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森の調査 5

つんつん。

人差し指で、赤いトカゲを突いてみる。

トカゲはちょっと嫌な顔をして、ぼくから距離を取る。


「こらこら、レン。そんなバッチイのに触っちゃダメよ」


紫紺に襟首を噛まれて、ズルズルと引きずられる。


「ふんふん。うーん、なんだかはっきり言いたいことが分からねぇな」


白銀は洞窟の所で火の妖精さんのお話を聞いている……んだけど、会話ができないらしい。

ぼくがチルとチロと出会ったときは、ふたりの姿も見えたしちゃんとお話もできたのに。

ぼくも火の妖精さんとお話しできないし、火の中位精霊でもあるトカゲともお話しできないの。

トカゲさん「ギャウギャウ」としか言ってないよ?


妖精同士、チルとチロなら会話ができるかも?と思ったけど、ふたりは今、ぐったりしてダウン中。

ぼくを水の竜巻の中から助けようとビューンと飛んできて、瑠璃の作った竜巻が海水だったから力の作用が上手くできなくて、力の反動でダウンしているんだって。

せっかく助けに来てくれたのに、ごめんねチルとチロ。


「どう?白銀。何か分かった?」


「うーん。こいつらの力が希薄になってて会話もできねぇし。なんとなくだが、何かに力を奪われているみたいだな」


トカゲたちが、うんうんと大きく頷く。


「そうみたいね?で、アタシたちに助けてほしいわけ?」


またまた、トカゲは大きく頷く。


「レンに助けを求めるのは……間違ってるだろう?」


白銀が呆れた口調で言うけど、どういう意味さっ!


「ぶうっ」


ほくが頬を膨らますと、ふたりはクスクス笑って、ぷにっと肉球を頬に押し付ける。

ふにゃと笑ってしまうぐらいに、肉球が気持ちいい。


「精霊と妖精があの洞窟に誘うってことは、元凶はあの中にいて、アタシたちに討伐して欲しいってこと?」


ブルブルと体を左右に振って否定するトカゲ。

尻尾も体と反対にブルブルと振られて……かわいいなぁ。


「なんだ?俺たちに倒して欲しい魔獣がいるんじゃないのか?」


ぼくは洞窟の入口を見つめる。

んー、嫌な感じはしないんだけど?

むしろ、神聖なキラキラした感じがするよ?

妖精さんたちとのコミュニケーションに悩んでいたぼくたちの前に、チルとチロがようやく復活した。


『うー、ひどいめに、あった。』


『もう!はやくかえろ、ひゅーのとこ、もどる!』


そこへ、水の妖精のチルとチロが目覚めたのに気づいた火の妖精さんたちが、わーっと取り囲んでいく。


『わー!なんだよーっ』


『ちょっと!はなれなさいよー!』


なんか……楽しそうだね?ぼくも混ざりたいなー。

グイッ。

また、紫紺に襟首を噛まれて、ぷらーんとぶら下がることになった。





「それで……あの洞窟の中に入りたいの?」


ようやく追いついてきた兄様とセバスとアリスターたち。

あのあと、チルとチロが通訳したところ、あの洞窟の奥は火の精霊王がいる精霊界と繋がっているらしい。

()()に力を奪われていて、弱体化しているのは妖精や精霊だけじゃなくて、火の精霊王自身もらしい。

彼らが助けて欲しいのは、精霊王。

もちろん、力を奪う()()をどうにかして欲しい気持ちもあるけど、精霊王の力を取り戻すほうが重要なんだって。


「このままだと、火の精霊の恩恵がなくなり、ハーヴェイの森やオルグレン山に影響が出てくるなんて……」


うーむ、と悩む兄様。


「だめ?」


兄様の体に抱き着いて、こてんと首を傾げてお伺いしてみる。


「……んんっ。精霊王をお助けするのは、いいんだけど……」


にへらっと笑った兄様の肩を掴んで、セバスがちょっと怖い顔で。


「ダメですよ。連れて来た騎士たち全員で行けたとしても許可できないのに、なんですか!ヒューバート様とレン様しか同行できないなんて!」


「いや、俺たちも行くぞ?」


『おれたちも、いくぞー?』


チラッと見て、白銀たちを華麗に無視するセバス。

だって、火の精霊王に会うには、火の精霊王のいる精霊界に行かなきゃダメなんだもん。

そこに行くには、妖精の輪(フェアリーサークル)を通らなきゃ辿り着けないのに、妖精さんたちは今は力が弱いから……。


「以前、水の妖精が作った妖精の輪(フェアリーサークル)を通ったことのある僕とレンしか通せないとは、困ったな」


トテトテとぼくの足元にトカゲが来て、アリスターを見て「ギャウ、ギギャウ」と吠える。


「あら?アリスター、アンタは通れる資格があるみたいよ?」


「ほう、火属性持ちでこいつと相性がいいみたいだな」


白銀と紫紺に体の周りをフンフンと嗅がれて、アリスターがピキーンと硬直する。


「セバス。とりあえずここで待機だ。僕とレンはアリスターも連れて洞窟の奥に行く」


「ヒューバート様!」


「僕は辺境伯代理だからね。ブルーフレイムの街を守るためにやるべきことはやるよ」


「ぼくも!ぼくも!」


ぼくは、自分をアピールするために、ピョンピョンとその場で跳ねる。

兄様がニッコリ笑って、ぼくの頭を撫でてくれた。


「アリスター。お前も同行しろ。レンを絶対に守れよ、他の騎士の分も」


「それは……注文のハードルが高くないか?ま、いいや。はい!ヒューバート様とレン様を必ずお守りいたします!」


ビシッと敬礼!


火の妖精と精霊の案内で、洞窟の奥の妖精の輪(フェアリーサークル)を通って、火の精霊王に会いに行こう!

メンバーは、ぼくと兄様と白銀と紫紺とアリスター。


『おれたちもー!おれたちも、いくぞ!』


あ、チルとチロも!





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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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