終戦、そして…
完全にやられた。
こっちは兵士が睡眠不足で何より戦力が向こうに割れた。
「デグロムさん。今攻めてこられたらひとたまりもない。引こう。」
「ヨシフ、そう決断を焦るな。何もこの現状が知らされているとも限らん。」
なに呑気なこと言ってんだ。
「私は疲れたから横になりたいわ。後はみんなでどうにかしてちょうだい。」
「おいっ!。こんな時に何言ってんだ。指揮官が離脱するとか正気か?」
「うるさいわねぇ。ヨシフは考え過ぎなのよ。そもそも、要塞がある相手が何でわざわざこっちに攻めてくるわけ?意味わかんないわよ。」
そういう固定概念があるからだろうが。
そんな絶望の中、一人の男が目の前を通った。
「おい、待て。もしかして一晩中寝てたのか?」
「そうだけど何か問題ある?」
「ほかの兵士は?お前の軍の兵士も寝てたのか?」
「兵士?知らないけど。少なくとも僕は、昨日の軍議が長引きそうだったから、途中で抜け出して横になってたんだよ。」
マジか。すぐにカエンの軍が配置された場所にまで走った。
見たところ、ほとんどの兵士が休息をとれているようだった。
「これなら戦える。」
日が昇ってから数時間がたっただろうか、今日も要塞を攻め続けた。
ちなみに今攻めている軍隊は昨日一睡もできなかった軍であり、
俺が回復魔法であいつらの体力を回復させた。
っていうのは嘘で、最初の数人には魔法で回復させたが、他のにはしてない。
要はプラシーボってことだ。
あいつらを本体と思わせ、
こちらに攻めてきた奴らを俺と元気なカエンの軍でたたくっていう作戦だ。
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しかし、若いのぅ。
昨日と同じように力技で来るとは。向こうにはロクな指揮官がいないようじゃな。
昨日から、要塞には大した戦力は配置しておらんわい。
「では攻め込むとするかの。ベルダーよ、指揮はおぬしに任せるぞ。」
「はっ。」
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「デグロムさん、兵士からの伝達です。来ました。」
「うむ。全員、配置に着け。敵を迎え撃つぞ。」
「敵だぁ、敵が来たぞぉ。」
よしっ。かかった。
「うぉっ!」
前もって設置していた落とし穴に多くの兵士がはまっていく。
その落ちた兵士を上から突く。簡単な仕事だ。
「兵士は左に旋回しろ!恐らく何もしかけられていない。」
見抜くのが速いな。ただ、…
そこには一番戦力を割いてんだよ。
「でろっ。敵を西に押し返せっ!」
「うおおぉぉっ。」よし、大方うまくいっている。
「くっ。退散、退散だぁ。」
判断が速い。けど、さんざん叫んで位置を教えてくれたからな。
「氷槍」
「ぐがぁ。」
ちっ、微妙に位置をずらしやがった。
「追え。大将を殺すんだ。」
指示を出したが、相変わらず初動が遅い。
対照的にすぐに退散した相手は、撃退されたものの被害を最小限に抑えた。
「大勝利だなっ、ヨシフ。」
俺がこれからどうしようか必死に考えてるってのに。
マジでこのおっさん役に立たねぇな。
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「何?!、ベルダーが帰ってきただと?」
「はい。魔法によってけがを負わされているようで今、治療を受けています。」
「奴にけがを負わせるとは、向こうにもなかなかスジのいいのがいるのぅ。」
「さらに、向こうに送った兵士も全員こちらに退避してくるようです。」
「なんじゃと?。」
「どうやら、向こうにはめられたようでして。」
はめられたじゃと。そんな切れ者がいたとは。
「ベルダーの容体はどうじゃ?」
「心臓には当たってないので、致命傷ではないです。回復魔法もかけ、安静にしている状態です。」
「ベルダーよ。しんどいかもしれぬが、何があったか教えてくれぬか?」
「はめられました。向こうはこちらが攻めてくると読んでいたようです。」
「ふむ。しかし、むこうのデグロムは、戦士としては能力は高いが、そんなに頭が使えるやつではないからのう。」
「それなら、恐らく指揮を執っていたのはあの魔術師ですよ。」
「ほぅ、あの魔術師が。」
「まさか、このわしがはめられるとは勝ちに急ぎ過ぎたかのぅ。」
「しかし、あの魔術師は一昨日になってから入隊したようですね。ヨシフ・クイール。魔術師としての等級は不明ですが、昨日のガユンの情報と併せて考えても、最低でも7級下手したら4級クラスかもしれません。」
「7級が相手とは消耗戦になりそうじゃのぅ。他の奴らを呼べ、軍議を開くぞ。」
「…て、敵襲!!。」
「なんじゃとぉ!」
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今回の攻防で消耗戦になるとでも思ってるんだろ。
一気に決めさせてもらうぜ。
「お前たちは。俺とキルラの道を作れ。指揮官を殺したら俺たちの勝ちだ。」
「おぉっ!」
その先はすぐに片付いた。
戦力を全つっぱした俺らの軍は、あっというまに指揮官までの道をこじ開けた。
そしてそこに、休養を取ったキルアと俺、数名の戦闘力の高い兵士が指揮官3人+ジジイを殺し、俺たちは勝利の雄たけびを上げたのだった。
「うおぉぉっ。」
そしてそのまま軍は要塞へと向かった。
指揮官が死んだ話が出回ったのか、戦意を喪失した相手を鎮圧するのにもそこまで時間はかからなかった。完全勝利だ。
その帰り道、
「ヨシフってすごいんだね。魔法だけじゃなくて頭もいいんだ。」
「さっきまでは、大げさだって言ってたやつが何言ってんだ。」
「それはごめんって。これってさぁ、帰ったらみんなに称賛されちゃうやつ?」
こいつ、途中まで寝てたくせにマジで調子いいよな。
まあでも、兵士としての能力は高いんだけどな。
「トランダーもお礼言わないと。」
トランダーも頭は悪いが、能力はある。
正直、要塞の戦力をあそこまで削ってたとは予想してなかった。
「まぁ、そうだな。助けに来てくれてありがとよ。」
こいつ、自分が囮にされてたことに気が付いてないのか?
そしてやっと本陣に帰ってきた。
「要塞を落としたぞ。大勝利だ!!。」
トランダーが叫んでも誰も反応しない。
本陣の近くに血が飛び散っているのが見えた。
なんだ?だれか死んだのか?
その血が誰のものかが分かった瞬間、一気に血のけが引いた。
「デグロムさん?」
「ねぇ、うそだよね。デグロムさん?」
キルラが必死に呼びかける。
その瞬間、何が起こったのか理解した。
「残っている兵士に告ぐ!今すぐ、カエン・バーラムを探して捕獲。もしくは、殺害しても構わない!!。直ぐに探せぇ!」
そして、日が沈んで夜になってもカエンは見つからなかったのだった。




