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【第10話その2】公爵令嬢と高潔なる虚勢

 その夜、眠りは訪れなかった。


 私は机に座り、カードホルダーを手に取り、何度目かもわからないほどバックルを指でなぞっていた。


 ヴォイド・フィーラインは窓辺に腰を下ろし、尻尾を怠惰に揺らしながら月光を眺めている。




 寝る前にもう一度試した。


 ハーネスを彼の体に巻きつけ、すべてのバックルを調整し、自分でも信じていない励ましを囁いた。




 それはただ、ぶら下がっていた。


 ゆるく。


 嘲笑うように。




 私は必要以上の力でそれを置いた。




 猫の耳が音に反応してぴくりと動いたが、振り向きはしなかった。


 その注意は外、私には見えない何かに固定されている。




 私は彼の視線を追った。




 窓の向こう、下の庭に見覚えのある人影が座っている。


 アズリール。


 以前と同じ模様の敷布の上に座り、小さな火が横で揺らめき、やかんから湯気が立ち上っている。




 テラワン。


 また。




 私は眉をひそめた。




 彼はどのくらいの頻度でこれをしているのだろう?




 考えるより先に、私は夜着を掴んで外へ滑り出た。




 庭は静かだった。満月の夜にだけ訪れる種類の静けさ。


 私の足音が砂利道で静かに軋む。




 アズリールは顔を上げなかったが、声ははっきりと届いた。




「こんばんは、カタリナ様」




「どうして私だとわかったの?」




 彼は私の後ろの道を示した。


 ヴォイド・フィーラインが小走りでついてきて、尻尾の炎が暗闇でかすかに揺らめいている。




「契約獣が教えてくれました」




 そりゃそうね。




 私は彼の向かいに座った。敷布は肌の下でひんやりしている。


 猫はすぐにアズリールの周りを回り、彼の足元に落ち着き、喉を鳴らした。




 裏切り者。




 アズリールは尋ねることなく二つ目のカップに茶を注ぎ、私の前に置いた。




「毎月これをしてるの?」私は尋ねた。




 彼は頷いた。「満月の間はね」




「知らなかったわ」




「カタリナ様はいつもこの時間は読書してますよね?」


 彼は私の窓に視線を向けた。


「ろうそくの光が見えますから」




 私は瞬きした。「……気づいてたの?」




「気づかないわけがありません。カタリナ様の明かりだけが、真夜中を過ぎても消えませんから」




 私は茶に視線を落とし、なんとなく居心地が悪くなった。


「満月のたびに読書してたの。でも最近は、帰還兵の件で……早く寝るようにしてる。仕事が多すぎて」




「ああ」彼は自分のカップから一口飲んだ。「だから最近、カタリナ様の明かりが見えなかったんですね」




 しばらく沈黙が流れた。火が静かにぱちぱちと音を立てる。




 それから彼が再び口を開いた。口調が変わっていた。




「カタリナ様……今夜は緊張してますね」




 私は固くなった。「大丈夫よ」




「ティーカップを絞め殺そうとしてるみたいに握ってますよ」




 私は視線を落とした。


 本当に、強く握りしめていた。




 私は無理やり力を抜き、カップを慎重に置いた。




「何でもないわ」




「本当に? 最近、様子がおかしいですよ。ヴェルドゥア公爵家の方々がいらっしゃる間も、『わたくし』も『ですわ』も使わない演技をして」




「演技なんかしてないわ! まだ勉強中なだけよ!」




「書斎にこもる時間もいつもより長い」




「それはただの仕事で……」




「嘘つき」




 その言葉は柔らかかったが、刃のように私の防御を切り裂いた。




 私は鋭く息を吐き、苛立ちが表面に浮かび上がってくる。




「わかったわよ。知りたいの? 私、契約獣を手懐けられないの」




 そこまで言った。


 言ってしまった。




 アズリールは笑わなかった。


 驚きもしなかった。


 ただ……待っていた。




 そしてなぜか、それが余計に辛かった。




「カードホルダーが統合しないの」


 私は続けた。言葉が今度は速く溢れ出る。


「ただぶら下がってるだけ。まるで何をしているのかわからない平民みたい。それで二週間後には登録簿が開く。公爵領全域から——もしかしたらその向こうからも——帰還兵が来る。そして私はその前に立つことになる。装備すらまともにできない獣と一緒に」




