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「綺麗な粘膜ですね。」
終始、彼はそう言いながら、僕の大腸全体をひとしきり観察して、検査を終えた。
正常だったんだ。
ベテランドクターの目をもってしても、僕の大腸粘膜には傷ひとつなかった。
大腸粘膜に異常がある場合、その詳細を調べるために大腸粘膜をピンセットみたいな道具で摘まんで、その肉片(組織)を採取することがある。
この組織を顕微鏡で観察して、病気の原因を詳しく調べるんだ。
でも、異常の内大腸粘膜をあえて傷つけて、組織を採取するなんてことはしない。
僕はただ、大腸粘膜の綺麗さを褒められただけで、検査は終わってしまった。
後日、改めて検査結果の報告を受けるために、傍は外来診察を訪れた。
大体、もう何を言われるか分かるだろ?
大腸に問題はない。精神科に行きなさいってところだろ。
「大腸カメラの結果、大腸に問題はなかったよ。打つ症状については精神科を受診した方がいいと思う。」
そして、僕は振出しに戻った。