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僕はこのキレート剤に大変強い関心を抱いていた。
しかし、どうやらこのキレート剤による水銀などの有害ミネラル(金属)の排泄治療は、保険がきかなかった。
つまり自費診療で高い金をとられるってことだ。
僕はここまでにもう途方もない額のお金を使ってしまっていた。
お金がなかったんだ。
これ以上親族に借りれるだろうか。
もう何度も国家試験に落ちている。
親族の僕に対する目は厳しかった。
このキレート剤による点滴注射を受けることができれば僕は治るかもしれない。
しかし、それだけの金をどう集めればいい。
そして、このキレート剤治療に失敗すればいよいよ僕は信用も仮説も、崩れてしまう。
僕は長い時間をかけて築き上げた自説が崩れるのが怖かった。
毎日のようにキレート剤について検索をかけていたところ、一種のキレート剤がサプリメントとして販売されていることを知った。
当然投与方法は内服だ。
僕はこのサプリメントに対して、非常に懐疑的だった。
内服というのは、口から飲み込むってことだ。
そうすると、当然サプリメントは胃酸などの各種消化液にさらされてしまう。
その大半が消化されてしまい、分解されるかもしれない。
運よくそのままの形で血液中に入ったとしても、販売されているそのキレート剤は鉛に良く結合する性質を持っていて、水銀への親和性(結合する能力)はあまり期待できない代物だった。