 私は拳を握りしめた。




「その後は? 王立学院。スペルカード習得は入学の必須条件よ。契約獣と絆すら結べないのに、どうやって私は——」




 私は止まった。


 息を吸った。




「時間が、なくなってきてるの」




 アズリールはしばらく静かだった。


 それから、私の完全なる憤怒の中で——彼は笑った。




 大声でではない。


 ただ静かで、腹立たしい笑い。




「面白いと思ってるの?」




「少しね」彼は認めた。まだ笑みを浮かべたまま。「簡単な解決策があるものに、そこまでストレスを感じているなんて」




「簡単?」私は彼を睨んだ。「何も簡単なことなんてないわ」




「ありますよ」彼はカップを置いた。「もし私たちの取引を終わらせられるなら——夏までに私を倒せるなら——アラム・パシルの方法を教えます。契約獣なしで王立学院の試験に合格できますよ」




 私は彼を見つめた。




「それがあなたの解決策? 何ヶ月も前にした取引?」




「はい」




「どうして今教えてくれないの?」


 私の声が少し上がった。


「どうして私に戦わせるの? どうして私を——」




「カタリナ様の兄上が、そうしないでくれと懇願したからです」




 その言葉に、私は凍りついた。




「何ですって?」




 アズリールの表情が変わった。遊び心のある端が消えた。


 彼は……ためらっているように見えた。


 居心地が悪そうですらあった。




「レイフ様はアラム・パシルの方法を知っています」


 彼は静かに言った。


「そして私に、カタリナ様に教えないよう約束させました」




 私は言葉が出なかった。




 兄が——こんなことを?




「なぜ?」


 その言葉は叫びのように出た。意図したより鋭く。




「レイフ様は、カタリナ様が目標を達成するためにどんな手段も使うと信じていて……この方法は、彼が望むやり方ではないんです」




 私は瞬きした。


 兄は私が獣を手懐けるのに苦労することを知っていて、それについて何も言わなかった。




「それは本当だけど——」




「彼は私と取引をしました。約束を……」




 アズリールはすぐには続けなかった。


 代わりに、彼はローブの中に手を入れ、小さく折りたたまれた羊皮紙を取り出した。




 彼は長い間それを見つめてから口を開いた。




「もしカタリナ様がアラム・パシルの方法を決して学ばなければ……彼が公爵になったとき、アシロンのすべてを私に返すと」




 その言葉は意味をなさなかった。




「全部?」




「全部です」


 アズリールは確認した。


「カタリナ様の叔父様方が持つ土地さえも。それは再び私のものになる——レイフ様の統治下で、私が子爵として。そして叔父様方が、私の臣下になる」



「それは……狂ってるわ。あなたたちはまだ子供よ。どうしてそんな取引ができるの? どれだけ多くの政治的問題を引き起こすか分かってる? 叔父様たちだけでも——」




「わかってます」




 彼の声は穏やかだった。


 穏やかすぎた。




「おそらく空約束でしょう」


 彼は続けた。


「継承政治の現実には耐えられない、子供の誓い。でもそれでも……」




 彼は私を見上げた。赤灰色の瞳が揺るぎない。




「アシロンの民を守るのが私の義務です。たとえそれが後継者の不可能な約束だとしても、私はそれにしがみつかなければならない。完全な希望を持って」




 私は彼を見つめた。怒りが何か別のものに溶けていく。




 混乱。


 同情。


 尊敬?




