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初めての戦闘と油断

3月24日改稿

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 数分経つと、僕に一頻り抱き付いて満足したのか、フェルはやっと僕から離れてくれた。

「ねえ! お兄さん! そういえば、何でダンジョン何かにいるの?」

 フェルが教えて、教えてと懇願するように見つめてきた。

 どのみち教えることだったので、いい機会だと思って僕達の事を説明をすることにした。

 ~~~~~~~事情説明中~~~~~~~~~~

 数分後アレスの事も含めた僕達の事をフェルに説明した。

「へー、お兄さん達。 そんなことがあったんだ」


 説明が終わるとフェルはうんうんと頷いていた。


「ところでお兄さん。 質問してもいい?」

「? 何? 答えられることなら答えるけど」


 何か分かりにくかったところがあったかな?と思いながら、フェルが質問するのを待っていると、


「えっとね。 そもそも勇者って何?」

「え?」


 予想外の質問がきて、思わず固まってしまった。


「えっと、フェル。 今なんて」


 恐る恐る聞き間違えであることを祈りながら聞き返した。


「いやだからさ、勇者って何なの?」


 どうやら、聞き間違えではなく本当にわかっていないようだった。


 分かってないなら最初から言ってよ!

 頷いてたから分かってると思って話してたのに!何のために話してたんだよ!っと思わず突っ込みたくなったが、グッと堪えて答えることにした。


「はあ~。あのね、勇者っていうのはね……」

「勇者っていうのは?」


 僕がどう答えるのか楽しみでしかたないといった感じでフェルが此方を見つめてきていたが、僕はある重要な事に気づいてそこで言葉を止めてしまう。


「どうしたの、お兄さん? 早く教えてよ。 勇者って何なの?」


 突如動きを止めた僕をフェルが心配そうに見つめてきていた。

 しかし、このまま固まっているわけにもいかず、僕は今気づいた事実をフェルに伝えた。


「えっとね、フェル。 勇者ってのはね?」

「うん。 何なの?」

「何なんだろうね? よく考えたら、僕もよく知らないや」


 あ、フェルの動きが止まった。僕がそんなことを考えていると、言葉の意味をようやく理解できたのかフェルが声をあらげながら、詰め寄ってきた。


「ちょ、ちょっと待ってよ、お兄さん!? お兄さんって勇者なんだよね!?」

「うんそうだね。 一応僕は勇者って呼ばれてるよ?」

「じゃあ何で知らないの!? 自分のことでしょ!?」

「そんなこと言っても改めて考えてみると分からなかったんだもん」

「だ、だもんって……」


 僕の予想外の答えにフェルが納得いかないと叫ぶが満足いく答えを答えることも出来ずにいると、今まで僕達を見守っていたアレスが話し掛けてきた。


「あの、勇気様」

「ん? どうしたの、アレス?」

「いえ、あの、分からないのでしたら私がお教えしましょうか?」

「え!? アレス分かるの!? お願いおしえて!」


 意外なところから助け船が来たことに驚きはしたが、アレスは知っているようなので、ここはお言葉に甘えさせてもらおう。

 フェルも先程の会話が聞こえたのか、アレスに期待の眼差しを向けながら話始めるのを待っていた。


「それではお教えさせていただきます。

 簡単に言うと、勇者とはこことは違う世界から来た強大で特別な力を持った存在です」

「……え? それだけなの? 他に何か条件とか無いの?」


 アレスが答えた事が余りにも拍子抜けしてしまうような簡単なことだったので思わず聞き返してしまう。


「まあ、厳密に言えば他にも在るには在るのですが、大体こんな感じの認識で問題ありません」


