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晞咲さんの転職騒動!?

 -12月某日-


 「いやぁ今年もあっという間でしたね。 まぁ波乱万丈過ぎて余計に早く感じているのでしょうけど」


 「本当よまったく、結局副業見つからないままだったし。 まぁそれはもう良いけど」


 「そう言えば晞咲さんは副業で里の湯に取り付いていたのでしたね」


 「ちょっと何よ取り付くって、悪い虫みたいに言わないで貰えるかしら!?」


 元々晞咲さんは里の湯で土日祝日限定の副業という体で働いていたのであった。


 ただものの数週間で里の湯の設備に不具合が生じ、営業できなくなったので大して働いていなかった。


 「ちなみにあれから他の副業は見つかったのでしょうか?」


 「いいえ、結局あなたのインターンの為に色々やっていたり部署異動があったりで何もしていないわ」


 「そうだったのですね、じゃあもうすぐ年末年始でお休みになりますし改めて副業を探しましょうか!」


 「もう別に良いわよ。 営業になって成績上がったからお給料も上がったし。 副業する理由が無くなったわ」


 「えっ、そんなぁ!? 時代は副業ですよ!? そこで一発当てて脱サラ! この波に乗らなくてどうするのですか!」


 「何、あなたそんなに私を追い出したいのかしら……?」


 「べっ、別にそういうわけでは無いですよ~ また部署異動で経理に戻ったら相変わらずの計算能力で減給の可能性もありますし、そうなった場合に備えて、ね?」


 「やかましいわよ!」


 そんなこんなで今日も平和なのでした。


 -夜・晞咲宅-


 「まったくもう、あの子ったらことあることに私をのけ者にしようと、あら……」


 郵便物を整理していると中に一通の手紙が入っていた。


 「誰からかしら……? 『特別オファー』?」


 ペラッ


 【サクッと稼げる、簡単なお使いで一回5万円!! 平均年収3000万越え!!】


 -翌日-


 「私転職しようと思うの」


 「!? どうしたのですか晞咲さん!? 副業じゃなくて転職ですか!?」


 「ええ。 昨日家に私宛の特別オファーのDMが届いていてね。 何でも稼ぎが今の6倍程度になりそうなの」


 始業早々晞咲さんにいきなり告げられ、ゆいちゃんは仰天の一方であった。


 「6倍…… また物凄いオファーですね」


 「私は次のステップに向けて羽ばたくわ。 あなたもうるさいのがいなくなって清々するでしょう?」


 「えぇいやぁ、それは……」


 流石に何とも言い難いような顔をせざるを得ず、深堀りしてみようとする。


 「ちなみにどの様なお仕事なのでしょうか……?」


 「簡単なお使いとしか書かれていなかったわ。 何をやるかはまだよくわかっていないわね」


 「…… よろしければそのDMとやらを見せて貰えませんか?」


 「フフッ、良いわよ? 持って帰らないでちょうだいね」


 ペラッ


 「………… お名前、住所、携帯番号を記載の上、顔写真がある身分証明書のコピーをこちらに郵送、って晞咲さん! これどう見てもヤバいやつじゃないですか!?」


 「何言ってるのよ? 嫉妬は止めて貰えるかしら?」


 「ダメですこれ絶対ダメな奴ですって!!」


 晞咲さんの両肩を掴んで思いっきり揺らしていた。


 「流石に見過ごせません! 冷静になってよく考えてください!! 取返しが付かないことになりますよ本当に!!!」


 「(フフッ、この子ったらここまで必死になって食い止めようとするなんて)」


 「こんな形で不祥事に発展されたら番台に合わす顔がありません! 何が何でも止めますよ!!」


 ブンブン


 白目の面積が圧倒的にでかくなる程の形相で必死に止めようとするゆいちゃん。


 「(何だかんだ言って私がいなくなるのが寂しいんじゃないの)」


 「ちょっと聞いているのですか!? 晞咲さん! 本当に洒落にならないですって!!」


 「(まぁここまで必死に食い止めようとしてくれるのに無理やり振り切るのもかわいそうね。 オファーの金額も魅力的だけど)」


 「何清々しい顔しているのですか!? 晞咲ざん! 晞咲ざんでっばあ!!!」


 「もう、うるさいわよ。 仕方ないわねぇ、そこまで言うなら今月のあなたの売上達成額が先月の倍以上になったら考えてあげるわ。 途中であなたの面倒を放り投げるのもよーく考えたら後味悪そうだし」


