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虎子ちゃんの営業活動

 「おっ、久しぶりやなゆいちゃん!!!」


 「あれ、虎子ちゃんじゃないですか~ お久しぶりです」


 ゆいちゃんが道端を歩いていると大学時代の同期だった虎子ちゃんに偶然出会った。


 大学を卒業してゆいちゃんは院に進学、虎子ちゃんは就職していたので全く会っていなかったのだ。


 「こんな所で何しとんねん」


 「今インターンしているので外回りの営業をしていました。 この後はもう家に帰ります」


 「そうなんか、せっかくやしこの後喫茶店にでも行かへんか? 今年は猛虎ティガースがリーグ優勝から日本一になったんで記念に奢ったるで!」


 「本当ですか!? じゃあ行きましょう!」


 こうして虎子ちゃんに誘われインターン終わりに喫茶店に足を運ぶのであった。


 -20分後-


 「ちょっと待ってください虎子ちゃん!」


 「なんやねん急に」


 「これどう見ても保険勧誘のセールスじゃないですか!」


 「せやで、だから卒業前に言うたやんブラジル生命に就職するって」


 コーヒーとパフェを傍らに保険の勧誘を受けていた。


 外資系企業のブラジル生命に就職した虎子ちゃんはさっそく学生時代の友達や親戚一同を勧誘していたらしい。


 「もうゾニー生命の長田さんに色々して貰っていたので良いやと思ったのですが、よくよく考えたら結局何も加入していなかったですね」


 「何やて!? ゆいちゃん知り合いにゾニー生命の人おるんか!?」


 「えぇ、元々銭湯で金融周りを任されていた人なのですが、ゾニー生命に転職されて色々勧誘されていました」


 「それはアカン! 取られ、ゆいちゃんが変な保険に加入させられる前に私が助けたるで!」


 「今薄っすら『取られる』というワードが聞こえましたが……」


 「さて、ここでゆいちゃんにおすすめしたいのはティガースが18年ぶりのリーグ優勝をし更には38年ぶりの日本一になったことを受けて開発された癌プラン虎デラックス!」


 「こじつけが過ぎませんかね……」


 -30分後-


 「まぁ虎子ちゃんも大変なのですね」


 「そうなんよ…… 新人研修は2カ月間山籠もりで終わったかと思えばいきなり配属され月1千万円のノルマ、もう無理やねん!! ゔわーん!!」


 気が付けばいつの間にか虎子ちゃんを励ます会に変貌を遂げていた。


 「もう無理やねん、両親従妹その親親戚一同に頭下げ回って何とか凌いできたけどもう皆入って貰ったからどうしようもないねん!」


 「会社名と何となくのイメージで入る業界ではありませんね…… まぁとにかく虎子ちゃん、ここは小洒落た喫茶店なのでそろそろ出ましょう。 流石に内容が居酒屋トークになっています」


 「何やゆいちゃんもう帰ろう言うんかぁぁぁ、薄情者ぉぉぉ!」


 「アルコールが入っている物が無いのに何故酔っ払っているのですかね……」


 カランカラン


 「ありがとうございましたー」


 喫茶店を後にした2人だが、ゆいちゃんが解放される気配は無く引き続きどこかのお店に向かっているようだ。


 「ほら、虎子ちゃんなんか良さそうなお店がありましたよ。 ここに入りましょう」


 「鶏ガラ貴族やんか! ワシは八本木のバーの常連やねん! 連れてかんかぁ!」


 「うわぁ面倒ですねぇ…… どうしましょうか……」


 「あら、ゆいちゃんじゃない」


 「あっ、晞咲さん」


 虎子ちゃんの処遇に困っていた所に晞咲さんが現れた。


 「あなた今日の外回りはもう終わったんでしょ? こんな所で何してんの?」


 「大学の同期の子と喫茶店でお茶をしていたのですが酔っ払ってしまいまして……」


 「何で喫茶店で酔っ払うのよ…… リキュールが入ったお菓子でも食べたの?」


 「ゆいちゃん、この人わぁ……?」


 「インターン先の面倒見係りの晞咲さんと言います」


 「面倒見係って…… はじめまして、晞咲心澄です」


 「ヒック、お姉さん保険わぁ……?」


 「えっ、保険? 生命保険かしら? いや特には入ってないわよ」


 シュタッ


 「お姉様、初めまして、私ブラジル生命の営業部、縦島虎子と申します。 保険のおすすめをしておりまして、お姉様、宜しければ15分ちょっとお時間を頂けないでしょうか?」


 「まぁ、お姉様って、もう」


 「うわぁ、虎子ちゃん元に戻った! あと晞咲さんチョロ!」


 「こちら私の名刺になります」


 「あら、わざわざありがとう。 ごめんなさい今私の名刺は切らしていて……」


 「いえ、お気になさらず。 こんな所ではなんなのであそこにあるレストラン、ロイヤルクラブに行きましょう」


 「ええ、良いわよ♪」


 「えぇ…… 虎子ちゃん私は……」


 「ゆいちゃん付き合わせてしもうた悪かったな、もう大丈夫やで!」


 「あっ、はいそうですか。 頑張ってください……」


 「ほなお姉様、行きましょか!」


 「虎子ちゃん、逞しく生きるのですよ~」


 こうして晞咲さんと虎子ちゃんを見送るのでした。


 -翌日-


 「ゆいちゃんおはよう」


 「あっ、晞咲さんおはようございます」


 「昨日会った虎子ちゃんとてもいい子ね♪ 色々親身になってアドバイスをしてくれて大変助かったわ」


 「それは良かったじゃないですか。 結局何か保険に加入したのですか?」


 「ええ。 最近出来たという猛虎ティガースが18年ぶりのリーグ優勝をし更には38年ぶりの日本一になったことを受けて開発された癌プラン虎デラックスというプランに加入したわ」


 「……」


 「何でも癌以外の病気にも色々融通が利いて、特に猛虎ティガース関連で生じたあらゆるトラブルに対応してくれるらしいわ」


 「晞咲さん猛虎ファンなのですか……?」


 「いいえ、野球はよくわからないけど何か幅広くカバーしてくれてそうで良さそうじゃない」


 「えぇ……」


 そんなこんなで晞咲さんのおかげで虎子ちゃんのノルマが若干救われたのでした。

Twitter:https://twitter.com/satono_yu


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