15話:紛らわしいわ!
俺とエイシアスはエヴァレット公爵邸に到着した。
御者の人が馬車の扉を開けてくれたので降りると、大きな屋敷が目の前に飛び込んできた。
「屋敷というより宮殿みたいな大きさだ」
「悪くない見栄えだ」
「だな」
屋敷の感想を言い合っていると、リディアが出迎えてくれた。
側には使用人が数人と護衛の騎士が立っている。
「テオ様、エイシアス様。本日はご足労いただきありがとうございます。父も待っておりますのでこちらへどうぞ」
リディアに先導されて屋敷内に足を踏み入れる。
中は豪華というよりシンプルで、それでいて派手さがない。
もっとこう、豪華絢爛な内装をイメージしていた。
「調度品などは置いていません。使用人が壊したりしたら危ないので」
俺の内情を読まれたリディアの回答に、「それもそうか」と返事するので精一杯だった。
エイシアスも貴族が暮らす家を見るのは初めてなのか、落ち着きながら観察していた。
どうせ魔法とかで内装を弄るつもりだ。
「こちらで父がお待ちです」
リディアが扉を三回ノックする。
「リディアです。テオ様とエイシアス様がご到着しました」
「入りたまえ」
まだ若そうな声が聞こえ、リディアが「失礼します」と扉を開け、俺たちを中に招き入れる。
部屋に入ると、客間なのだろう。対面するように一人用ソファーが四つと、中央の高そうな木製のテーブルが置かれていた。
ソファーに座っていた金髪碧眼の30代半ばほどの優しそうな男性が立ち上がる。
「やあ、わざわざすまないね。私はレグルト・エヴァレット。リディアの父だ。この度は私の娘を助けてくれてありがとう」
頭を下げるレグルトだが、あんたは貴族だろ。それも公爵位というかなり格の高い人だ。
その当主が平民である俺に頭を下げるのは意外だ。
思わず目を見開いて驚いた。
もっとこう、高圧的な感じで「感謝してやる。有難く思え」と言われるかと思っていた。
「頭を上げてくれ。助けたのはたまたまだ。感謝こそされど、頭を下げる必要はない」
「そうか。座ってくれ。それと、二人に茶を」
メイドは部屋を出て行き、俺たちは促されるままソファーに腰を下ろす。
エイシアスが「これは中々にいいな」と呟いていたがスルーだ。
「聞いていた話とはずいぶんと違うようだ」
「聞いていた?」
恐らくリディアから聞いたのだろう。
あまり態度はよろしくなかったからな。でも貴族だろうと王族だろうと態度を変えるつもりはないが。
この世界は力ある者が絶対なのだから。
「悪く言ってしまえば傲慢だと」
「間違ってないからいいんじゃないか?」
「ははっ、実に面白い。それにレベルが9999もあると」
「事実だ。俺もエイシアスもレベルは9999だ」
するとレグルトの視線がエイシアスに向けられる。
その美貌に見惚れているのだろうか?
「貴女のような人がいれば噂くらいにはなると思っていたが……」
「生憎私も主も森育ちでね。人間社会には疎いし、関りもほとんどなかったんだ」
「そうか。森というと『魔の森』か?」
俺は頷くことで肯定する。
この辺りもリディアから聞いているのだろう。
「あの森で生き抜いていたのか……」
その森の支配者ですとは口が裂けても言えない。
いや、嘘だけど。
すると扉がノックされてお茶が運ばれてきた。
どうやら紅茶のようだ。久しぶりに飲むが美味い。
良い茶葉使っているねぇ……
「で、俺たちに何の用だ?」
「そうだった。リディアを助けてくれたお礼として何か困っていることはないかな? 私で良ければ力になるよ。別にモノでも構わない。私にできる範囲でなら何でも言ってくれ」
ふむ……そう言われてもすぐには思いつかない。
それに困っていることもない。
大抵のことは暴力と脅迫で何とかなるのだから。
「特にないかな。強いて言えば金くらいか? エイシアスに頼りきりってのも悪いからな」
「何を言っている。私含めてすべては主のモノだよ?」
「俺はヒモかよ……」
「それも面白い。私が養ってあげようか?」
「遠慮しとく」
「残念だよ」
まったく残念そうにしてないじゃん。
「ははっ、そうか。では謝礼金を用意しておこう。他にはないかな?」
「ないな。大抵は自力で解決できるから」
「とはいっても権力者から狙われたら面倒くさい。後ろ盾もないとかなりね」
貴族は言うことが違う。
だが、俺とエイシアスには関係ない。
「後ろ盾が必要だって? 俺には、俺とエイシアスには力がある。それも圧倒的な力がね」
「暴力では解決できないこともある。そのようなことをすれば肩身の狭い思いをする」
良い人なのだろう。
だが、そんな思想では生きていけないのだ。
「勘違いしているな」
「勘違い?」
俺は思わず笑ってしまう。
突然笑ったことに誰もが俺を見る。ただエイシアスは面白そうにしている。
「ああ。自由ってのは、力で手に入れるものだ。俺の自由を邪魔するってなら、誰が相手だろうと遠慮しない」
レグルトは「そうか。それもまた、人生ってやつなのかな」と呟いていた。
思ったより冷静な人だ。
怒ると思ったが、俺を敵に回したくないだけだろうか?
そんなことを思っていると、リディアが口を開いた。
「父上。パーティーの件は?」
「そうだった」
俺は首を傾げる。
パーティー? 一緒に冒険する仲間のパーティーって意味で合ってる?
「明後日、王城で陛下主催のパーティーが開催されるんだ。昨日陛下に君たちのことを話してね。そしたら是非呼んでくれと。話をしてみたいそうだ」
うっそだろ、おい。そっちのパーティーかよ……
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