 「言いましたね!? わかりました! それで引き留められるのであれば死力を尽くします!!」


 「そうね、頑張りなさい」


 -夜・晞咲宅-


 「まさかあそこまでの勢いで止められるとは思っていなかったわ。 何なら喜ばれて送り出されるかと思っていたし。 可愛げがあるじゃない」


 先程の出来事でゆいちゃんの想定外の反応を受けて上機嫌で帰宅し、ソファーに体を委ねつつスマホを弄っていた。


 「さぁーて、ウジシマくんの動画更新されているかしら…… あら、このニュース動画……」


 【詐欺集団勧誘手口 DMで若年層に高収入を謳い、受け子として利用 トカゲの尻尾切りの実態】


 偶然おすすめ動画一覧に気になるサムネイルがあったのでタップしてしまった。


 スッ


 『最近流行っている詐欺集団の手口について解説します。 若年層、社会人2~5年目の人たちにあえてメールではなくDMで高収入、だいたい3~4千万円が稼げるという文句であたかも転職のオファーのように見せかけて個人情報を送らせ、その後集めた個人情報を脅迫材料にして詐欺の受け子をやらせるという手法です』


 「……」


 『その後受け子には報酬としてもののわずかな金額を渡し、大半を元締めが占領するという図式です。 仮に受け子が逮捕されてもそのまま切り捨てていくという……』


 「これ…… いやそんなはずないわ……」


 急に不安が生まれ、DMの中身をまた確認する。


 ペラッ


 「お名前、住所、携帯番号を記載の上、顔写真がある身分証明書のコピーをこちらに郵送、ってまんまじゃないの!? 嘘ぉーーーーー、これダメじゃないの!?」


 刹那、昼間の出来事が脳内を過る。


 『ダメですこれ絶対ダメな奴ですって!!』


 「だからあの子あんな形相で止めようとしたのね…… うぅ……」


 自分の間抜けさにただただ恥じるのであった。


 「明日謝らないと……」


 -翌朝-


 ざわざわ


 「(何か課がざわついているわね。 どうしたのかしら?)」


 出社早々、困惑している晞咲さんのところに課長がやって来た。


 「おっ、晞咲くん、先程さとのくんから全日本銭湯協会と向こう40年の全国広告出展契約を結んでもらったという報告が来て大騒ぎだよ!!」


 「えぇ!!??」


 「いやぁインターン生なのに我が社の歴代でナンバー1の売上と契約年数を取ってくるとは! 是非このまま正社員としての登用、いや入社のお願いもしないといけないね、ガハハハッ」


 「ハハッ、そう、ですね……」


 何やら昨日の今日でゆいちゃんがとてつもない受注をしてきたらしく、社内は朝一からその話題で持ち切りになっていた。


 「あっ、晞咲さん!!!」


 テテテ


 社内で時の人となったゆいちゃんが晞咲さんを見つけるなり駆け寄ってきた。


 「既に聞かれているかもしれませんが向こう40年の大型契約を取って来ました! 先月の数百倍の売上です!!」


 「あぁ、うん、聞いたわ…… 凄いわね……」


 「これで昨日仰っていたことは取りやめてくれますよね! ねっ!! ねぇ!!!」


 「えぇ、あっ、うん、そうね、約束だから守らないとね…… よく頑張りました」


 ナデナデ


 「よし、やりました!!!」


 「(完全に勘違いを謝るタイミングを見失ってしまったわ…… まぁなんか凄い売上出してくれたみたいだし結果オーライだから良いか)」


 ゆいちゃんの頭を撫でながら冷汗を掻く晞咲さんだったのでした。


 「ちなみに晞咲くん、君も今まで以上に頑張らないとさとのくんに係長の座を取られてしまうぞ?」


 「えっ!? そんなぁ!!」

X:https://twitter.com/satono_yu


@satono_yu フォローよろしくお願いいたします!


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