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夢じゃなかった



結果から言えば、再会は思ったより早かった。




その夜。

レイは机で書類を読んでいた。


ふと、部屋の端の鏡が淡く光り始める。


レイの手が止まった。


……前回と同じ光。



彼は椅子に座ったまま、その様子を見つめる。

夢ではなかったのか。

それとも、ただ光るだけの現象か。


静かに観察していると、


鏡の光が揺れた。


次の瞬間。




裸足の足が、鏡の中から飛び出す。


レイはわずかに目を見開く。


続いて身体が勢いよく滑り出てきた。


「うわっ!」


女性の声。


そのまま前のめりになり――


どさっ。


長い毛足の絨毯の上に落ちる。




レイは数秒、その光景を見下ろしていた。


……前回の女性だ。


レイはゆっくり椅子から立ち上がり、歩み寄る。


絨毯の上で体を起こしたユラが顔を上げた。


少し照れたように笑う。


「レイさん!……また光ったから……来ちゃいました」


レイは小さく息を吐いた。


「……本当に来たんだね」


声は穏やかだった。




一度だけの現象だと思っていた。


もうたぶん、会うこともない。


期待していなかったはずなのに――

なぜか、少しだけ安心していた。





ユラは絨毯の上に座ったまま、ほっと息をついた。


それから顔を上げると、まっすぐレイを見たまま少し安心したように笑う。


「今日も繋がったのがここでよかったです」


レイはわずかに目を細める。


「……それは、僕の部屋でよかったという意味?」


「はい!もし毎回違ったらどうしようかと。夜の森とかだったら怖すぎます」


レイは小さく頷く。


「そういう可能性もあるのか」


そう言って、レイは自然に手を差し出した。


ユラは一瞬きょとんとする。


「……あ」


その手を見てから、レイの顔を見る。



前回に引き続きの王子対応にちょっと感動しながら、その手に自分の手をのせて立ち上がる。


「ありがとうございます」


レイは、遠慮がちに触れて、すぐ離された彼女の手を見た。

何も言わず手を下ろす。


ユラが立ち上がると、足元が一瞬目に入った。


裸足。


前回もそうだった。


レイは静かに言う。


「前回も思ったけど……裸足なんだね」


少し首を傾げる。


「君の国は、靴を履かない文化なの?」


ユラは一瞬きょとんとする。


「あ、えっと……家の中では履かない文化ですね。家の鏡から来てるので…」


そこまで言って、




ユラの顔がみるみる赤くなる。


「はっ」


小さく声が出る。


「私ってば……」


レイを見る。


「高貴な人のお宅に、2度も裸足で……?!すみません!」


レイは一瞬だけ驚いた顔をして。


それから小さく笑う。


「大丈夫」


穏やかな声。


「気にしていないよ」


そうして前回と同じようにユラにソファを進めた。




申し訳なさから、少しつま先立ちで歩くユラに気づいて


「……普通に歩いていいよ」


「いや、でも……」


ユラはまだ少し遠慮している。


レイは苦笑して静かに続ける。


「その方が転びそうだ」


ユラは少し迷ってから、そっと足を下ろす。


絨毯に足が沈む。


ふわっとした感触。


思わず声が出る。


「……やっぱりすごい」


レイが首を傾げる。


ユラは少し照れながら言う。


「やっぱり、この絨毯ふわふわだなと思って」


「そうなの?あまり気にしたことがなかった」


「はい。人生最高レベルの絨毯です」


レイはユラの表現に少し笑った。





ユラは絨毯を堪能しながらレイの向かいのソファに腰を下ろした。


「靴でしか歩かないなんて…ちょっともったいない」


レイは黙ってそれを見ている。


ユラは少し恥ずかしそうに笑う。


「すみません……なんか、はしゃぎすぎですよね」


レイは首を横に振ると、穏やかな笑顔で続ける。


「気に入ってもらえて良かったよ」


ユラは少し安心したように笑った。


「もし機会があったら……」


「寝る前とかに、試してみてください。絶対、気持ちいいですよ」


レイは一瞬だけ考えて。


それから静かに答える。


「そうだね。……試してみるよ」


ほんの少しだけ、口元が緩む。


けっこう本気で試してみようと思った自分が、なんだかおかしかった。





「前回、聞きそびれたんですが……」


「うん?」


「魔道具か色々あるのは、前回聞いたんですけど。

魔法って……みんな使えるんですか?」


「人によるかな。巧みな人もいれば、全く魔力のない人もいる」


「ちなみに、レイさんは……!」


「僕は……ひと通りできるけど……」


「ひと通りって??火や水を出したり、風をおこしたり?」


「……まあ、そんな感じだね」


「ちょこっと……見てみたいなー、なんて」


ユラのうずうずした様子を見て、レイは微笑む。


「そうだな……例えば、こういう?」


レイは、手のひらにリンゴくらいの光の玉を浮かべてみた。

ユラは目を輝かせ、身を乗り出した。


「すごい!!なんですか、その光は何に使うんですか?」


「何にと言われると……明かりの役目、かな」


「すごい!人体の神秘!どっから光出てるんだろ……」


「レイさん、瞬間移動とか、空飛んだりもできますか?」


「転移はできるけど、あまりやらないね」


「できるんですね……!?」


「魔法なら、僕の友人が得意だよ。自分で天才魔術師と言っているくらいだ」


「天才魔術師!」


またまた、異世界あるあるですね!

ユラは興奮してきた。

でも……


「自分で言っちゃうあたり、クセ強めですね……」


レイは、思わず小さく笑った。


「……そうかもね。機会があったら会わせてあげるよ」


「楽しみにしておきます!」


レイは、静かに頷いた。




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