転移初日ってあれっ?
俺は、絹田義男。大学生だ。いや、元大学生のほうが正しいな。
俺はバイクにはねられ、気が付いたらわけのわからない世界に転移していた。
憶測だが、ここは俺が生まれ育った地球とは異なる世界。つまり異世界だ。
何故そんなことがわかるかって?そりぁあ、
動物の頭をした人間が、目の前にわんさかいるからだ。
「まじか、何だこりゃ。」しかもこいつらは何か言葉を話している。
コミュニケーションが取れないとなると相当厄介だ。
てゆーかこういうのって普通、話せるバフがかかってるもんだろ。
いくら俺とはいえ見たことも聞いたこともない言語を話すってのは無理なもんだ。
「とりあえず、衣食住をどうにかしないとな。」
この世界での法律ってのはよく知らないが、
文明が一定以上発達しているのを見るに盗みが大丈夫なはずがない。
店主が目を離したすきを見計らってっと、
「 ᛮ ᛯ ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ ᛷ ᛸ 」
ばれたか。逃げろっ。
自慢だが俺は高校時代400mの選手でu18の日本記録保持者なのだよ。
君たちが追いつけるわけなかろうが。
「タッタタタッタ。」はい、イージー。巻いたかな?
「ドガッ。」「えっ。」
「 ᛮ ᛯ ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ ᛷ ᛸ 」嘘だろ、こんなに簡単に捕まった。この俺が?。
「᛫ ᛬ ᛭ ᛮ ᛯ ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴ」狼頭の奴が、何やらニタニタと仲間に向かって話してる。
これは、詰んだかもな。手足を無理やり縛られ、馬車に乗せられた。
周りを見渡すと、様々な種族の子供が俺同様手足を縛られているのが目に入った。
これは、恐らく「奴隷売買か。」
しばらくは混乱したが、徐々に今自分がおかれている現状を冷静に把握し始めた。
これからどうするか模索していると、ガタガタという馬車の揺れが止まった。
「着いたか。」いかにもって感じの門の前に着き、俺たちは馬車から降ろされた。
恐らくここは、俺が最初にいた街から10kmほど離れた場所のようだ。
「 ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ」「ドカッ。」
「ってぇな。何すんだよ。」いきなり背中を蹴飛ばされた。
ぞろぞろと倉庫に入っていくやつらに習って倉庫に入った。
しかし何だこの匂いは。どんな管理したらこんなんになるんだ。
「 ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ」無理やり檻に押し込まれる。つーかせめぇ。
これからどうしようか。ここからの脱走は可能なのだろうか。
そんな問いが頭をぐるぐると駆け巡る。
「いや待てよ。」このまま脱走したとしても、恐らくまともな生活はできない。
常識に言葉。俺には足りないものばかりだ。だから、
「このまま、買われるってのも一つの手か。」
まぁ、主人ガチャに頼らなきゃならないのは癪だが、
このまま一人でってのも期待薄だ。一旦は、従順なふりでもしますかな。
この前の出来事から丸二日たった今日、俺らはまた馬車に乗せられている。
恐らく市にでも向かっているんだろう。
たったの二日間とはいえ、得られたことは多かった。
まず一つ目は、言語に関してだが、恐らく文法構造が英語に近いということだ。
これは、支配人の奴らの会話を聞いてれば大体把握できることだ。
俺が、この期間にやってたことといえば奴らの会話を集中して聞くことだった。
そして二つ目は、この世界には魔法があるということだ。
まあ肝心の俺が使えるかどうかについては、わからなかったがな。
まあそれもこれも「これから買ってくれる奴に期待だがな。」
「バチィッ。」「 ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶv ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ」
結論から言おう。売られた、確かに売られたんだが………
これは大外れを引いたかもしれない。
なんでなんだよクソッ。こんな野蛮な奴が飼い主とは。
人間のような見た目をしており、頭には猫のような耳、尻には尻尾がついている。
そして何より暴力的だ。ちなみに今は家畜の世話中。
俺が動物の飲み水をぶちまけちまったから、ぶったたかれているのだ。
チッ。魔法でも使えればボコせるかもなんだがなぁ。
「 ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶv ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ」「コトッ。」
いろいろ入ったスープが目の前に置かれた。
まぁ、ある意味衣食住は安定している。
朝昼晩の三食に、夜は家の中で布にくるまって寝させてくれる。
基本的に労働は、飼っている動物?の世話と庭の手入れ、家の掃除ってとこか。
しっかし、放任にもほどがあるだろ。逃げられたらどうするんだ。
この大女は一人で暮らしているようだ。
体つきを見るに引退した兵士か何かなんだろう。
「 ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ」
よしっ、掃除か。彼女が何言ってるかなら大体わかるようになってた。
もっとも要求することは、仕事以外ないのだがな。
案外、異世界ってのも余裕だな。
「 ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ ᛰ ᛱ ᛲ ᛳ ᛴᛵ ᛶ」大女が、若干申し訳なさそうにこちらを見ている。
目の前には大量の茶色い何かが山積にされていた。
その横にはシャベルと樽がおかれている。
そして、その光景が目に入った瞬間ツンとした異臭が鼻の奥を刺激した。
やっぱ、無理かも。




