桂男ー4
そんなある日クラスメートの女子生徒が一人学校を休んだ。前日まで体調不良の様子はなく高明とも時々話している気さくな相手である。
いくらなんでもその日は風邪でも引いたのだろうぐらいにしか思っていなかったが
「土凪君また退魔師のまねして追っている事件なんてあったりする?」
そんな事を聞かれて驚かなはずがない。彼女、青木が言うには宙に浮く絶世の美男子とあったそうだ。証言は他の被害者と一致するが唯一追加があるといえばある音が聞こえたらしい。
「まさかそんな事が、なぁちょっと頼みたい事あるけど」
高明の言葉に目を見開き戸惑うが熱意に負けて渋々頷く。
「そこまで言うなら仕方ないわねっ少しだけなら協力してあげるから感謝しなさいよっ」
「なんでツンデレみたいなセリフなんだよ。でもありがとなっさっそく今日頼む」
「私部活サボる事確定なの?まあいいわ。授業終わったらとっとと帰りましょう」
夕方になり日が傾きだし部活を終えた生徒達が校門を出ていく。事件があったばかりのため数人で帰る姿が多い。それでも家までずっと一緒という訳にはいかない。一人になるときはくる。集団から段々と一人になっていく。
「すみません、これ落としましたよ。」
こんな言葉を掛けられたら誰だって相手の方を見てしまう。女子生徒は落とし物を確かめる為声の聞こえた後ろを振り返る。
「えっっ」
その先には男が空中に浮かんでいる。
「そうじゃないと思いたかったけどやっぱりお前かっっ」
女子生徒、否、制服を着てロングヘアーのカツラを被った高明が声を出す。
向かい合い浮かんでいるのはこちらもロングヘアーでポニーテールの着物を着ている男は手にフルートを持っている桂。
「そのフルートで動きを制限させて相手の生気を奪っていたな!正体は何だ桂!」
「君こそそんな格好してまで見破りにくるなんて大したものですね。私は桂男というものですよ。このフルートは相手の記憶を少し操作する事も出来るのですよ。便利でしょう?」
余裕のある表情で微笑みを浮かべる。
「それで、私をどうにかできますか?見たところ武器はないでしょう?近くに援軍もいる気配もないですね。本来なら生気は女性だけしかもらわないのですが特別にもらってあげますよ」
フルートを吹こうとするが高明の表情に焦りは見えない。
「桂、いや桂男お前勘違いしてるみたいだけど俺は退魔師マニアじゃなくて本物の退魔師だぜっっんでテメェなんか俺一人で充分だっっ」
スカートをはためかせたかと思った瞬間肩を何かがかすめる。
見ると着物が切れている。かと思ったら両腕に痛みが走りフルートを落とす。
「なっ何をっっ」
高明の手にはナイフが握られているのを見て何をされたのか理解できた。
「こっちはまだ武器あるからな」
そう言いながらスカートをめくり上げるとナイフが数本見える。
「そういう事ですか。降参しますよ。」
地面に足を着くと呆れた顔を向ける。