入隊?
ザクザクと霜の降りた土を踏み鳴らす音が消えてから10分ほどたっただろうか。
俺は今、エルリアの首都ボアにいる。
太陽が地上を照らしているので厚着をしていなくても今のところは快適だ。
「すいません。今日中にエルリアを出たいのですが、どうすればいいですか?。」
「南に見える鳥の模様をした門へ行って門証を見せれば出られるよ。」
「ありがとうございます。」
よし。このままいけば今日中には確実に外へ出られるな。
目指すは、人間種の住む国アリス王国だ。
国に着いたらどうしようかと考えを巡らせてたら、すぐに門に着いた。
早朝だからか意外と人が少ない。
「はい、門証を見せてね。」
門証っていうのは、異国を行き来するのに使うパスポートのようなものだ。
「通っていいですよ。」特にトラブルなく門を抜けた。
南に5kmほど歩いてやっと人間種の国アリス王国に到着した。
予想通りエルリアよりもインフラが整っていて、きれいな街並みである。
まずは、宿を探さないとな。
「ᛮ ᛯ ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ ᛷ ᛸ 」
「なんだい、この国ではそんな言葉は使われんよ。」
えっ、日本語?
「すいません。まさかと思いますが、もとは別世界に住んでいたんですか?」
「なぁに言ってんだい。この言語がこの国での公用語だよ。」
日本語が?もしかして人間の祖先ってのはもとは日本人の転移者なんじゃ。
「話が変わってすいません。ここで一番安い部屋を借りたいんですが。」
「期間は?」「日払いでお願いできませんか?。」
「はいよ。この鍵持ってって。三階の一番左ね。」
最安値なだけあって、ベットは薄いが問題ない。
とりあえずは、お金を稼がないとな。
「チャリン、チャリン。」
「いらっしゃいませ。」
ギルドの扉を開けると、赤髪の少女が目に映った。
「冒険者の登録ってできますか?」
「はい。新規の登録ですと5000ポールかかりますがよろしいですか?」
「はい。よろしくお願いします。」
「この石板に手を重ねてください」「はい。」パァァッ。
ステータス
筋力 23 スピード 74
持久力 56 魔力 68671
「すごい魔力量ですね。10000でも相当すごいのに60000って…
見たことない数字ですよ。」
俺も今日初めて知った。まじか、やっぱ転移者ってすごいのかな。
「ありがとうございます。ちなみにこの近くに訓練場らしき場所を発見したんですけど、あそこって誰でも使える場所なんですか?。」
「登録をしてたら、使えますよ。入口の係員にこのカードを見せてください。」
「分かりました。ありがとうございます。」
「チャリン、チャリン」「ありがとうございました。」
まさか魔力量が60000とは。俺ってもしや強い?
ていっても魔法が使えないと意味ないよな。訓練場に行ってみるか。
「すいません。訓練場を使いたいんですけど。」
「冒険者の方ですね。入っていいですよ。」カード見ないのかよ。
「恥ずかしながら魔法を使えなくてですね。ご指導のほどよろしくお願いできないかと。ギルドの受付の方から、ここの係員は優秀な方が多いと聞いたもんで。」
もちろん真っ赤な嘘だが。
「そうですか。ははっ、困ったまあ。」露骨に鼻の下を伸ばして喜んでいる。
あのおねーさん美人だからなぁ。
「では、さっそく中へ入りましょう。」
「まずは、初級魔法を使えるようにしないとですね。最初は詠唱が必要ですが、魔力が集まる感覚さえイメージ出来れば、詠唱を短縮したりできますよ。」
ふむ。そういえば、こっちに来てから魔法を見たのは一回だけだな。
「赤き小さき火花よ、闇をを切り裂け。火玉」
「ドゴォ。」
「とまあこんな感じで。」
なるほど。よしっ、やってみるか。
「赤き小さき火花よ、闇をを切り裂け…」
「ゴォゴォッ。」おいおいでかすぎだろ。
「ひぇっ」
せっかくだから打ってみるか。
「ファイ…」火玉?いや違うな。
「煉獄の海」
その瞬間、スタジアムの全足場が一気にマグマで覆われた。
「ボシュッ。」「くっ。」魔法を下に打った反動で宙に浮かぶ。
「全員、空中に退避しろおぉぉっ。」
「な、なんだこれぇ。」「テロか?テロなのか?」
打った俺が一番びっくりだよ。ってゆーか。
「これどうやって着地すればいいんだ?」
無常にも宙に浮かんだ体は真下に落下している。
「ボスッ」「こんな大規模な魔法は使えるのに、重力魔法は使えないのか。」
「た、助かりました。ありがとうございます。」
「まったく上になんて報告すりゃあいいんだ。」
少し時間がたって俺は今、ギルドマスターの部屋にいる。
「なるほど。事のいきさつは大体把握した。しっかし、戦術系魔法をいきなり初心者が発動させたとは、驚きだな。石板の記録も見た。お前ならすぐに7級になれるだろうし、もしかしたら3、2級あたりにも手が届くかもな。」
なんだそれ。まあ何でもいいから早く帰って飯が食いたい。
「お前、事の大きさを把握できてないようだな。あの訓練場は本来兵士も滞在する場所なんだよ。今回は全員が魔術師だったから死者は出なかったが…、まあそれを抜きにしても闘技場の修理費もろもろでお前には金を請求させてもらうぞ。」
「えーっ。マジですか。金は勘弁してくださいよぉ。」
「ふざけんなっ。2m以上のマグマをどう処理すればいいんだ。今お前がここで俺と話している間もギルドの係員はマグマを冷まそうと必死に働いてるんだぞ。」
それは申し訳ない。「分かりました。いくらなんですか?。」
「15億ポールだ。」はっ?そんな金額一生かけても払えないぞ。
「払えないだろうなぁ、まぁただまて。お前が魔術師として王都の軍に加わるっていうなら話は別だ。それも、このサファンギルドの元トレーニング生という設定でな。どうだ?。」
そんなん選択肢を与えてるようで一つじゃないか。
「わかった。軍に入る。それでいくら負けてくれるんだ?」
「もちろん、全額だ。」あーこれ15億ってのはうそっぽいな。
初めからだます気だったのかよ。
「そうとなったら話は早い。今日手紙を送るから明日には向こうから使者が来るだろう。今日はもう帰って、飯を食って寝ろ。」
じゃあもう帰るか。
「おいっ。」席を立って部屋から出ようとしたら呼び止められた。
「お前、ほかに隠してることあんじゃねぇのか?」
隠してるなにも、そもそも知らないんだよ。
「そんなもんないですよ。」
「そうか。」
ギルドを出たら魔法の反動なんだろうか、どっと体に疲れが出たような気がした。
その日は、食事をとる気にもならなかったので宿に戻りすぐに就寝したのだった。




