10話:選ぶのは王である君さ
「は、話し合いだと! この状況でか⁉」
王様が声を荒げる。
誰がどう見てもふざけるなと言いたいだろう。
でも関係ないんだ。だって、力さえあれば権力にすら屈することがないのだから。
「それで、応じるか? それとも殺されるか。選ばせてやる」
「そんなの、脅しではないか!」
「もちろん、脅しているよ。でもね、殺す方が手っ取り早いんだ。国王だから、あえてチャンスをくれているんだ。そこを良く、考えることだ」
王女のアレティアは状況が理解できているようだ。
しかし、この惨状を見て顔をしかめている程度とは、案外肝が据わっているのかもしれない。
王妃に関しては気絶しているが、誰も心配の声を上げることができない。
「そのようなこと、一介の冒険者に許さるわけが――……」
一人の貴族が声を上げて何か叫んでいたが、五月蠅かったので指を鳴らす。
破裂して血肉を撒き散らし、近くにいた貴族が悲鳴を上げて尻もちを着いた。
「おい。お前らの今の立場を考えて、慎重に発言しろよ? 」
静かになった会場に、俺は淡々と告げる。
「で、どうする? 王様も、取り巻きも、ここで俺の機嫌を損ねたらどうなるか、分かってるよな? 気に入らないやつは、こうして一瞬で片付けるだけだ。だが、こうして少しは理性を見せてやってるんだ。話し合う余裕を与えてるのに、そんな馬鹿な発言ばかりしてると……無駄になるぞ?」
暫しの沈黙。
その沈黙を破ったのは王様だ。
「何が望みだ?」
「これ以上俺に関わるな。それとレグムント王国、ルノーとその騎士たちを殺すことも許さん」
「なっ⁉ そ、それは――」
「拒否権があると思っているのか?」
「――っ」
ルノー達は守ると約束したからな。あとでレグムントの王様に言っておかないと。
俺が一人で考えていると、隣に座るエイシアスが空間から茶器を取り出して、優雅にティータイムを始めていた。
この状況でふざけているのか、と言うことすらできない。なぜなら、彼女の実力もみんな理解しているから。
「あ、俺の分もいい?」
「当然、主の分も用意している。ほら」
ティーカップが手渡されたので、香りを楽しみ、口を付ける。
おっ、これは中々。
「美味しいな」
「ふふっ、ヴァルミス港で商人から手に入れた帝国産の一級品茶葉だそうだよ」
「へぇ、帝国か。次は帝国でティータイムといこうか」
「それはいいね。大きい国のようだから楽しみだよ。ところで……」
そう言ってエイシアスがアレティアを見た。
彼女はずっとこちらを見ていたようだ。
「お嬢さん、何か用かな? まさか、君もティータイムをご一緒したいのかな?」
「……いえ」
「そうか。聡明だとイスティリアから聞いていたが、どうやら違うようだね」
イスティリアという名前を聞いたアレティアがピクッと反応した。
「イスティリアと会ったのですか?」
「私が魔法を教えた。そうだね、人間風に言うのなら、『師匠』というやつだね」
「師匠、そうですか。テオ様、エイシアス様。王家とはどのようなご関係か聞いても?」
俺は「友人」とだけ答えた。
それだけで彼女は何かを考えているようだった。
そこで俺は疑問に思ったことを問う。
「兄が死んだっての、随分と無反応だな? それにこの惨状にも慣れているようだが?」
するとアレティアは自嘲気味に笑い、答えた。
「巷では英雄ともてはやされているのに、中身は小物なんですよ。それに、私のことは政治の道具にしか思っていない人です。死んだところで別に何も思いません」
良い国なのだが、王家は思ったより酷かった。
「テオ様、エイシアス様。望みとは一体? 先の発言が望みなのですか?」
「……それとも玉座か? ならこの王冠をくれてやる」
アレティアの言葉に王様が、俺が玉座を欲していると勘違いしていたので、思わず笑ってしまった。
エイシアスですら笑っている。
王冠は王の継承の証であるが、俺とエイシアスには不要だ。
エイシアスが答えた。
「王冠は素晴らしい装飾品だね。芸術性すら感じる。でも……その輝きが私を眩ませることはないよ。ほら、こうしよう。主の言うことを聞けば、その玉座は今のままキラキラと輝き続ける。でももし、逆らうなんて愚かなことをすれば……残念ながら、その美しい王冠も、この国も、ただの灰に変わるだけさ。選ぶのは王である君さ……もっとも、選択肢なんてものがあるとでも思っているのかい?」
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