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彼女の皮膚症状は、システインの摂取で悪化したんだ。

正確に言うと、悪化していると自覚していたんだ。


僕の目から見て、その皮膚の炎症は1日で大きく変わった印象はなかった。

しかし、本人の感覚で言えば、皮膚に感じる違和感や痒みは増したそうだ。


これはあまりに大きな二つの意味を持っている。


一つは当然、彼女のアトピー性皮膚炎の病態にシステインが関与しているかもしれないということだ。

そしてそれは、彼女の体内にメチル水銀がある可能性を示唆している。

そして、いくつかの症例報告にあるように、水銀がアトピー性皮膚炎の発症に関与しているということを示唆しているかもしれない。


もう一つは、僕にとってさらに大きな意味を持っている。

それは、「僕らが患っているかもしれない水銀真菌症という病気が、彼女のアトピー性皮膚炎の原因になっているかもしれない」ということだ。

これは計り知れないほど大きな意味を持つ。


僕はこれまで実験を繰り返してきた結果、この水銀真菌症は治る病気だと思っていた。

ダイオフ症状もシステイン症状も、一度増悪した後、症状が一旦和らぐんだ。

つまり、原因となる物質や病原体が身体から排除された場合、これらの症状は消失するのではないかという希望的観測を持っていた。


夜さんの身体の中に、カンジダ菌と水銀が存在し、これ(水銀真菌症)が彼女のアトピー性皮膚炎の原因となっていると仮定しよう。

次に、この水銀真菌症という病気が、水銀とカンジダ菌(真菌)を取り除きさえすれば、症状が消失すると仮定しよう。


この二つの過程が正しければ、一体何を得るのか。

それは、僕が長年喉から手が出るほど欲しかった、でも実現は僕の生きている時間の範囲では無理だろうと考えていた、"水銀真菌症による他覚所見"だ。


皮膚症状は、当人だけでなく第三者的にも極めて簡単に視認することができる。


それは画期的なことだった。

僕が信用されないのは、僕が抱えている症状の全てが自覚症状であるからだ。

そのせいでどこにこの話を持って行っても、妄想だと一蹴されてしまう。

苦い思い出ばかりだった。


夜さんの皮膚症状は、水銀真菌症の存在を証明する切り札になるかもしれない。

僕はその日、興奮してあまり眠ることができなかったのを覚えている。

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