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5話:ジェントルマンになりきれない

 城に入り奥へと進んでいく。

 内部の装飾は何もなく、黒い騎士が並んでいた。

 これは多分、魔力とかで動くタイプだ。

 先ほど戦った黒い騎士は違い、人の気配がない。


「こちらです」


 装飾が施された大きな両開きが開かれた。

 長い通路には奥へと続く赤いカーペットが敷かれており、その先には階段があり黒い玉座が置かれていた。

その玉座に腰を掛け、宝石のような赤い瞳がこちらを見つめ人物が一人。彼女がエイシアスか。

 進むとその人物が良く見え、俺は声を失った。

頭から生える二本の黄金のツノ。腰から生える身丈ほどの黒い二枚の翼。

何より目が引かれたのは、天井から差し込む陽光が絹糸のような白髪をキラキラと照らしており、彼女の作り物めいたその美貌は神々しさを覚えるほど。


 階段手前に着いた俺は彼女と視線を合わせるが、思わずドキッとしてしまう。

 彼女からはここにいる者たちより存在感と、今まで以上の力を感じた。


「私の城に何用だ?」


 見惚れていた俺は慌てて答える。


「強い者を探しに来た」

「人間か?」

「そうだが、お前は?」

「私は天使と悪魔の間。さしずめ天魔とでもいおうか」

「まあ、そんなことはどうでもいい」

「同感だ。移動しよう。ここでは折角の城が崩れてしまう」


 エイシアスは立ち上がり俺の横を通り過ぎる。

 俺は素直に彼女の後に続き城の外に出る。

 すると外に赤丸がおり、エイシアスの目に入る。


「あのドラゴンは?」

「俺の移動用のペットだ。気にするな」

「……そうか」


 何か言いたげな視線を向けられたが気のせいだろう。

 敷地内に広場がありそこで戦うことになった。その前に確認事項があるので尋ねる。


「殺しは無しか?」

「アリでもいいがそうだな……どちらかが行動不能、あるいは降参したら負けにしよう。それと負けたら相手に服従するとかどうだい?」

「いいのか?」

「もちろん構わないよ。私は強いからね」

「そうか。それでいいなら」

「決定だ。早くキミを私のモノにしたいよ」


 え? 俺、こんな美女に狙われているの?

 立ち位置に着くが合図などはない。立ち位置に着いた時点で始まっているのだから。


「レディーファーストということで、お先にどうぞ」

「あら、紳士ね?」

「紳士が取り得だ」

「では遠慮なく。すぐに降参しないようにね?」


 エイシアスが手を振るうと俺に重圧がかかった。

 重力か。しかし残念かな。スキルを常に発動しており、発散の力で圧力を消し去っている。

 腕を振るうと押しかかっていた重力が消えるのと同時、エイシアスに上から重力をかける。


「ぐっ……この程度!」


 抜けだしたエイシアスは空を飛び、手のひらを俺に向けた。


「陽天」


 轟々と燃え盛る巨大な火球が俺目掛けて落とされた。膨大な魔力ということもあり吸収できるのかは五分五分。

 消し去るのは簡単。

 しかしそれではつまらない。

 だから俺は腰を深く落として拳を――振り抜いた。


「はぁっ!」


 瞬間、圧倒的な暴力が火球を消し去った。

 衝撃波は遥か空高くまで続き、雲の一部を消し去る。


「……は? え? な、なにが……」


 エイシアスは一瞬の出来事に困惑しているようだ。

 俺が何をしたのかは簡単だ。

 拳に魔力を集め、さらに引力で周囲の魔力を拳に集めて重力を使った指向性の一撃を放った。


 しかし、俺もここまで強くなったのだ。もう不幸な思いをすることはないだろう。

 だって暴力は全てを解決するのだから。


「どうした? この程度か? もっとお前の力を見せてみろ! それがどんなに凄まじいものでも、俺には関係ない!」


 最近は強敵ばかり戦ってきたせいなのか、戦うことが好きになってしまっている自分がいる。


「キャラ変わりすぎじゃない? まあいいわ、なら見せてあげる」


 そこから様々な攻撃魔法が俺を襲うが、その悉くを消し去り吸収したりとあらゆる手段を使い防ぎきっていく。


「はぁ、はぁ……どうして当たらない?」

「勝ったら教えてやる。遠慮はいらない。俺を殺す気でやれ!」

「キミ、イカれてるね。まあいいわ」


 エイシアスが右手を天に掲げると、空に幾何学模様の魔方陣が次々と展開され、それは巨大な一つの魔法陣を形成した。

 それが小さくなっていき、30センチほどの大きさになった。

 俺はあの魔法に込められている圧縮された膨大な魔力に気付く。アレには俺の最高の一撃を持って挑まなければと、警鐘を鳴らしていた。


「死なないようにね? ――原初の雫(アルス・ノヴァ)


 五センチほどの球体が、水滴が落ちるかのように地面に向かって落ちた。

 俺は腰を深く落とし、極限まで圧縮された操作可能なギリギリの魔力がスキル【重力】を使いさらに昇華させ極限まで高められる。

 今俺が放てる最強の一撃になるだろう。

 そして俺は、落ちてくる雫に向けて技名と共に拳を振り抜いた。


「――天轟拳撃(てんごうけんげき)!」


 拮抗することもなく、指向性の持つ一撃が天高くへと打ち上げられ――世界が眩しく輝いた。

 遅れて空気が、大気が震え衝撃がやってきた。


「うそ……」


 衝撃が収まって見上げたエイシアスの呟き。

 そこには大気が消え、夜が見えていた。


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