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1話:皇女

 黄金の髪が光を受けてまぶしく輝き、豊かなウェーブが肩に流れている。青い瞳は澄んでいて、まるで空のようだ。彼女の表情には緊張が漂っていたが、それでもその優雅な動きにはどこか気品が感じられた。


 彼女のドレスは、まるで花のように華やかで、周囲の景色に溶け込むかのように美しかった。細い腰にはシンプルなベルトがあしらわれ、彼女のスタイルを一層引き立てている。彼女が一歩踏み出すたびに、そのドレスが優雅に揺れ、まるで魔法のように見えた。

 そんな彼女は周囲を見渡し、そして俺とエイシアスを見て口を開いた。


「あなた達が助けて下さった冒険者でしょうか?」

「そうだな。俺はテオ。こっちはエイシアスだ」

「エイシアスだ。主と一緒に旅をしている」

「テオ様とエイシアス様ですね。私はリリア・フィア・バルデリア。バルデリア帝国の皇女です」


 皇女かぁ……まあ、今更貫いてきた態度を変えるつもりはないけど。


「皇女だったのか。それと悪いが、態度変えたりするつもりはない」

「貴様っ!」


 騎士たちが武器に手をかけるも、リリアがそれを手で制する。


「お待ちなさい。彼らは私たちを助けてくれた恩人ですよ」

「ですが……」

「それに、あなたちも理解しているでしょう? 彼らには勝てないと」


 それを言われ、押し黙る面々。俺はリリアの発言に、思わず「へぇ……」と声を零した。

 まさか実力差を理解しているとは思わなかった。ただ、すべてを理解しているとは思えない。


「皇女様の言う通りだ。やろうとも思えば、一瞬で皆殺しにできる。彼らのようにはなりたくないだろ?」


 俺は盗賊を見てそう告げると、騎士たちは黙ってしまった。誰も圧殺されたくないだろう。

 まあ、アレでもマシな死に方だ。内側から爆殺できるしな。


「お二人は帝都アルグラシアまででしょうか?」

「ああ。武神祭ってのが気になってな。見に行こうと思っていた所だ」

「そうでしたか。では、ご一緒に行きませんか?」

「リリア様、危険です」

「命の恩人です。お礼をしなくては、王族の名が地に落ちます」

「うっ、わかりました」


 引き下がる騎士を見ながら、俺は忠誠心が高いなぁと思う。

 皇女の護衛なのだから、それなりに強いのだろうが、俺とエイシアスから見れば雑魚に変わりはない。


「ならお誘いに乗ろうか」

「どうぞ馬車にお乗りください」


 俺たちは馬車に乗り、移動を開始した。

 リリアからの視線が俺とエイシアスに向けられる。


「お二人は冒険者と聞きましたが……」


 俺はCランクの冒険者カードを見せる。


「Cランク、ですか? それだけの強さなら、Aランクは余裕でありそうですが……」

「身分証代わりだよ。定期的に受けて更新だけはしている」

「なるほど。それだけの強さをどうやって身に着けたのか気になります」


 好奇心旺盛なリリアに、俺は捨てられて魔の森で生き抜いてきたこと、そこでエイシアスと出会ったことなどを話した。その話を聞くリリアは、楽しそうにしていた。


「なるほど。魔の森はそこまで強い魔物がいるのですか」

「だな~、今となっちゃ雑魚だけど。当時は毎日が必至だったよ」


 話が終わり、俺はリリアにバルデリア帝国について尋ねる。


「助けたお礼とかいらないから、帝国について教えてくれ。まあ、大体は聞いているから、帝都について教えてくれ」

「わかりました。お礼はいたしますが、お話ししてくれたお礼にお話ししましょう」


 リリアはバルデリア帝国の帝都アルグラシアについて話してくれた。


 アルグラシアは、バルデリア帝国の政治、軍事、文化の中心として知られており、帝国最大の都市。強固な城壁で囲まれ、帝国全体の防衛拠点でもあるとのこと。

 帝都は、王族や貴族、名誉ある戦士たちの住居が立ち並び、また帝国内外から訪れる商人や使者たちも賑わう場所のようだ。


 帝都の中心に位置する王宮は、巨大な塔や石造りの宮殿が特徴らしい。威厳と美しさを兼ね備えたこの建築は、バルデリア皇帝とその家族の居住地とのことで、リリアもここに住んでいるようだ。


 アルグラシアの中心には大広場が広がっており、広場には戦士たちの像が立ち並び、帝国の力と栄光を示している。

そんな広場の隣には、巨大な闘技場があり、武神祭などの競技などが行われるらしい。


 石畳の道路や高い建物が並び、特に貴族の屋敷や騎士団の本拠地が街の至る所に存在している。防衛的な塔や要塞も点在しており、都市全体が堅固な防御網を構成しているらしい。


「アルグラシアは、バルデリア帝国の強さと栄光を象徴する都市であり、その壮大な建築や戦士文化が際立つ魅力的な場所です。戦士たちや魔法使いたちが集い、名誉と力を競い合うこの都市は、帝国の中枢としての役割を果たしているんです」

「なるほどな。都市全体が要塞みたいなものか」

「そうですね。どの国も、この壁を破った軍隊は存在しません」

「それは凄い」


 本当に凄いことなのだろう。

 その後はおすすめの料理などを教えてもらい、雑談をしていると、リリアが提案をしてきた。


「テオ様、エイシアス様。帝国に仕える気はありませんか?」

「悪いな。仕えたところで、気に喰わないからと皇帝を殺すぞ? 期待するな」

「そうですか。残念です。報酬はご用意いたしますので、このまま王城にお越しください」

「結構だと言っている。俺たちは観光に来ているんだぞ?」

「存じておりますよ。せめてお礼をさせてください」

「はぁ、レグムントの王族みたいなことを言う」

「レグムントの王家とお知り合いでですか?」

「まあな。数ヵ月王城に滞在していた」

「なんと。では、お越しくださいますよね?」

「俺の負けだ。少しなら付き合うよ」

「ありがとうございます」


 リリアは笑みを浮かべ喜ぶのだった。

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