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新月の奇跡




光がおさまって、レイが目を開けると……


小さな部屋。見たことのない家具。

中央には木製のローテーブル。


床に座り、

黒い板をカタカタと叩いている女性。




「……ユラ?」


ユラの手が止まる。


ゆっくり顔を上げる。




「レイ?!」


ユラは驚いて立ち上がり、レイに近づく。


「ど、どうしたの?!どうやって?!」


レイは少しだけ考え込む。

それから静かに答えた。


「……わからない」


「え?」


レイはユラを見つめる。


そして少し困ったように笑った。


「ただ」


一歩近づく。


「どうしても君に逢いたかった」


ユラは息を呑む。




「気づいたら……ここにいた」


部屋が静かになる。





レイはユラをまっすぐ見つめた。


そっと手を伸ばし、

ユラの頬に触れる。


「……会いたかったんだ」


「ずっと」

「君のことばかり考えていた」


ユラの瞳が揺れる。



「ユラが好きだ」


「君といたい」

「これからも、ずっと――」





「……レイ」


静かな声で、少しだけ言葉を探す。


「……私も、レイが好きだよ」



レイの呼吸が止まる。



「レイの言葉……信じられないくらい、嬉しい……」



思わずユラを抱きよせる。

ユラも、レイの背に控えめに腕を回す。


――少しの間、何も言わなかった。




けれど、少し悩んだ後、ユラは寂しそうに笑う。



「私も、レイといたいよ」

「でも………」



ユラは言葉を選びながら続ける。



「レイには、守るものがたくさんあるでしょ」



声が、不安げに震えた。



「なのに私、一緒にいても何も力になれない……

レイの負担に――」



ーーなるのが怖い



レイは、ユラの唇にそっと指を当てた。



「その先は」


一瞬だけ言葉を止めて、


「まだ、言わないでくれないか」




レイは、少し息を吐く。



「ごめん。ユラに会えたことが嬉しくて……」


「無責任に気持ちを伝えてしまった」




レイは静かに続ける。


「好きだと言ってもらえただけでーー」


少しだけ目を伏せる。


「……今は、それで十分だ」


「……中途半端なまま、君を縛りたくない」




「僕にも」

「片づけなければならないことがある」


「全部終わったら――」


一度、言葉を切る。


「……君が、何の憂いもなく僕といられるようになったら」


「その時もう一度、続きを聞かせて」





ユラは、少し戸惑った後、彼の胸に顔をうずめた。




「……じゃあさ、ずるいこと言ってもいい?」


「ん?」




「先のことはわからないけど」


ユラは赤い顔のまま、不安げに問う。


「今は……ただ、レイが好きなだけの、恋人でいていい?」




「ユラ……ありがとう」


レイは、優しく微笑んでユラを抱きしめた。






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