2024年 ~初詣~
-正月-
「明けましておめでとうございます。 今年もよろしくね」
「明けましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします」
新年早々、武蔵新城駅から徒歩5分程度の場所にある新城神社に晞咲さんとゆいちゃんの姿があった。
どうやら初詣に来ているようだった。
「正月くらいゆっくりしたいのにぃ~。 何でいきなり呼び出されるのですか~?」
「何言っているの。 昨年は里の湯が無くなって色々大変なことになって、また心機一転頑張っていかないといけないんだからちゃんと一年間上手く行くようにお参りするのよ」
「律儀ですねぇ~。 そう言えば新城にやって来てそこそこの年数が経ちましたがこの神社は初めて来ました」
「…… あなた昨年とかそれより前はどうしていたの?」
「気が向いた時だけ初詣とかは行っていました! 移目治神宮とか椛倉の八幡宮とか! 昨年は行った記憶がありませんね」
「ミーハー極まりね、せめて川崎大師くらいは行きなさいよ…… そんなんだから里の湯無くなったんじゃないの……?」
「フンガッー!! それは関係ありません! お店の繁盛を祈願するのは番台の役目です!」
そんなこんなで戯れつつお賽銭を投げ込んで祈願をする。
チャリーン パンパン
「(今年は良い人が見つかりますように)」
「晞咲さんを出し抜いて一躍有名なご当地アイドルになれますように」
「ちょっと、全部聞こえてるわよ……」
「日本の銭湯アイドルになるのはこの私だけでありますように」
「ずいぶんな言い様ねぇ!」
「お祈りしているのですから静かにしてください。 神様に失礼ですよ」
「えぇ、たまにしか初詣していないような信仰具合なのに真顔でそこまで言えるの……」
何故か逆に怒られることに納得がいかない晞咲さんであるが、後ろに人がだいぶ並んでいたので一先ず横にずれるのであった。
不満げな表情の晞咲さんにゆいちゃんがお願い事を聞いてみると。
「晞咲さんは何をお願いしたのですか?」
「あなたには関係ないことよ」
「まさか良い人が見つかりますように、とかド定番ネタではないでしょうね?」
「…… うっ、うるさいわよだからあなたには関係ないわ!」
「…… 良い人が見つかると良いですね」
「やかましいわよ!」
「それはそうとして晞咲さん」
「なっ、何よ急に改まって……」
「私たちは銭湯を少しでも世に広めるべく活動していたアイドル見習いユニットだったはずです」
「いえ、全く身に覚えのない話ね」
「しかし昨年夢半ばで拠点であった里の湯は廃業してしまいました」
「そうね、でも正直私は2、3週間くらいしかいなかったからさほど印象が無いわね」
「私たちはこれからフリーの立場でより厳しい環境に身を置くことになります」
「あなたはまだしも一応私は企業の所属よ」
「それなのにも関わらず余裕をかまして理想の結婚相手が見つかりますようになどとお願いするとは一体どういうことでしょうか!?」
「ツッコミどころしかない上に、あなた銭湯を普及させるためじゃなく自身の承認欲求を満たしたいような物言いでお願いしていたわね、さっき」
「本当にやる気があるのですか!?」
「その言葉そっくりそのままお返しするわ」
里の湯という基盤を失った今、ゆいちゃんと晞咲さんは銭湯の普及活動についてはより苦境に立たされている。
何としても今年1年は気合いを入れて新たに活動の手段と方法を確立しないといけない状況であるのだが……
「まったく、そんな調子で本当にご当地アイドルとかなるつもりなの?」
「当たり前じゃないですか! 逆に晞咲さんは全く以てやる気を感じられませんね!? 本当にアイドルになる気があるのですか!?」
「いえ、まったく」
ガビーン
「古いわね」
「どういうことですか!! 里の湯から銭湯を少しでも多くの人に広めたいというコンセプトを基に我々が存在するのですよ!?」
「全部初耳なんだけど…… まぁ確かに銭湯が健在だった頃だと考えると存在意義としてはそれっぽいわね。 でもあなたとユニットを組んだ覚えは無いわ」
「酷い、これまで信頼できるパートナーだと信じていたのに」
「さっきお参りした時の内容もう一度口に出してお願いしてみなさい。 矛盾していることがよくわかるわよ」
アイドルではなくお笑いコンビとでもいうような掛け合いを見せつける2人。
銭湯を普及させるということで役に立てるのかは全くわからないところだが、新年も明るく元気にスタートを切れたようだった。
「とりあえず今年は昨年以上に頑張ってもらいましょう」
「そうね、Xにラノベ投稿、それ以外にも出来ることは多分あるでしょうし色々やって行けたら良いわね」
「 「 キャラ担当さんが 」 」
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