください!? この子達はまだ子供です! そんな危険なことをさせるわけにはいきません!」


 先生が今まで見たことの無い心配そうな顔をして王様にそういうと、


「ご安心ください。 皆様は基礎能力だけでも、この世界の者を容易に越えております。 なので、訓練さえしていただければ問題は無いはずです」

 王様が安心させるように先生に言うが、


「で、ですが……」


 それでも食い下がろうとする先生を見かねたのか、大山くんが声をかけた。


「なーに先生、要は強くなって魔神を倒すだけじゃろ? それに聞いた限りじゃと、俺達はこの世界の人間より強いようじゃし、まあ何とかなるじゃろ……なあ、皆!」


 大山くんが言うと、クラスの皆が次々と賛成の声を挙げた。


「……分かりました。 ですが、油断しないで、気を付けてくださいね?」


 先生が納得したのを確認すると、王様が満足そうな顔をした。


「納得していただけたようなので、早速皆様にはステータスプレートを配りたいと思います。 おいお前達!」


 王様が叫ぶと、扉が開かれ、数人の鎧を着たまるで騎士のような姿をした人たちが、何かを運んできた。


「それではこれよりステータスプレートを配布する、各自受け取ってくれ」


 騎士のような人たちが、僕達に歩み寄り、僕の手元に銀色の板が渡された。


「まず最初に右下の場所に小さな窪みがあるだろう? そこに指をあててくれ。

 針が出てきて多少痛いかもしれないが我慢してくれ。 で、その時に出た血を読み取って、各自の持っている能力を教えてくれる。

 ああ、それと。 それは身分証の代わりにもなってるから無くすんじゃないぞ?」


 説明を聞き終わると、皆次々とプレートに指をあてていった。


  赤塚勇気

 職業:弱虫

 称号:気が弱いもの、勇者

 年齢:17

 性別:男

 レベル:1

 体力:250

 魔力:50

 筋力:40

 俊敏力:50

 持久力:30

 知力:120

 器用さ:60


 魔法適正:???


 スキル

 鑑定level1アイテムボックスlevel1 格闘技level1

 治癒魔法level1 低級魔法level1

 ユニークスキル

 ???

 加護

 勇者の加護


 うーん?どうなんだろこれ?


