9話:死にたくなければ話し合いしよ?
俺は現在、荘厳で大きな二枚扉の前に立っていた。
この先に、この国の国王がいるのだろう。
「テオ殿とエイシアス殿をお連れしました!」
隊長がそう言うと扉が開かれた。
足元には真紅のカーペッドが玉座に向かって一直線に伸びていた。
隊長に続いて歩み始めるが、周囲は武装した騎士ばかり。ちらほらと貴族の姿も見受けられる。
しかし、エイシアスが入ってくるなり視線が注がれる。
「ッチ、ゴミ共が」
エイシアスの呟きに、隊長の頬が引き攣っていた。
当然、周囲の者たちは気付いていない。
ぶっちゃけ、俺よりエイシアスを怒らせるほうが怖いぞ?
怒ったのは見たことがないけど。温厚な人ほど怒らせると怖いって言うよね。
「エイシアス、今はまだ待てよ?」
「まだ、ね。わかったよ、主」
やれやれといった様子で頷くエイシアス。
俺は玉座の目前まで来ると、その人物を見る。
40代後半ほどの、豪奢な服装に身を包む男性はリアン・ヘイゼル・シーヴェリス。
シーヴェリス王国の現国王であり、エルセリオスが「あの王は……」と言っていた野心のある男だ。
その隣の席に座っているのは王妃のイヴェリン・ヘイゼル・シーヴェリス。
続いてもう一つの席に座っている少女が王女のアレティア・ヘイゼル・シーヴェリス。
彼女はイスティリアがめちゃくちゃ褒めていたのを覚えている。
周囲の者たちの視線が注がれる。
「陛下の御前だぞ、跪くのだ」
側近だろう者が俺とエイシアスに告げる。
しかし、俺は権力者などに跪かないし、媚びることもない。
「お断りだ。で、用があるなら聞いてやる」
「――なっ⁉ 無礼者! 殿下を殺しておきながら何たる口調!」
周囲の者たちが俺を非難する。
しかし、そこに王様が待ったをした。
「静まれ」
その言葉で室内が静かになる。
静かになったのを確認した王様が口を開いた。
「貴様、我が息子を殺しておきながら図々しいにもほどがある」
「はぁ? 先に喧嘩を振ってきたのはあいつだ。殺されても仕方がないだろ。割り切れよ」
王様の顔が赤くなっていくが、それでも王だ。なんとか堪えている。
「貴様は処刑する。隣の女、貴様もだ」
「私を処刑と? 面白い冗談を言うではないか」
笑うエイシアスに、周囲は怒りで剣を抜きそうになっている。
それでも俺とエイシアスの態度は変わらない。
なぜなら強いから。
「主よ、あの愚者は私たちを処刑すると言っているが?」
「ほんと、面白い冗談だ。要件がされだけなら帰るぞ」
踵を返し、出て行こうとすると騎士たちに行く手を阻まれた。
「あ? 邪魔だろうが。殺すぞ?」
軽く威圧してやると騎士たちはビクッと震える。
これは忠告だ。
しかし、あの王様は命令した。
「殺せ! 何をしている!」
国王の命令には逆らえないのか、剣を構え直す。
「いいか。死にたくないなら武器を降ろせ。それでも戦うってのなら、殺す」
しばらくしても武器を降ろす気配はない。
隊長たちは俺の実力を知っているのか、武器すら抜いていない。
死にたくないらしい。
騎士たちが俺へと攻撃をしかけようと一歩を踏み込んだ。
「そうか。では死んでくれ」
指を鳴らすと、武器を持った騎士たちが内側からはじけ飛び、血肉を撒き散らした。
その光景に誰もが無言となり、貴族たちは「ヒィ……」と怯えた声を漏らして尻もちを着いた。
「お、お前たち! 何をぼーっとしている! 挽回をするチャンスであろう!」
隊長たちに命じる王様だが残念。
「陛下、何度も申し上げましたよ。テオ殿を相手に戦うのは無謀だと。私たちは死にたくないので、戦うならどうぞご勝手に」
命令を無視した隊長たちに誰もが目を剥いた。
普通ならありえない光景だからだ。
「あとでレグムントの王家に紹介しておくよ」
「ありがとうございます」
お礼を述べる騎士たち。
「き、貴様らレグムントに寝返るのか⁉」
「このような命令でなければ従っていたのですがね。私たちも死にたくはありません。今までありがとうございました。生きていることを祈ります」
そう言って場を静観することにしたようだ。
権力者に屈しない騎士。いいね!
すると、騒ぎを聞きつけた騎士たちが流れ込んできて、俺とエイシアスに剣を向けた。
「その裏切りの騎士を含めて奴らを殺せ!」
どうやら隊長たちを逃がさないようだ。
裏切り者は始末する。当然と言えば当然だ。
「主よ」
「うん? ああ、話すのに邪魔だから殺していいよ」
「そうか」
エイシアスが片手を横に振るうと、なだれ込んできた騎士たちが細切れとなった。
その光景に誰もが押し黙る。
「さてさて。死にたくなければ話し合いでもしようか?」
俺はエイシアスが魔法で用意した椅子に腰を下ろし、そう告げるのだった。
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