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謝罪の使い分け

作者: みももも

「すみません」

 おそらく、一番とっさに出てくる謝罪はこれだろう。

 なんかとりあえず謝っておこう。っていうときにも使えるし、謝罪以外のタイミングでも使える。

 店員さんに声をかけるときにも、道を譲ってほしいときにも。

 かなり『軽い言葉』ということは、みんな無意識に理解している。


 元々の意味は、どういうことだろうか。

 多分語源は「(事態が)済みません」「(心が)澄みません」とか、そのあたり?

 意味合いとしては、例えば謝罪のタイミングであれば

「(このままではいつまで経っても問題が)済みません(どうか区切りをつけてください)」だろうか。

「(あなたに許してもらえないと私の心が)澄みません(どうか許してください)」だろうか。

 いずれにせよ、その主語は『自分』にある。

 私が、〜〜だ。だからあなたは『許す』べきだ。と言っている。

 私は、この言葉で謝罪を受けるたびに思う。

 いや、許すかどうかは私が決めるから。迷惑をかけた側が、何を言っているんだろう、と。


 ◇


「ごめんなさい」

 小学生かな? と思った諸君。馬鹿にしないでほしい。

 もちろんこれは、言い方による。

 あほみたいな顔で「ごめーんなさーい」と間延びした感じで言われたら、私はそいつをぶん殴る。

 だけど「ごめんなさい、私のミスでした」だったら、私の答えは「いいよいいよ、気にしないで」となる。こともある。


 では、元々の意味は?

 感じにするとよくわかる。「御免なさい」ということだ。

 『免』というのは『免除(めんじょ)』とか『免許(めんきょ)』とかで使われる。

 『許す』とか『見逃す』とか、そういう意味がある。

 つまり「ごめんなさい」は言い換えると「お許しください」となる。

 相手に『許し』を強要している点は、「すみません」と同じだが「ごめんなさい」は変に言い訳をしていない。


 許しを請うと言うことは、自分の非を認めていると言うことでもある。

 自分が悪いと思っていない人は「まあ落ち着いて」の意味で「すいません」を使う。

 例えば道で、肩がぶつかったりしたときに。

「あ、ごめんなさい……」と言う人は、自分にも非があるとわかったうえで謝っている。

「あ、すいません……」と言う人は、自分の非を認めておらず、問題が起こるのを避けるために謝っている。

 どちらが良いとか悪いとか、そういうことを言いたいわけじゃないけれど。


 ◇


「申し訳ありません」

 ビジネス界ではこの言葉を使いましょうとされている。

 確かに、公式の謝罪会見の場で「ごめーんなさい」頭を下げている様子は、少し想像できない。

 それはそれで、シュールで面白いかもしれないが。

 正直、便利な言葉だと思う。

「申し訳ありませんでした」

 この言葉を使っておけば、すべてが丸く収まるような気もする。


 元々の意味は?

 深く考える必要も無い。「申し訳」というのは「言い訳」のことだ。

 つまり「申し訳ありません」は「言い訳しません=私が一方的に悪いです」という意味に他ならない。

 あれ、じゃあ「申し訳ありませんでした(・・・)」の場合は……? 「私が一方的に、悪かった(・・・)です」ということに。

 過去形? あれ、今は? もしかして「問題の原因は私にあります(が、あんた方も同じ穴の狢でしょう)」と言っている? いやまさか……

 なんて、ご安心を。そういう意味ではないです。

 より正確に訳すならきっと

「私が一方的に悪かったです(。なので、何かあればお手伝いしますよ)」という、あとに「誠意」が隠れている言葉なんです。

 そう考えると、なかなか素敵な言葉ですね。

 少なくとも言われる側にとっては。


 ◇


 で、使い分けの話。

 私としては、ビジネスシーンにおいても基本的に「ごめんなさい」を中心に組み立てるのが良いと思う。

 それは例えば、社内で何かトラブったときとかに

「申し訳ありませんでした、○○さん……」

 と言われたら、それは慇懃無礼というやつになってしまうから。

 顔を見たこともない他部署の人間が挨拶に来るとかでも違和感がある。

 それが、同僚や後輩だったりすると、なんだこいつは……ってなる。

 なんか、小動物をいじめているような気分になってしまう。

「ああ、もういいよ」と許しを口にしつつ、内心では「もう、お前に声をかけることはないよ」と見捨てている。

 だが、だからといって例えば

「すみません、すみません……」と謝られても、それはそれで「知ったこっちゃ無いわ」となる。

 内心で、ね。私もビジネスパーソンなので、態度には出さないようにしていますが。


 ごめんなさいという言葉の、良いところが一つある。

 それは、基本的にその後に何かが続けやすいところだ。

「ごめんなさい、すぐにやります」

「ごめんなさい、以後気をつけます」

 これらは、自らの非を認めた上で、今後の改善も示している。

「すみません、すぐやります」では、「すぐやるから、許してね」という意味になってしまう。

「申し訳ありません、以後気をつけます」は、使い方としては別に良いんだけど「以後気をつけます」よりも「申し訳ありません」が強すぎて、上塗りされてしまっている。

 いや、お前が悪いのは悪いんだけど、そこまでではないから。それよりも、次からちゃんと気をつけてね。

 と、口の中で反芻して、飲み込む。胃液が混じった変な酸味があって、不味い。



 とまあ、好き勝手にいろいろ書いてみたけれど、他にもいろいろな謝罪言葉はあります。

「ご迷惑をおかけしました」

「……(無言で土下座)」

「メンゴメンゴ!」

 日本人は、とかく謝りすぎだと言われます。

 だからこそ謝罪の言葉について、もう少し考えてみてはいかがでしょうか。

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