 わからなかった。




「どうして兄さまはそこまでするの?」


 私は静かに尋ねた。




 アズリールの表情が暗くなった。




「アラム・パシルの方法は、カタリナ様を殺すからです」




 その言葉は呪いのように空気に漂った。




「……何ですって?」




 彼は羊皮紙を脇に置き、わずかに身を乗り出した。




「カタリナ様、マナが何か知っていますよね?」




「もちろん。私たちの中を流れる魔法のエネルギー。契約獣を召喚するために使うエネルギーよ」




「はい。でもアラム・パシルでは、マナはただのエネルギーではありません。池なんです」




 私は眉をひそめた。「池?」




「カタリナ様の体は有限のマナを保持しています」


 彼は説明した。


「使う呪文はすべて、その池から消費されます。休めば、補充される。でも限界を超えて押し進めれば……枯渇します」




「それで?」




「そして、まだ詠唱している最中に枯渇すれば、死にます」




 火がぱちりと鳴った。




 私は寒気を感じた。




「すべての呪文がマナを消費します」


 アズリールは続けた。声は安定しているが静かだった。


「問題は、訓練を受けていない使用者は自分の容量を知らないということです。倒れる前に何枚のカードを使えるのか、わからない」




 彼は間を置いた。




「アラム・パシル出身でない人々は、それを身をもって学びます。二枚か三枚のスペルカードを使って……倒れる。時には、一枚で十分に殺せます」




 私は息ができなかった。




「だからアラム・パシルの方法は禁じられているんです」


 彼は言った。


「カタリナ様の国の貴族たちは、かつて誰かをだましてそれを使わせました。安全だと言い、ただ『もっと試せ』ばいいと。そしてその人々は、何が間違っていたのか知ることもなく死んでいきました。戦争中、私の民も侵略者たちに同じことをしました。私たちの方法を教えて……彼らが自ら死ぬのを見ていました」




 彼は私を見た。




「だから知識は封印されているんです。禁じられているんです」




 私は唾を飲み込んだ。




「じゃあ……あなたはどうやってるの? どうやってそんなに多くのカードを使って生き延びてるの?」




 彼は肩をすくめた。表情は読めない。




「わかりません。自分の限界を知りたいなら、死ぬまで続けるしかない。だからほとんどの人は二枚か三枚で止めるんです」




 私は初めて彼に会ったときを思い出した。


 彼が作った氷の森。


 一振りで切り裂いたカード——数枚どころではなかった。




「あの日、父上の前で七枚使ったわね」


 私はゆっくりと言った。




「はい」




「そして続けた」




「はい」




「本当は何枚使えるの?」




 彼はすぐには答えなかった。




 それから、静かに。




「戦争中、私は死ぬ覚悟ができていました。だから数えるために立ち止まることはありませんでした」




 その言葉の重みが、私の上に覆い被さってきた。




 彼は戦った——それぞれの戦いで生き残れないかもしれないことを知りながら。


 詠唱するすべての呪文が、彼を端に近づけた。


 それでも彼はやった。




 家族がすでにいなくなっていたから?


 失うものが何も残っていなかったから?




 私はそれを知っていた。知的には。


 報告書を読んでいた。


 彼が人質として到着するのを見ていた。




 でも本当に考えたことはなかった。


 本当には。




 彼はいつも穏やかだったから。


 いつも笑っていた。


 いつも制御していた。




 こんな月明かりの下で、私が彼を馬鹿にしたときでさえ……




「ごめんなさい」


 私は囁いた。




 彼は首を傾げた。「何に対して?」




 私は答えなかった。


 答えられなかった。




 代わりに、私は立ち上がり、ローブを払った。




「私……朝、やることがたくさんあるの。行かなきゃ」




「カタリナ様——」




「おやすみなさい、アズリール」




 私は振り返り、館に向かって歩いた。


 ヴォイド・フィーラインが後ろからついてくる。




 背後で、彼が静かにため息をつく音が聞こえた。




 でも振り返らなかった。




 部屋に着くと、私はベッドに崩れ落ちた。




 手が震えていた。




 恐怖からではない。


 ストレスから。




 カードホルダーは置いた場所に座っている。


 まだゆるく、まだ役に立たない。




 登録簿は二週間後に開く。




 帰還兵が来る。


 公爵領だけでなく——その向こうからも。


 報告書によれば、彼らはプログラムが父の領地だけでなく、聖戦のすべての兵士のためのものだと思っているという。




 事務所は小さすぎる。


 書記は訓練不足で、人数も少ない。




 そして私は、自分の契約獣すら手懐けられない。




 すべてが積み重なっていく。




 それが崩壊するのを、どう止めればいいのかわからなかった。




 私は顔を両手に埋めた。




 ほんの一瞬だけ。




 ただ、息をするために。

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