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ナイスタチンという薬剤は、非常にユニークな性質を持っていた。
それは、腸管で吸収されない「非吸収性抗真菌薬」っていう性質だ。
ナイスタチンは口から飲んだら、腸管内腔を通過してゆき、最終的には便として排泄される。
そんなナイスタチンが作用できるのは、腸管内腔だけだ。
吸収されないため、血液中には乗らない。
僕にとってナイスタチンのこの性質は画期的だった。
なぜなら場所を明らかにしてくれるって考えたからだ。
もしナイスタチンの服用によって、僕にダイオフ症状が生じれば、それは「腸管内腔のどこかにいる真菌が死滅することに伴い、症状の悪化が生じている」と判断することができるからだ。
それは「大腸菌のカンジダ菌によってうつ病が生じるとする仮説」を裏付けると考えたんだ。
(つづく)