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退魔師の事件簿  作者: 灯些季
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桂男

この未蔓冝(ミツルギ)市には様々な噂話がある。それは妖怪が出る、神隠しにあったという人がいたらしいという様な話がある。

 今の世の中人間の身近に怪異は存在するようになったので珍しい事ではないがそんな噂に対抗する存在として退魔師という存在もいる。妖怪などから人々を守るヒーローである。

「カッコイイよな?」

 朝から教室で同級生たちに囲まれて堂々と言い放つのは紺色こんいろの制服のブレザーを少し着崩し耳より少し長めの黒髪の明朗快活そうな表情の生徒、土凪高明(ツチナギタカアキ)

「はいはいそれ何度も聞いたよー」

「転校生の話しするっていうから聞いてたけどいつものやつじゃん」

「そんなのいるわけねーだろ」

 バカにした同級生たちを睨む。

「本当にいるんだよっ噂になっているだろ」

「で、転校生はそれとどう関係あるんだよ」

 一人の生徒の言葉に高明はニヤリと笑う。

「この10月っていう半端な時期に来るって怪しいと思わねぇ?しかもかなりのイケメンらしいぞ」

 その言葉に全員ガッカリとした表情になる。

「なんだ男か」

「美少女だったら大歓迎だけどな」

 そう言いながら散り散りになっていく。

「まだ話し終わってねぇって!」

「もうすぐ先生来るからまた今度な高明。」

 全員去ってしまった事にむくれるが一時限を告げるチャイムが鳴り出したことで自身も席につく。

 教師が入ってきてその後ろにおろしたての新しい制服を来た淡い栗色の髪の男子生徒が入ってくる。襟足が肩につくくらいで背は高く、眉目秀麗な姿にクラスの男子生徒たちは世の中不公平だと言いそうな表情となり、反対に女子生徒たちの表情は輝きだす。

 黒板には『くれ 桂剛けいご』と書かれていく。

「初めまして。くれです。身内からも『けい』と呼ばれているのでけいと呼んで下さい。」

 自己紹介によると桂は親の転勤で引っ越して来ただけという至ってシンプルな理由である。爽やかな笑顔に歓喜の声が上がる。

 

 休み時間になると当然女子生徒に囲まれる。近くの席の高明はその様子を見つめている。

「なぁお前ずっと転校生見てるけど別に怪しくないだろ。それとも一目惚れだったりする?あれだけ美形だったら同性でも気になるもんかもな」

「違う。シッポでも出しやしないかと見張ってるところだ」

 その途端残念なものを見るかのような目線を向けられる。

「あのなぁ中二病もいい加減にしろよ。」

「じゃあ聞くけど退魔師って何だと思ってんだよ。市のホームページにも書いてあるし学校にもチラシ置かれているだろ?」

「何ってお役所公認の都市伝説だろ。噂じゃ優秀な奴とか特待生がなるらしいけどあくまでも噂。だいたいそういう奴ら見たことねぇしそれで観光客を呼び込むんだろ。珍しい言葉だから興味持つ人もいるだろ。」

 実際に地元の人間でない人を見かける事もあるので観光にひと役買っているというのは嘘ではないかもしれない。

 しかし友人からの言葉に退魔師がいるいうことは信じてもらえてないのだとガッカリするが言い張ったところでまた流されるだけだと心の中でため息をつく。

「わかったよ。そういや昨日借りたゲームだけどなぁ」

 普通の学生として生活していくことに不満はない。それでも何か人以外の厄介事に巻き込まれる様な事があれば記憶の片隅でいいから思い出して欲しいと思い口に出している。そう高明が心配するほどこの世界は昔から妖怪などと縁がある。

 

 放課後、生徒たちは部室に行こうとする者、帰ろうとする者、掃除当番として残る者に分かれるが高明は陸上部の部室に行こうと準備をしていると桂に話しかけられる。

「土凪君、もし手が空いていたら学校案内をしてくれませんか?」

「え?俺?」

 女子生徒から羨ましそうな目で見られている事に気づく。

「別にいいけど俺よりも丁寧に案内してくれる奴はいるだろ」

「君がいい。席が近い同性とは仲良くしたいですからね。」

 どうして学校案内が友達認定になるのかと思ったがこれは正体を知るチャンスかもしれない。

「わかった。」

 自分と同じく陸上部の部室に向かおうとしている同級生を廊下で呼び止め遅れることを伝えると歩きだす。


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