 アレスの説明を聞いた後、僕はフェルの方を向くと、そこにはうんうんと納得したような顔のフェルがいたが、前科があるせいでどうにも信用できない。


「だ、そうだけど。 どうフェル今度こそ分かった?」


 僕は心のなかで分かったくれるように願いながらフェルに質問した。

 すると、


「うん!完璧だよ!」


 と自信満々に答えてくれた。


「そう、じゃあ、フェル。 勇者って何なのか僕に教えてよ」


 僕は確認の意味も込めてフェルに質問すると、嬉しそうに笑顔を浮かべて答えた。


「もう駄目だよお兄さん。ちゃんと聞いとかないと」

「そうだね、次から気を付けるよ」


 僕が申し訳なさそうな顔をするとフェルは得意顔になって、しょうがないなーと前置きをしてから自慢げに口を開いた。

 その姿はさながら新しく覚えたことを一秒でも早く自慢したがる子供のようにも感じられた。


「ふふふ、ちゃんと聞いててね、お兄さん? 勇者ってのはね。 異世界から来たとっても強い人たちのことだよ!!」


 フェルは自信満々といった感じで僕の予想通りの返事をしてくれた。


「うん、まあそうだね。 凄いねフェルはちゃんと理解してて」


 僕はフェルの理解力に半ば諦めながら、頭を撫でてあげた。

 すると、嬉しそうに目を細めて、甘えてきたので一頻り撫でた後、フェルのステータスなどを確認することにした。


 使役魔獣

 [フェンリル]

 スキル

 氷結魔法、人化、神霊化、脚力強化、威圧、空中飛び、高速回復


 装備

 [反逆の鎖]

 所有者の意思で何処までも伸ばすことが出来、任意の場所に出すことも可能な鎖。

 敵が所有者よりレベル及びステータスにおいて高いものがあるほど拘束力が強まる。

 拘束されている間魔法やスキルは使用することが出来ない。

 魔力を消費することで修復することが可能。

 所有者及び認められたものしか使うことは出来ない。

 所有者:フェル


 [分裂のジャマダハル]

 所有者の意思で何処までも伸ばすことが出来、所有者の魔力を消費することで幾らでも複製することが可能。

 但し本体が破損した場合複製は消え去る。

 所有者及び認められたものしか使うことは出来ない。

 所有者:フェル


 確認してみたところフェルの種族はアレス同様進化していた。

 フェンリルになるとは思わなかったが。


 そして僕達はフェルのステータスなどを確認したあと、次の階層に降りるために階段探しを始めた。


 湖があった場所から少し離れるとやはり辺り一面は木で囲まれていた。

 所々枝が飛び出しており、それを避けつつ先に進むと、目の前に大きな花が咲いていた。


「お兄さん。 この花綺麗だね」


 フェルは花に夢中になっているようだったが、僕とアレスは嫌な予感がして仕方がなかった。

「僕もう一寸近くで見てくる!」

「!? フェル! 行っちゃ駄目だ!」


 フェルが不意に駆け出し花に近付こうとするのを止めようと手を伸ばすが、後少しの所で届かず、そのまま駆け出していってしまった。


「うわ~、ほんとに綺麗な花だな~。 何て花なんだろ?」

「フェル! 早くその花から離れて!」

「大丈夫だよ、お兄さん。 唯の花だよ? 何も危険じゃないって」


 僕が戻ってくるようフェルに言うが、警戒心が無いのか、全く聞き入れてもらえず、焦っていると、僕達の嫌な予感が当たっていたのが判明した。

 フェルが眺めていた花が突然動き始めたのだ。


「キシャャャーー!!」


 花が叫び声を上げると、地面が盛り上がり、そこから無数の触手が現れる。

 すると、それに驚いたフェルが悲鳴を上げながら僕達の方に走ってきた。


「あ~も~、だから言ったじゃないか! 早く離れてって!」

「だ、だって花だよ!? 何もないと思ったんだもん!」

「フェルここが何処か分かってる?」


 僕は敵に視線を向けて、いつ攻撃が来ても避けられるように、構えながらフェルに質問をした。


