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インティ・ショーンツ / たい焼きオブデスティニー

 -ニコニコ玉川-


 「今日はインターンもお休みなので映画を観ましょうか! かの名作の最新作、そしてシリーズ完結編の【インティ・ショーンツ/たい焼きオブデスティニー】を観ますよ!」


 不朽の名作『インティ・ショーンツ』シリーズ、第1作目の『誰イダース 失ったワーク』のリバイバル上映に行くほどゆいちゃんの好きな映画シリーズ作品である。


 今回最新作が公開されたので劇場に足を運んでいた。


 「4DXの日本語吹き替え版で観ますよ! どのような感じになるのか楽しみです!」


 4DXとは映画の場面に合わせて座席が揺れたりミストが噴出されたり匂いが発生する特殊仕様のスクリーンである。


 通常の鑑賞料金より高くなるが、シリーズ完結編ということもあり奮発したようだ。


 「座席の揺れが気になるところですが上映時間長めなのでポップコーンとコーラを買いましょう。 ぬぬっ、特製ハットカバー付きドリンクセットなるものがありますね…… お値段2,200円…… 買いましょう!!」


 お祭りなどで財布の紐が緩むのと同じ原理で、金銭感覚がガバガバになっているのであった。


 『14:50上映の3番スクリーン、【インティ・ショーンツ/たい焼きオブデスティニー】日本語吹き替え版の入場を開始します』


 「来ました! 開場です! 早速突撃しますよ~」


 一番乗りでスクリーンに辿り着いたゆいちゃん、早速着席しポップコーンを口に放り込むのであった。


 ……


 『ノーモア! 映画泥棒』


 「(とうとうここまで来ましたね! 後はいよいよ本編を残すだけ!)」


 暗かった館内がより一層暗くなった。


 デデーン! ズドーン!!


 ガタガタガタ


 「(ズデニーのツンデレラ城がミサイルで破壊されてそのまま本編に出てきた爆破シーンとオーバーラップしました! 開始早々座席の揺れがががががが)」


 開始から5秒で放り出されそうな強さで座席が揺れるのであった。


 「(あばばばばばばば)」


 ドサッ


 『お前か、もちもちたい焼き開発のスパイは。 何が目的だ? お前一人か?』


 『一人が好きなんでね。 ここは世界中の(鯛の金型)の山だ』


 『(金型)は勝者の物だよ』


 『勝者? ハッ、本店は潰れ跡地はたこ焼き屋、オーナーは雲隠れで残された店舗は今川焼きに転換、敗者だろ!?』


 『連れていけ』


 『おい! 待てよ!』


 「(おおっ! 凄い、若き日のパソコン・ボードをCGで違和感なく再現しています!)」


 『マッチャ! ここで何をしている!?』


 「(まるで3作目の【サイゴンの宣伝】直後の続きを観ているような感じがします……!)」


 『インティ~~~!!!』


 -2時間後-


 「うぅ、涙が止まりません! シリーズの完結編として大満足でした!」


 上映が終わりまたもや大号泣している。


 「あんなにカッコ良かった”インティ”も年齢には抗えず、そして前作【クリスマスグリルの広告】でせっかく家族団らんのハッピーエンドになったと思いきやまさかのその後…… 決して上手く行かないながらもめげずに動き出そうとする姿勢に感銘を受けました!!!」


 いたく感動している様子である。


 それもそのはず、ゆいちゃんが生まれる前から存在している映画だが、小さい時にテレビのロードショーで放送見て以来のファンであり、小学校低学年の時に周りが魔法少女「プリクラ」シリーズの映画の話題で盛り上がる中、一人当時の最新作であった【インティ・ショーンツ/クリスマスグリルの広告】に熱中していた程であった。


 「シリーズであまり触れられなかった2作目【魔球の伝説】のチャンピオンリングネタも出てきましたし、最後”タラー”が孫たちに話していたのは【誰イダース】のブラック企業から逃げ出すシーンの事でした! まさにシリーズの集大成とも呼べる出来です!!!」


 手提げ袋には先程買ったハットカバー付きのドリンクカップにパンフレット、そして映画館の売店で売られていたクリアファイルや肩掛けサコッシュなどのグッズが詰め込まれていた。


 散財に次ぐ散財である。


 「4DXも最高でした。 カーチェイスのシーンなんかズデニーシーのアトラクションより揺れ激しくて冗談抜きで振り落とされそうになりましたよ! 周りからも失笑が漏れていましたし」


 しかし本人にとってはとても良い日になったようである。


 「この興奮を今すぐ番台にも伝えてあげたいですね! でももう銭湯も無いしなぁ……」


 「あれ、ゆいちゃんじゃない」


 「あっ、あなたは……!」


 「きゃっはろー」


 「相変わらず気持ち悪い挨拶ですねゾニー生命長田さん!」


 ゆいちゃんの目の前に現れたのはゾニー生命の長田であった。


 かつて里の湯の金融担当を務めており、転職で保険会社に営業として入った後、あの手この手でゆいちゃんを保険に加入させようとするも上手く行かず、そのまま部署移動で総務に行ってしまった経歴を持つ。


 「ところでゆいちゃんそのパンパンに膨れ上がった荷物は一体……?」


 「これは先程かの名作シリーズの最新作、【インティ・ショーンツ/たい焼きオブデスティニー】を観てきまして色々と買っちゃいました! 長田さんは当然もう観られましたよね?」


 「えっ!? いや観てないけど……」


 「フンガッー!!! どういうことですか!? 何で世代の長田さんが観ていないのですか!?」


 「いや俺世代じゃないし…… このシリーズの世代って俺らじゃなくて俺らの親世代だよ?」


 「インティは全年齢の人間が世代です! おじいちゃんおばあちゃんから赤ちゃんまで全員世代です!!」


 「えぇ……」


 滅茶苦茶な内容に困惑する長田であった。


 「そう言えば小学生の頃キャラ担当の水卜にも面白いからって無理矢理俺んちでDVD鑑賞会させられたなぁ、懐かしいや」


 「まぁ、そんなことがあったのですね! 水卜さんの教育が足りないからこんなことにっ……! 明日お説教ですね!」


 「えぇ……」


 やはり困惑せざるを得ない長田であった。


 「よし、わかりました、長田さん今から一緒にインティを観ましょう! まだ夕方の部があります」


 「いやさっき観たんでしょ!? 同じのもう1回観るの!?」


 「先程は吹き替え版を観たので今度は字幕版にします。 吹き替え版とは違いパソコン・ボードら役者さんたちの地声でももう1回観たいので!」


 「いや、ちょっと待って、俺この後彼女との予定が……」


 「問答無用です! 義務教育が終わっていなかったと思ってください!! さぁ行きますよ!!!」


 「そんなぁ……」


 こうしてゆいちゃんに連行され、後日長田は彼女に滅茶苦茶怒られ浮気を疑われたとかなんとか。

Twitter:https://twitter.com/satono_yu


@satono_yu フォローよろしくお願いいたします!


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