「勇気お前はどうじゃった?」


 僕が自分のステータスに疑問を感じているとそこに大山くんが近寄ってきた。


「うーん? どうなんだろうねこれ。 よく分かんないよ」


 僕がプレートを大山くんに渡すと、大山くんも僕にプレートを渡してくれた。


 早速僕は大山くんのステータスを見ようとして、その内容に目眩がした。


  大山武志

 職業:重戦士

 称号:兄貴肌 益荒男、勇者

 年齢:17

 性別:男

 レベル:1

 体力:5000

 魔力:2000

 筋力:7000

 俊敏力:5000

 持久力:2500

 知力:2000

 器用さ:1000


 魔法適正:土


 スキル

 アイテムボックスlevel1 格闘技level1

 筋力上昇level1 自動回復level1 肉体硬化level1

  気配関知level1 限界突破level1土魔法level1

 縮地level1 剛力level1 先読level1


 加護

 勇者の加護


「……」


 僕は愕然とした。いくらなんでも差がありすぎる。


「まーその……なんだ。 努力すれば大丈夫だ。 いざとなったら守ってやる」


 大山くんが励ますように言ってくれるが、大山くんの顔は何処か引き攣った様なものになっていた。


「うん……ありがと。 何かあったら頼らせてもらうね」


 理不尽な現実を感じた僕はそうとしか返す事が出来なかった。


「おーい! お前らどうだった?」


 僕が落ち込んでいると、僕達の方に神崎さんが駆け寄ってきた。


「やあ神崎さん。 はい、これ僕の」


 少し投げやり気味に、僕は神崎さんにプレートを差し出す。


「ああ、んじゃ、これ私のな」


 それを見た神崎さんからプレートを貰って、またしても愕然とした。


  神埼晶

 職業:暗殺者

 称号:韋駄天 、風に愛されたもの、勇者

 年齢:17

 性別:女

 レベル:1


 体力:4000

 魔力:2000

 筋力:3000

 俊敏力:6000

 持久力:5000

 知力:2000

 器用さ:1500


 魔法適正:風


 スキル

 高速移動level1 アイテムボックスlevel1

 筋力上昇level1 体力高速回復level1 体術level1

 脚力上昇level1自動回復level1

 縮地level1 風魔法level1


 加護

 勇者の加護


 あまりの理不尽さに思わず、泣き出しそうになってしまった。


「あー、何て言うかドンマイ!」


 僕のプレートを見た神崎さんは困ったような顔をしながら、僕を慰めるように肩に手を置いた。


「おーい、弱虫くんどうだった?」


 そんなことをしていると、今度は坂田くんたち三人組がニヤニヤ笑いながら近寄ってきた。


「別に……何だっていいじゃないか」


 僕がぶっきら棒に言うと、態度が気に入らなかったのか、此方に手を伸ばしてきた。


「いいからさっさと見せろ!」


「ちょっ!? 止めてよ!!」


 プレートを奪われないように抵抗したが、それも虚しく坂田くんに僕のプレートはあっさりと奪い取られてしまった。


「うっわ、マジかよ! 何だよこのクズみてーなステータス! しかもお前これ職業弱虫って、ピッタリすぎだろ! てかこれ、ホントに職業かよ!!」


 僕のステータスを見た坂田くんたちはここぞとばかりに大声を上げて笑い転げていた。


 因みに坂田くん:大剣士、遠山くん:狙撃主、古泉くん:罠師という感じで、やはりステータスが僕の倍以上は軽くあった。


「もういいでしょ、早く返してよ!」


 僕がやけくそ気味に奪い返そうとするが、ステータスに差がありすぎるせいか右へ左へと避けられてしまい、 取り返すことが出来なかった。


「ほらほら、取り返せるもんなら取り返してみろよ弱虫くーん?」


 坂田くんが僕を馬鹿にするようにしていると、突如坂田くんの手からプレートが消え去った。


 突然消えたプレートに僕も坂田くんも驚いていると、坂田くんの後ろの方から声が聞こえてきた。


「止めんかみっともない」


 声のする方をみると手に僕のプレートを持った大山くんがいた。


 どうやら横から大山くんが取り返してくれたようだ。


「ほら勇気。 もうこいつらに取られんようにしろよ? それとお前ら恥ずかしくないのか? こんなことをして」


 大山くんが三人を睨み付けると、三人は忌々しげに大山くんを見てから、一度舌打ちをして歩いていった。


「えっと、ありがとね。大山くん」


 三人の姿が見えなくなると、僕は大山くんの方を向き直り、改めてお礼を言った。


「何気にするな。 俺が勝手にやっただけだ。 それとなんだステータスが低くても気にやむなよ? それが全てじゃないんじゃからな?」


 大山くんの気遣いを嬉しく思いながら、僕は大山くんを安心させるように笑うと、大山くんも笑い返してきた。


「ありがと! 確かに大山くんのいう通りだね。 僕なりに頑張ってみるようにするよ!」


 僕がどうにか持ち直すと、騎士団の人たちから声が掛かった。


「よし、それでは全員自分のステータスは確認したな?

 各自自分の職業とステータスを報告して、今日は休んでくれ。

 訓練は明日からそれぞれの職業を分類分けして行う。

 それじゃあ、各自近くの騎士に報告を開始してくれ」


 僕は皆が報告をしていくのを眺めながら、心の中である誓いを立てた。


 大山くんの言う通りステータスだけが全てじゃない。

 折角異世界に来たのだから、僕は僕なりの方法で頑張ろうと。

 あちらの世界のように現実から目を背けずに、逃げることを止めて、立ち向かおう、と。


 僕は心の中で静かに誓いを立てた後、騎士団の人達に自分の職業を告げ、自室に向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