さとのゆいインターン伝説
-東京・八本木-
「皆さん初めまして、一部の方はご機嫌よう、今日からインターンさせて頂くことになりましたさとのゆいと申します。 精一杯頑張りますのでよろしくお願いします」
パチパチパチパチ
彼女の名前は里ノ唯、今日から都内のとある会社でインターンを始めることになった大学院生だ。
元々は神奈川県川崎市の銭湯【里の湯】でアルバイトをしていたのだが、銭湯が老朽化の関係で取り壊し、廃業したため、銭湯の仕事をしていたこの会社でインターン生として働くことになったのだ。
挨拶が終わった彼女のもとにもう一人女性が現れた。
「さて、早速今日からキリキリ働いてもらうわよ、覚悟しておきなさい」
彼女の名は晞咲心澄、この会社の正社員でほんの僅かの間だけ里の湯で副業として働いていたのだが、すぐさま取り壊しが決まってしまい今新たな副業を模索しているのだ。
「あっ、晞咲さん、騙しやがりましたね?」
「開口一番に何よいきなり!? 変なこと言わないでちょうだい!」
「だって、八本木って聞いてビルズを想像していたのにボロボロの雑居ビルじゃないですか」
「だからビルズじゃないって最初に否定したでしょ!?」
「でも八本木だったらそれに近しいものイメージするじゃないですか」
八本木の華やかなビル群の裏にひっそりと位置する雑居ビルの会社であった。
住所の名称とは裏腹にギャップが激しいのであった。
「別に良いでしょ!? それともビルズの中で1日20時間労働の時給換算すると悲惨な感じになる方が良かったのかしら!?」
「ビルズみたいな感じで定時帰り基本の残業代は100%支給、休憩室には無料の自販機とお菓子があってビュッフェスタイルの社員食堂がある感じを所望します」
「夢の中で頑張って入社しなさい」
そんなこんなでゆいちゃんのインターンがここから始まるのであった。
-30分後-
「さて、まずは簡単な雑用業務からして貰うわ」
「何言っているのですか? さとのゆい全国デビューアイドルプロジェクト化企画立案を最優先にしてください」
「恐らく向こう10年はそんな企画浮かび上がらないから安心しなさい」
「どういうことですか!? 10年も経ったら晞咲さんみたいにもうデビュー出来ない年齢になってしまうじゃないですか!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「あっ、すみません、流石に冗談が過ぎました……」
「じゃあまずこの見積書類を作って貰うわ。 見本を渡すから同じように作ってみなさい」
「わかりました。 ここの計算式はどのようになっているのですか」
「良い? ここに商品仕入れの金額と作業の費用表があるわ。 ここから必要な項目を抜き出して、更に仕入れの商品には70%の利益を乗っけるの。 仕入れ価格に対して諸々金額を上乗せして作業費用表の金額を足して記載するの」
早速書類作成に取り組もうとするのだが……
「あれ、晞咲さんこれ計算間違えていませんか……?」
「何言ってるの? そんなわけ…… あら、おかしいわね」
「あと下の項目の計算も間違えていますね。 それと合計金額も合いません。 エクセルの計算の指定範囲間違えているのではないですか」
「…………ちょっと待ってなさい。 えー、あれ、何でこんな間違えてるのぉ……これ先方に送っちゃったやつよぉ……(ボソッ」
カタカタカタカタ
「晞咲さんこれやっぱり見本の書類、計算ほぼ全部間違っていますよ! 良いのですかこれ!?」
「フッ、問題無いわ。 あなたがちゃんと間違いに気付くかどうか試していたのよ! ミスしたままお客様に書類送るなんてことになったらとんでもないんだから、これ位出来てもらわないと! ヤバいどうしよ……(ボソッ」
「…………」
「なっ、何よ!」
「いえ、ではこれ直しておきますね……」
「ええ、出来たら持って来てちょーだい!」
ジトー
半開きの目で見つめるゆいちゃん。
「……出来たら……持ってきてね!」
「わかりました」
「(あれぇ、何だか気持ち声が低いような……)」
カタカタカタカタ
…………
「はい、晞咲さん出来ましたよ。 これで全部合っているはずです」
「あっ、ありがとうね! うん、これで問題無いはずだわ、良く出来ました!」
「……」
「だっ、だから何よ! 誉めてるんだから喜びなさいよ!」
「えっ、あっはい、ありがとうございます」
バタン!
「ちょっと晞咲さん! 昨日お客さんに送って貰った見積書、間違いだらけじゃないの! お客さんからクレーム来てるよ!」
「あっ、課長、ふぇぇぇぇんごめんなさ~い」
「何か凄いデジャヴというか、何故か懐かしいですねこれ」
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