「何処って、ダンジョンでしょ? 何当たり前のこと言ってるの?」

「分かってるじゃないか。 そう、ダンジョンだよ。 だから何があっても不思議じゃないから警戒しないといけなかったのに」


 僕のその言葉に自分のした行動が軽率だったのかを理解したかのようにフェルは黙ってしまった。


「まあ、次から気を付けてね? いい経験にはなったでしょ?」

「うん、そうするね。 ごめんね、お兄さん。 迷惑かけて。 それにアレスお姉ちゃんも」

「次から気を付けてくれるなら問題ありません。 あの、所でお姉ちゃんは止めていただけませんか?」

「え~何で? 駄目なの? 」

「いえ、駄目というか、恥ずかしいというか……」

「う~ん? あ! じゃあお姉さんは?」

「そ、それならまあ……」

「あーもー! 二人とも! その話は後にして! 来るよ!」


 二人は僕の言葉を聞くと、話を止めて、花の方に意識を向けた。


 二人が花に意識を向けた瞬間、花は蔦を左右から振るってきた。

 僕達はそれを避けると、フェルはジャマダハルを複製して投げつけ、アレスは戦斧を伸ばすと勢いをつけて振るい、僕は衝撃弾を撃ち込んだ。

 各々の攻撃が当たると思った瞬間に突如として地面が盛り上がり、そこから根が現れたかと思うと、花を囲むようなドーム状となり、攻撃は防がれてしまった。


「え~、そんなのあり!? これじゃ攻撃通じないよ!?」


 僕がどうやって敵に攻撃を当てようか考えていると、フェルが声を掛けてきた。


「ねえ、お兄さん。 あれ、僕にやらせてくれない?」

「いいけど、大丈夫?」


 フェルの言葉に驚き、視線を向けるとそこには勝利を確信している顔付きのフェルがいた。


「任せてよ。 見ててね、名誉返上するから」


 フェルが自信満々にそう言い放ったが、最後の言葉を聞いて、とても不安になってしまった。正しくは汚名返上である。名誉返上したら駄目でしょ……

 しかし、断ることも出来ず、アレスと共に何時でも動けるように警戒しながら、成り行きを見守った。


「よーし、いっくぞー! お兄さん達にいいとこ見せるんだ!」


 フェルは気合を入れ直すかのように声を上げると、再度花に向かって突撃していった。


 因みに成り行きを見守るついでに花を鑑定したところ、ドリアードと出た。


 ドリアードは先程と同じように蔦を鞭のようにしならせてフェルに向かって振るった。

 ビュン!という空気を切り裂くそうな音を出しながら振るわれた蔦をフェルは空中に飛び上がり華麗に避けると、ドリアードの方に手を向けた。

 そして、言葉を言い放った。


「敵を束縛しろ!」


 フェルが言葉を発するとドリアードの左右や頭上或いは背後からから突如として鎖が出現し、瞬く間にその体を拘束していく。


「キシャャャーー!!」


 ドリアードが叫び声を上げながら、拘束を解こうと暴れるが、鎖は全く緩むことなく、寧ろ徐々に締め付けながら、ドリアードの体をしっかりと拘束し続けた。


「貫け! アイスジャベリン!」


 フェルが手を上に翳すと、そこに氷で出来た氷の槍が現れ、ドリアードに向かって一直線に飛んでいき、胴体に風穴を開けた。


「キシャャーー!」


 ドリアードは断末魔のような声を上げると、やがて力尽きたのかのように前向きに倒れていった。


「どう、どう!? お兄さん! 僕やったよ!」


 ドリアードとの戦闘を見ていると、フェルが満面の笑みを浮かべながら、大声を上げて、僕の方に駆け寄ってこようとした。

 その先程の圧倒的な闘いをしていたとは思えない姿に苦笑していると、死んだはずのドリアードの蔦がフェルに向かって延びてきていた。


「!? フェル! 避けて!」


 僕の叫びに反応してフェルは後ろを振り返り、回避しようとするがとても間に合いそうにはなかった。


(やばい!間に合え!) 


