5話:女神ルミナの神託
◇ ◇ ◇
私――リリィは、この国、神聖リュミエール王国で聖女に選ばれた。
聖女になったのは今から四年前。ただの町娘だった私が、女神ルミナ様の神託により、候補から正式に聖女に認定された。
そこから生活は一変した。
毎朝大聖堂にて祈りを捧げ、その後は結界の確認。貴族の方々への挨拶だったりと、疲れる日々だ。しかし、これも女神ルミナ様に仕えるためと、頑張ってきた。
政治と聖女は切り離せないもので、自由などなかった。
裏の顔も見ることが多かった。それから私は仮面を被るようになった。
常に笑顔を張り付けるようになってしまった。
そんなある日、女神ルミナ様~魔王が復活したと神託を受け、私たちは決議の元、『勇者召喚』を行うことになった。
異世界から、女神ルミナ様の加護と恩恵を一心に受けた勇者を呼び出す儀式。それを行うのは聖女である私の役目。
何も知らない異世界の人を呼び出すのには抵抗があった。
私たちのために、命を懸けて戦えと言わなければならなかった。
勇者召喚は成功し、状況を理解した異世界の勇者様は引き受けてくれた。
そこから勇者様は、魔王との戦いに備えて訓練の日美を送っていた。
時々、勇者様の世界の話を聞くことがある。
そこは地球と呼ばれ、数十年も争いがない、国で生まれ育ったそうだ。
魔法とは違い、化学というものが発展した世界。そこでは鉄の塊が空を飛ぶんだそうです。
にわかには信じられなかったです。
勇者様がいた世界のお話は聞いていて楽しいのですが、ちょっと性格に難がありました。
「聖女様、勇者である僕とディナーでもどうだい?」
そう言って、ことあるごとに私を誘ってくるのです。
正直言って、その時の目は嫌な目つきをしておりました。私が目当てだということはすぐにわかりました。しかし、これが初めてというわけではありません。何度もそのような話はされてきましたが、すべて断ってきました。
そんなある日のこと、仕事が重なり祈りの時間が遅れました。
大聖堂には多くの礼拝者がおり、賑わっておりました。
大変喜ばしいことなのでしょう。
騎士の方たちが道を作る中、みんなが私を見ては声をかけて来るので、軽く手を振ることでそれに応えていました。
階段を登り、入り口に到着した時、人混みの中で一際異彩を放つ人物二名いました。
一人は、美しいという言葉では当て嵌らないほどの美を持ち、自然と恐れを感じてしまったが、すぐに気を取り戻した。
彼女は私を一瞥しただけで、つまらなさそうな表情ですぐに視線を外されてしまった。
そういう人も稀にいると、次に隣の黒い髪に赤い瞳をした、他より整った顔立ちをした彼を見た。
すると視線が合い、次の瞬間には憐れんだ表情で鼻で笑われた。
「まるで飾り物だな。つまらないものを見た気分だ。期待して損した」
その言葉に、思わず驚きのあまり、目を見開いてしまったがすぐにいつもの表情を浮かべる。
彼の言葉は、私のすべてを見て来たかのような、そんな言葉だった。
二人はそのまま目もくれず去ってしまった。
私はそのあと、彼の言葉が頭の中で何度も繰り返した。
きっと私のすべてを見通しての言葉なのだろう。
聖女として崇められるだけで、何もできない非力な私に向けられた言葉。
彼は私に何を期待していたのだろうか?
わからない。
でも、これだけは言える。彼は、私が想像する以上の苦難を乗り越えた者だということ。
そんな彼が、私に何かを期待していたのだ。
祈りの場に来た私は、いつものように祈り始める。
神託は脳内に語り掛けるように聞こえ、私以外には聞こえない。
今日は神託がない。そう思った直後、女神ルミナ様から神託が届けられた。
『聖女リリィに神託を授けます。かの者の名はテオ。彼の力は神である私でも計り知れず、破壊と混沌をもたらす者のように映ることでしょう。しかし、彼と敵対してはなりません。彼の力は、国の運命を左右します。いずれ来る大いなる危機の時、彼は我が国に必要不可欠な存在となるでしょう。その時こそ、彼の力をもって国難を切り裂き、未来への道を切り開くことでしょう』
神託を聞いたリリィは、その瞬間、先ほどの彼を思い出した。
何故だかはわからない。
しかし、神託が告げる『テオ』とは彼のことを指しているように思えた。
リリィは立ち上がり、騎士に告げる。
「女神ルミナ様から神託が降りました。今すぐ聖王様とお会いします」
「「「はっ!」」」
早く彼に会って聞きたかった。
私に何を期待していたのか、と。
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