13話:誘惑に負ける
イケメン君は脱兎の如くギルドから出て行ってしまった。
ギルド内は静かで、俺たちは完全に危険人物扱いされていたが、これならちょっかいをかけられなくていいね。
「あ、あの……こちらで依頼は達成になります。それと、先の盗賊の賞金もありますが……」
受付嬢が完全にビビっている。
申し訳ないね。でも、悪いのは俺たちじゃないから。
「200万ゴールドだっけ?」
「はい。ギルドに口座を作れますがどうしますか?」
俺にはアイテムボックスのような便利な魔法はない。
そもそも魔法使えないからね。エイシアスはアイテムボックスみたいのは使えるようだけど。
あのジジイ、俺にも転生特典で寄こせよ……
「10万は現金で、のこりは口座に入れてくれ。それと、どこのギルドでも下ろせる?」
「はい。どこのギルドでも下ろせますよ。他国でも可能です」
「ありがとう。ちなみに資格を剥奪された場合はどうなる?」
「持ち主に返されますが、違反なども考慮した金額をギルドが没収します」
「わかった。ありがとう。それとおすすめの宿はあるかな?」
「宿ですか、そうですね……あっ、それなら私の友人の宿で『わかば』という宿がありますよ。防犯や清潔さもあるのでおすすめですよ」
俺は場所を聞いたあと、受付嬢にお礼を言ってギルドを後にした。
歩いて少し、すぐに目的の宿が見つかったので中に入る。
すると活発な20代前半の女性が話しかけてきた。
「いらっしゃい。二名様?」
「二人でとりあえず一週間」
ギルドの受付嬢に紹介されたことを話すと喜んでいた。
一週間分の宿代を払い部屋に通された。
「私はエリンね。宿の説明をするね。朝食は無料ですが、夕食は300ゴールドでお出しできます。時間は――」
俺とエイシアスは宿での食事について説明された。
他にもちょっとした説明などを受けて出て行こうとしたので、待ったをかけた。
「どうしました?」
「王都でおすすめの料理とかはあるか?」
「おすすめですか……でしたら鶏肉を使った料理が多いので是非食べてみてください!」
「ありがとう」
そして部屋には俺とエイシアスが残った。
ランク的には上から二番目くらいの部屋なので、そこそこ広い作りになっている。
「狭いな」
「広いだろ。城と一緒にするな」
「ここから見えるあの城だって私の作った城に比べれば小さいし、簡素な造りだぞ?」
「全部魔法で作った城と、人が一から作った城を比べるな。失礼だろ。人間様に謝れ」
軽口を言い合っているが、すぐにお腹が鳴る。
時間帯的には昼時。この世界には昼にご飯を食べるという文化はないが、日本人な俺にはどうしても我慢が出来ない。
そもそも、三食食べなければカロリーが足りないのだ。
「飯でも食いに行くか」
「いいね。鶏肉でも食べるのかい?」
「おすすめされたんだ。食べなきゃ損だろ?」
「そういうものか」
俺とエイシアスは鶏料理を食べに王都の街へと繰り出した。
出店などを回って色々と食べて宿に戻ると、エリンが待っていた。
「あ、テオさんとエイシアスさん。さっきエヴァレット公爵家の使いの騎士がお手紙を持ってきましたよ?」
そういって俺は手紙を受け取る。
「ありがとう」
「あの、もしかして貴族様とか?」
「違うよ。俺の格好をみてみろよ。貴族がするような恰好か?」
俺の服装はシンプルな服装に外套を着た、どこにでもいる冒険者の格好だ。
断じて貴族と思われるような服装ではない。
「いえ。公爵様からお手紙をもらうってことは、高名な方なのかと……すみません」
「気にしなくていい。手紙ありがとう。部屋に戻るよ」
部屋に戻った俺は椅子に腰を下ろし、開封して手紙の内容を確認する。
俺の膝に座り寄りかかるエイシアスも手紙を読んでいた。
読み終わり、俺はため息を吐いた。
「面倒くせぇ……」
「同感だ。無視するか?」
「いや。面白そうだから行くか」
俺の言葉にエイシアスがふふっと笑った。どうあらエイシアスも楽しみのようだ。
それと手紙の差出人は公爵本人だった。
内容は、娘を助けてくれたお礼が書いてあり、是非直接お礼をしたいから明日屋敷に来てほしいとのことだった。
案内の騎士を宿に寄こすから、一緒に来てほしいと。
どうして俺がこの宿に泊まっているのを知っているのかと疑問が生じる。
しかしその答えはすぐに出てきた。
俺がここに泊まっているのを知っているのは冒険者ギルドの受付嬢しか存在しない。
「んじゃ、今日は部屋でのんびりするか」
「そうかそうか」
エイシアスが俺の頬を撫で、耳元に顔を近付けて囁く。
「主、久しぶりにどうだ?」
俺はエイシアスの誘惑に負けてしまうのだった。
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