6話:報告はしないとね
王子が空中で破裂した。
そのことに騎士たち以外にも、民衆すら戦慄していた。
「そ、そんな……」
「れ、レオナード王子が……」
騎士たちは自国の王子が死んだという現実が受け入れられないのか、動こうともしない。
そんな中、俺とエイシアスはというと……
「お腹空いたな」
「うむ。あそこからいい匂いが漂ってくる」
「行ってみるか」
終わったとばかりに料理を食べに向かっていた。
しかし、気を取り戻した騎士が俺とエイシアスを呼び止める。
「ま、待つのだ!」
「……まだ何か用があるのか?」
不機嫌そうに振り返ると、騎士が「いや、そうじゃくなくて……」と弱気になっている。
王族を躊躇うことなく殺すのだ。腰が引けてしまうのも無理はないだろう。
「王子を殺した罪は大きい。理解しているのか?」
「王子も人間だ。いずれは死ぬ。それが今だっただけだろ」
「――なっ⁉」
人間いずれは死ぬのだ。
遅いか早いかの違いでしかない。あの残念王子はそれが今だっただけの話し。
「それにな。忠告をしたにもかかわらず、二度も喧嘩を売ってきたのはあの王子だ。違うか? 違くないよな? 合っているよな?」
「そ、その……」
「合ってるだろうが! 殺すぞ!」
「は、はい! その通りです!」
何度もコクコクと頷く騎士たち。
素直なやつは大好きだ。
「それで、俺を呼び止めた理由は?」
「レオナード王子が亡くなったので、一度王城に顔を出して説明していただけないかと……」
説明したところで俺とエイシアスは問答無用で牢獄行きだろう。
しかし、権力者などに俺が屈するわけがない。
「王都に行ってみたかったし別に構わないが、国王だろうが喧嘩を売ってきたら殺すからな?」
「そ、それは勘弁してください」
「はぁ、わかってないな。お前らは騎士のくせして自国の王子すら守れていないんだぞ? おめおめと帰ったところで死刑か投獄だろうに。それがわかっていても帰るつもりか?」
この騎士たちに未来はない。
戻ったところで肩身が狭い思いをするだけだろう。
それを正直に伝えたのだが、騎士たちの対応は変わらなかった。
「それでも職務を全うするのみです」
「はぁ、死にたくないからと王子を見殺しにしたのに、崇高なことで」
「それを言われては返す言葉もありません。それで、ご同行してくださるということでよろしいですね?」
「ああ。それとちょっと冒険者ギルドに寄ってく。手紙だけでも書いておく」
「わかりました。ご同行します」
騎士たちを連れて俺は冒険者ギルドに向かった。
そこで手紙を書いてレグムント王国の王家に渡すように依頼する。
「あの、王家となるとそれ相応の身分などがないと渡せませんが……」
「これでいいか?」
俺は貰っていた短剣を受付嬢にみせる。
そこには王家の家紋が彫られていた。つまりは王家が身分を保障しているという証拠である。
騎士たちも驚いている。
「テオ殿はレグムントの王家と繋がりが?」
「まあ、2ヵ月ほど世話になったくらいだ。王子に手紙を渡すのも頼まれていたし」
「なるほど。もしかして手紙というのは……」
「察している通り、婚約に関する手紙だよ。王家の連名で「断る」という手紙だ」
「やっぱりですか」
この婚約の話しは有名のようだ。
まあ、どうでもいいけど。
「で、依頼は受けてくれるか?」
「はい。身分の確認ができました」
その後手続きを済ませてギルドを後にした。
騎士たちに同行して船に乗る。
「こちらで運河を進み王都へと向かいます」
「そうか。部屋でゆっくりしてる」
そう言って俺とエイシアスは用意された部屋でのんびりすることに。
「主よ、いいのか?」
「何がだ?」
「分かっているだろう? 碌なことにならないと」
「当然だ。でも、楽しそうだろう?」
その言葉にエイシアスは驚いたのか目を見開き、次の瞬間には笑い出した。
「ふははっ、やっぱり主はこうでなくては。楽しみが増えた」
「この世界を遊び尽くすと決めているからな」
「存分に遊び尽くそうではないか。して、あの騎士たちはどうするのだ?」
このまま帰れば碌なことにはならないのは明白だ。
守ってやる義理はない。しかし、こうも丁寧な対応をされては恩くらい返さないと。
「俺のせいで死ぬようなことがあれば、レグムントで暮らすように言うさ」
「なるほど。それなら悪いようにはされないか」
俺とエイシアスのどちらかが頼めば無下にはされないと分かっている。
エルセリオスたちは馬鹿ではない。
俺とエイシアスを敵に回した際の自国の損失は分かっているはずだ。
「まあ、あとは流れに身を任せるとしよう」
「うむ」
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