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プロローグ

VRMMOゲーム。

 それは数十年前までは、夢のまた夢までと言われていた技術だった。しかし2026年、ある一つの企業がとうとう念願のVRダイブマシンの開発に成功したのだ。


額と首、腹部、両腕そして両足に装着し、仮想世界でも現実世界と同様の動きができるように設計されたそれは、瞬く間に他の企業や医療機関、軍隊などから注文が殺到した。しかし、バーチャルリアリティーを造り出す技術がいくら発展しようとも、それを基準とするソフトの開発は殆ど行われなかった。


そこで2030年、ついに初のVRMMOゲームが造り出され、歴史に残るほどの人気を催したのだった。だがそれは恐ろしい程コストが高く、余程の金持ちではない限り、そのゲームの持続プレイ料金を払い続けることは不可能に近かった。

そして現在、2032年。ようやく民衆にVRMMOゲームが広がり始めた頃――





「あら、社長のお子様ですね。どのようなご用件でしょうか」

声をかけてきたのはこの会社のロビーの受付を行っている女性だ。キリッとした整った口調で子供の俺であろうと敬語を乱用してくる彼女にはどうも慣れない。


「あぁ、ちょっと親父に呼ばれてるんだ」


「わかりました。社長に伝えておきましょうか?」


「いや、結構だよ。どうせこの後すぐ会うんだしさ」


「さようでございますか」


ソファーがいたる所に設置され、やたらと多い観葉植物が並ぶロビーを駆け足で抜けて、奥にあるエレベーターのボタンを押しに向かう。そこにある5階のボタンを軽く指でさするように押し、そこがオレンジ色に光り出した。途端にポーンという音が鳴り響いて、二重構造になったエレベーターのドアが開く。速足でさっと乗り、ドアの真横に設置された『閉』と書かれた四角い枠を指でタッチする。



無音でエレベーターは上昇を始め、体が上昇する感覚に襲われた。2階に来たところで外の景色が目に飛び込んでくる。利用したことが少ない人は外の絶景に見とれてしまうだろうが、俺はこの会社の社長の息子という立場なので、そんな景色いくらでも見ることができるのだ。

なんとなく学校でちやほやされてるのが分かる気がする。……しかし上昇スピードが速すぎる。



再びポーンと鳴り響いて目の前のドアが開き、それに合わせて素早く外に出る。

俺が出るのと同時にエレベーターのドアは閉まり始め、俺がエレベーターを背に歩き始めるのと同時に、それは下へ下へと向かっていった。



「おう。来たか。遥輝」

俺に声をかけたのは俺自身の父親であり、この会社の社長でもある人物、宮沢泰希(みやざわたいき)だ。軽く顎に生えた不精髭をさすりつつ、再び口を開いた。


「今日はお前にコイツのテストダイブをして欲しくてな。お前、VRMMOは好きだろ?」

俺は父親がVR技術を開発していながら、俺は他社のVRマシンで他社のVRMMOで遊んでいる、なんとも異様なことをしているのである。


父親には本当に失礼な行為だと思っているが、当の親父の方は研究の一環とか言ってそれを嫌悪するどころか、自分ですら他社のゲームに浸っている。これで企業が務まるのか不思議だ……。


「それじゃ、そこにあるスーツを身に着けてダイブしてくれ、それで、これが管理者用のIDとパスだ。 お前はテストプレイヤーじゃなくてテストダイバーだからな。忘れるなよ」

そう言って親父は小さなメモを差し出してきた。そこには文字の羅列が2行。間違いなくIDとパスワードだ。


「あぁ、わかってるって」

最後の忘れるなよ。ということはつまりゲーム内で遊ぶなという意味だろう。管理者のデータでレベルやらが上がるかは知ったことではないが、このIDが課せられている今、恐らく俺は今回テストダイブする物の中で自由は効かないだろう。システム的な物以外では。

「何してるんだ?早くダイブしてこい」


「急がせるなよ……今足の装着具身に着けてるんだよ」

バンド状の器具を足にがっちり装着して、手にも同様の形の機械を身に着けあとは腹部に一回り大きいそれを装着。首にもそれを付けて最後は額に、いかにもサークリットといった感じのそれを装着して長い準備は完了した。孫悟空が着けてるアレである。



「よし……じゃあ電源つけてくれよ」


「何言ってんだ?もうついているぞ?」

父親に言われた通り、向こうの電力供給装置の緑色のランプが点滅している。気づかない俺が悪かったな。と少しばかり反省の顔色を親父に見せた。もちろん自分で見たわけではない。そうしたつもりだ。そして設置されたベッドの上に寝転がる。


「よし……、バーチャルネット接続!!!」

叫ぶと同時に目の前が暗転し、一瞬にして目の前が真っ暗になる。その後視界が回復して目の前に入力用のキーボードが出現、カタカタとパソコンの容量でそれを操作して記憶してあるIDとパスワードを入力。そのままログイン、と……。




『エラー発生!エラー発生!エラー…………』

ボタンを押した瞬間、あろうことかエラーメッセージが表示された。パスワードを間違えたか?しかし、その瞬間さらに不可解なことが起きた。目の前が真っ赤に染まり、そのまま意識が途絶えた。

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