表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/108

6話:武神祭1

 ついに武神祭の日がやってきた。朝の光がアルグラシアの街を照らし、興奮と期待に満ちた雰囲気が漂っている。

 街中には冒険者たちの姿が溢れ、彼らは自信満々に闘技場へと向かっていく。その姿を見ながら、俺は心の中で小さく笑った。


「今日も賑やかだな」


 エイシアスが横に立って呟く。

 俺たちのように、参加しない者にとってはただの見物でしかないが、それでもこの雰囲気は悪くない。


「まあ、退屈はしないだろう。どれだけの連中が、自分たちの限界を試そうとしているのか、見物してやるのも楽しみだ」


 強者たちが集まり、名誉を求めて戦う姿を見るのは、ある種の娯楽だ。

 闘技場へ向かう道すがら、俺は人々の熱気に圧倒される。大声で叫ぶ観客、装備を付けた出場者たち、どこか緊張感を漂わせた雰囲気が、俺の心を高揚させる。まるで祭りの真っ只中にいるかのようだ。


「参加しないのだ。観客席で楽しもうではないか」

「その通りだ。ここの連中がどれほどの実力を持っているのか、興味がある。だが、見物するのも一つの楽しみだ。面白い戦いが見られたら、それで十分さ」


 闘技場内に向かって周囲には人々が押し寄せ、入り口からは選手たちが次々に入っていく。俺たちのような見物客も、闘技場の中へと続く道を進んでいく。

 中に入ると、興奮に満ちた観客たちの声が耳に入ってくる。観客席はすでに多くの人で埋まっており、活気が溢れていた。


「さあ、どんな戦いが繰り広げられるのか楽しみだな」


 俺とエイシアスは観客席の最前列へと向かった。ここからなら、ステージを見渡せるので戦いを楽しめるだろう。

 皇帝のカリオスから、王族専用の観客席でもいいと言われていた。リリアやリオナスからも一緒にと誘われて言われていたが、初日くらいはこっちで見ると断りを入れた。


「さあ、始まるぞ」


 場内アナウンスが響き渡る。


「皆様、お待たせいたしました! ただいまより、バルデリア帝国アルグラシアで開催される第十回武神祭の幕が開けます!」


 アナウンスにより、会場は大盛り上がり。


「本日、この特別な祭りに参加するのは、世界中から集まった勇敢な戦士たち。彼らは名誉、栄光、そして賞金をかけて戦います! 観客の皆様、どうぞ熱い応援をお願いいたします!

まずは、予選ラウンドの第一試合が行われます。この試合は、参加者が自らの実力を証明する絶好の機会です。選手たちはそれぞれ独自の技や戦術を駆使し、勝利を目指します!

観客の皆様も、この壮大な戦いを見逃さないように! 今後数日間、武神祭はアルグラシアの街を熱気に包み込みます。戦士たちの雄姿を目に焼き付け、共にこの祭りを楽しみましょう!

それでは、第一試合の選手をリングに入場してください!」


 入場を待っている間に、簡単に武神祭の説明をしよう。

 各国から強者たちが集まり、剣士や武闘家、魔法使いなど、様々な職業の冒険者や騎士が参加している。

 武神祭は数段階に分かれており、まず予選ラウンドが行われ、勝ち抜いた者たちがトーナメントへの切符を手にし、準決勝、そして決勝へと進む。

 各試合はトーナメント方式で行われ、勝者は名誉と賞金を獲得する。

 武神祭では賭け事も行われているが、俺とエイシアスは興味がなかったのでスルーした。

 武神祭の期間中には、過去の優勝者や著名な戦士たちがゲストとして招かれ、特別なショーやトークセッションが行われることもあるらしい。


 選手たちが闘技場に立ち、戦いの火蓋が切られた。俺はその光景を見つめ、何が起こるのかを楽しみにしていた。

 俺たちは強者であるがゆえに、あくまで傍観者として、この祭りを心から楽しむことができるのだ。

 どれだけの熱い戦いが展開されるのか、俺の心は高揚し、期待でいっぱいだった。


 選手がリングに入場し、会場が静まり返る。

 そこに、先ほどのアナウンスが響き渡る。


「さあ、強者たちよ、今こそ名を馳せる時! 世界中から集まった勇敢な戦士たちが、己の力を試すためにこの舞台に立った! 勝利を手にするのは誰か? 己の名誉を賭けて戦う者、そして、勝利のために全力を尽くす者。彼らは己の力を証明するためにここに立っています! 果たして誰がこの場で真の強者となるのか? トーナメントへの切符を手にすることが出来るのか⁉ 己を証明する真剣勝負――開始!」


 ゴングが闘技場に鳴り響き試合が始まった。

 熱気が一気に高まる。武器を手にする者、魔法を操る者……それぞれが自らの技を繰り出し、激しい戦闘が展開されていく。


「案外おもしれぇな」


 目の前で繰り広げられる乱戦は、まるで暴風が吹き荒れるかのようだ。

 選手たちが互いに攻撃を仕掛け、ひらりと身をかわす姿は、まるで舞踏のようだった。

 一人の戦士が大剣を振るい、隣の魔法使いが炎の球を放つ。瞬間、爆発音が響き渡り、観客席が歓声を上げた。どの攻撃も、死力を尽くしている。だが、俺にとっては、彼らの戦いが真剣勝負であろうと、興味の対象に過ぎない。


「このままじゃ終わらないだろうな」


 そう呟くエイシアスもまた、楽しそうにリングで繰り広げられる戦いを見守っている。

 激しい攻防が続く中、誰が勝ち残るのか、心の中で期待を膨らませる。

 俺やエイシアスからしてみれば、誰が勝つのかは見て分かってしまう。しかし、それを含めても、この武神祭は面白い。

 これがあと数日続くのだ。退屈はしなさそうだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