出会い 7
誤字報告ありがとうございます!
ぼくは、団長さんと一緒にお馬さんに乗ってブループールの街へ向かってます。
ぎゅっと太い腕でぼくの体を支えてくれる団長さんは、騎士さんらしく鍛えられた逞しい体をしていて、ぼくは初めてのお馬さんとの移動を楽しんでいるんだけど……。
白銀と紫紺の二人は不機嫌そうにお馬さんと並走している。
ぼくが団長さんと一緒にお馬さんに乗るの、反対してたもんなー。
でも、白銀の背に長い間は乗ってられないし、紫紺の背はツルツルスベスベの毛でずっと座ってることもできないんだもの…しょうがないよね。
人化して馬に乗る!て白銀は言ったけど、神獣フェンリルを背に乗せられる馬はここにはいなかった。
すっごく嫌がられるけど同じ神獣聖獣仲間の馬か、強い馬の魔獣のリーダーなら乗せられるけど、普通の軍馬じゃ怯えられて無理らしい。
わかる、ぼくはお馬さんの気持ちがわかるよ……。
だから、ぼくから白銀と紫紺にお願いして別々に移動してるんだけど…、二人の機嫌はなかなか直らない。
「むぅー」
ぼくのお口もへの字に曲がっちゃう。
「もうすぐ着くから。そうしたら白銀も紫紺も機嫌を直してくれるだろう」
団長さん…ギルバートさんは快活に笑ってそう慰めてくれる。
ギルバートさんは白銀たちに言われて、ぼくのことは「レン」、白銀と紫紺も敬称を付けないようになった。
凄く絶望的な表情をしていたけど、これからしばらくの間、一緒に過ごすなら堅苦しいのは嫌なんだって。
ぼくもそう。ただの幼児だもん。
「レン」って呼んでほしいな。
「さあ、見えてきたぞ。あれがブループールの街だ」
左右の木々が開け、広く草原が続く向こうに大きな石壁が見えた。
あれは侵入者や魔獣を阻む城壁みたいなものだろう。
人が集まっている所は、行き来する門がある所だと思う。
「わあああっ」
どういう所かな?
なんとなく、異世界あるあるの中世ヨーロッパ的な世界だと思うんだけど、前の世界でも外に出ることがあまり無かったせいか、胸のワクワクが止まらないっ。
「止まれ」
ギルバートさんが命じると、他の騎士さんたちも馬を止める。
「…すみません、白銀と紫紺。そのぅ…その姿を隠すというか、他の姿になるというか…できますか?」
「なぜ?」
「その…神獣聖獣を連れて街に入るのは些か問題があるので、失礼ですが他の魔獣ということで誤魔化したいのです」
ギルバートさん、呼び方は直せても丁寧に喋るのは直らないね。
「…他の魔獣って言ってもねぇ。アンタ、狼系の魔獣になれる?」
「は?無理だろう。いくら俺が狼だって言っても、このオーラは消せん!フェンリルだからなっ」
偉そうにいうことじゃないと思う……。
だいたい、狼ですって宣言する魔獣なんているの?喋ったらダメじゃない。
「そうね。アンタは無理よね(バカだから)。他の魔獣は無理でも体の大きさは変えられるわよ。ほら」
紫紺は白銀にチロリと冷たい視線を向けた後、シュルルルと体を縮めた?小さくなった?ぼくよりちょっと小さい?
「ふわわわわっ。しこん、かわいい」
抱っこしたい。抱っこと、馬に乗ったまま紫紺へと手を伸ばす。
馬から落ちると思ったのか、ギルバートさんがしっかりと僕を抱っこした。
うー、ぼくが紫紺を抱っこしたいのにぃ。
「お、俺だってできるぞ!」
白銀が焦ってそう叫ぶと、紫紺のようにシュルルルと体を小さく変化させた。
「うわあっ、しろがねもかわいい」
ちょこんとお座りしてぼくを見上げる二人。
あー、悶えたいぐらいにかわいい!
「これなら、魔獣の子供…。いや、普通の犬猫でもいけるか」
ふむ、と顎に手を当ててギルバートさんが考えると、後ろにいる部下の騎士さんに白銀と紫紺を馬に乗せるよう指示を出した。
「ヒ、ヒヒーン!ヒン」
あれれ?馬が怯えて後退りしていくよ。
小さくなってもダメなんだ。思わず乾いた笑いが出ちゃう。
いろいろ試してみた結果、ぼくが乗ったお馬さんに乗せることになりました。
直接じゃないよ?二人はギルバートさんの肩に乗ってるの。
「イタタ!爪を立てないでください!」
「俺じゃねぇよっ」
「アタシも違うわよ」
……もうちょっと、仲良くね。