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森の調査 4

誤字脱字報告ありがとうございます!

いつも、ありがとうございます。

赤くて丸い体のトカゲの後を追うように、とてとて歩くぼく。

右と左に赤い妖精が列になって、ぼくを誘導してくれる。


このまま歩くと、あそこに行くのかな?

オルグレン山の麓、洞窟がぽっかりと姿を見せた。

真っ暗でよく見えないけど、間口が広くて奥が深そうだな……。


前に進めていた足が竦んで、動かなくなる。

またもや足を止めたぼくを急かすように、トカゲが周りをグルグル回ってから、ズボンの裾を引っ張る。


「やっぱり……。にいたまのとこ、もどりゅ」


ブルブルと頭を振ると、トカゲは「ギャウッ!」と大きく吠えて、グイーッと強く裾を引っ張る。


「やーの!」


ぼくは、引っ張られているズボンを掴んで逆に引っ張てみる。


「ギャウン」


トカゲの顔に、水がビシャァーッと凄い勢いで叩きつけられた。


「え?」


ぼくの首にかけていたペンダントがふわんと宙に浮かんで、そこから水がビシャァーッて飛び出て、トカゲの顔に命中したよ?

なにが起こったの?


トカゲは顔に当たった水の勢いが強かったせいか、痛みでゴロンゴロンと転がっている。

赤い妖精さんたちがぼくに向かって、わっと集まってこようとしたとき、ぼくを中心に円を描くように、地面から水柱が立ち、その水柱がグルグルとぼくを守るように周りを竜巻のように回り始めた。

ぼくは驚いて、目をパチパチ!


『レン?レン大丈夫かの?』


ペンダントが宙にふわふわと浮いたまま、夢の中でよく会っているお友達の声が聞こえた。


「るり?」


『そうじゃよ。そいつらは悪い奴らではないが、白銀と紫紺が来るまでそこを動くでないぞ?』


「あい。しろがね、しこん、くる?」


『ああ。今、必死にこっちに走ってきてるぞ。しばし待つのじゃ。それまでは儂がこのまま守ってやるからな』


「あい。ありがと」


ぼくに瑠璃は見えないけど、コクリと頷いてみせた。

この水柱、水竜巻?は瑠璃がぼくを守るためにしてくれているなら、大人しくしているよ。

白銀と紫紺がすぐに来てくれるなら。

ただ……トカゲさんは、瑠璃の水鉄砲が凄い痛かったみたい。

短い前足で鼻面を抑えて、赤いお目々からは大きな涙が玉になって零れているんだもん。

ちょっと……かわいそうかな?





俺たちが動き出したのに気づいたのか、鴉の神使は旋回を止めて大きく羽ばたき、降下していった。


「速度上げるぞ!」


「ええ」


グッと足に力を込めて地を蹴る。

チルとチロは俺の毛に捕まっているが、そちらを気にする余裕はない。

木々を避けて走るのも面倒になり、そのまま真っ直ぐに力技で進んだ。

紫紺が文句を言うかと思ったが、あいつはちゃっかり俺の後ろに陣取り、俺が払った道を駆けている。


「おかしいわね?レンの足でこんな遠くまで歩けないと思うけど」


「そうだな。なんかヤバい奴が一緒か?」


前方に感じるレンの気配の他には、森に充満している火の妖精・火の精霊の気配以外は、弱い魔獣ぐらいしかいないのだが?


「弱くてもレンにとっては、危険だわよ」


「そっか……」


でもな……、狼とか熊とかじゃないぞ?蛇もいないし……。


「!」


「なんだ?」


急に濃い魔力が放出された。


「これ……瑠璃の力よ!レンに何かあったのかも?全速力よー!」


俺の後ろから紫紺が飛び出て、風魔法で前の木々を薙ぎ倒し、バビューンと駆け抜けていく。


「あ!ちょっと待て!」


俺も慌てて後に続く。

瑠璃の力が行使されたとなると、レンに何か危害を加えた奴がいるかもしれない。

俺は知らず知らず、全身にバチバチと雷の気を纏って、その場を走り抜けた。







「なに?あれ?」


アタシの目に映ったのは、火妖精がわさわさ集まっていて、赤い不格好なトカゲが身悶えていて、小さな水の渦に囲まれたレンの姿だった。


「レン?」


「しこーん!」


あ、無事だわ。

ほーっと、深く息を吐いて安堵する。

ゆっくりレンに近づくと、アタシを警戒したのか火妖精たちがふわふわと後ろの洞窟の中に逃げ込んでいく。


「紫紺!レン無事か?」


白銀が追いついてアタシに尋ねるから、顔をレンの方へ向けて教えてやる。

白銀は走ってレンの元へ。

アタシは、その赤いトカゲから目を放さない。


「アンタね?レンをアタシたちから奪おうとしたのは?」


ぶわっと魔力を放出し威嚇すると、トカゲは既に泣いていたが、さらに涙を溢れさせて体を震わせる。

許すものですか!アタシからレンを奪うなんて……。

得意の風魔法の最大威力を解き放とうかと思ったとき、ボスンと柔らかい何かがアタシのお尻に当たる。


「しこーん!」


見るとレンがにぱっと笑って、アタシに抱き着いていた。

もうっ!しょうがない子ねぇ。


「今回は見逃してやるわ。たかだか火の中級精霊のくせに、あの子に手出しするんじゃないわよっ」


ガルルッ!と唸ると、トカゲはびゃっと体を浮かしてビビッてた。


「とかげしゃん……。せいれーしゃんなの?」


あ……。

しまった!レンが火の精霊に興味を持ってしまったわーっ!






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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
― 新着の感想 ―
これが「やっちまったぜ⭐︎」というやつですね!!
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