 そう心の中で呟きながら縮地の発動し、フェルと蔦の間に入るために、地面を駆け抜けた。 


「ぐあっ!」

 ガキン!という音と共にどうにか間に割り込み、攻撃を籠手を使って防ぐことに成功するが、蔦の先端にある刺の様なものが腕に食い込んできた。

 無理やりそれを掴んで力任せに引き抜く。腕に激痛が走るが、ドリアードが追撃を加えるためにもう一方の蔦を振るおうとしているのが見えたので気にしてる場合じゃない。


「ぐうぅ……ア、アレス! お願い!」

「はい! ハァァー!」


 ドリアードが蔦を振るい始めるのを確認し、すぐさまアレスに指示を出した後、先程と同じように籠手を使って攻撃を防ぐと、その蔦をそのまま掴んで逃げられないように引っ張った。

 その間も激痛が走り続けるのをどうにか我慢し続ける。


「キシャャーー!」


 ドリアードが僕を振り払おうとするのをどうにか耐えていると、


「束縛して!」


 その言葉と共に鎖が出現し、ドリアードの体を鎖が徐々に拘束し、身動きを封じる。

 ドリアードは必死になって拘束から逃れようともがいていると、そこにアレスが戦斧を手に駆けていく。


「いきます! 兜割り!」


 アレスが声を上げると、斧が巨大化し、刀身から光を放ち始める。

 それをアレスはドリアードの頭に向けて叩き込む。


「キシャャーー! ァ、ァ、ァ……」


 降り下ろされた斧がドリアードの頭を真っ二つにすると、ドリアードの体は緑色の液体を噴出しながら、叫び声を上げ、徐々に全身が茶色に染まっていき、遂には種のようなものを残して跡形もなく消えてしまった。


 [条件を満たしました。 スキルを覚醒します。]


 何時も通り頭に声が響いたと思ったら、先程まで感じていた激痛や倦怠感が徐々に無くなっていき、数秒後には何の異常も感じられなくなった。

 体の調子を確認しながら、アレスが種を回収して此方に帰ってくるのを確認するとフェルの方に向き直った。


「フェル、僕が何を言おうとしてるか分かる?」

「うん、ごめんなさい。 油断してました」


 フェルは僕が声をかけると、頭を俯かせながら、ぼそりと呟いた。


「全く。 今回は何ともないから良かったけど、何かあったらどうするの? 次からは気を付けてね? いくら回復が出来るからって死んじゃったらどうにも出来ないんだからね?」

「うん、次からはちゃんと確認するよ」


 フェルと話をしていると種をアレスが僕達の方に戻ってきた。

 その顔は怒りに染まっており、フェルに鋭い視線を浴びせていた。

 フェルが今まで見たことが無い怒った顔に怯えているのか、顔面蒼白になってガタガタ震え始めた。

 そしてフェルの前まで来ると腕を振るい、フェルの顔に平手打ちを叩き込んだ。

 パァッン!という音が辺りに響き渡る。

 突然の出来事に僕が固まり、フェルが驚いた顔のまま、アレスの顔を見つめた。

 フェルの視線を浴びながらアレスはフェルから視線を反らさずに話始めた。


「フェル! 先程も油断するなと勇気様に言われたのに何をしてるんですか貴女は! 死んでしまってたらどうするんですか! 余り心配させないでください!」


 アレスは今まで聞いたことの無いような大声でフェルに怒鳴った後、フェルの体を優しく抱き締めた。


「経緯はどうであれ、貴女は今は勇気様の従魔であり、私にとっては初めて出来た大切な仲間なんですから、無茶は止めなさい」


 アレスがフェルに優しく語りかけると、次第に言葉を意味を理解していったのか、フェルは瞳に涙を浮かべ、遂には泣き始めてしまった。


「う、うわ~ん! ごめんなさ~い!」


 わんわん泣きながら謝り続けるフェルに苦笑しながらも、アレスはその体を抱き締め続けた。

 その光景は僕が子供の頃に怪我をしたり虐められたりすると、姉や両親に優しく慰めてもらっていた時のように感じ、僕は何処か懐かしい気持ちになりながら二人を見守り続けた。



 

やっとまともな戦闘描写を入れることが出来ましたが、あまり上手く表現できませんでした。

自分の表現力の無さを呪うばかりです。

次回は頑張って今回よりも上手く表現できるようにしていきたいです。


スキル:状態異常完全回復

毒、麻痺などありとあらゆる状態異常を自動的に回復可能。

ただし病気には効果は無い

御意見、ご感想お待ちしております。

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