火山の街へ 3
仕事が繁忙期に入りましたので、更新がやや不定期になります。
なるべく、2日更新1日休みのペースで更新したいとは…思ってます。
ちよっと緊張してます。カチンコチン。
兄様と一緒に、ブルーフレイムの街を治めてくれている街長さんのお屋敷に訪問しています。
と言っても、ブルーベル家の分家のひとつで、ハーバード様の側近の方の実家である子爵家です。
目の前にニコニコと笑って座ってる方が、エドガー・ブルーフォン子爵様。
父様と変わらないぐらいの年齢で、細身で柔らかそうな茶色の短髪がふわふわとしていて、穏やかな琥珀色の瞳の好青年……に見えるけど……。
でもぼくは、ちょっと警戒モード。
ママのお友達にこういう人がいたけど、笑ってるようで笑ってない人で、優しそうで冷たい人だった。
ぼくに暴力とか暴言とかは使わないけど、無関心な人だったんだ……。
んー、怖くなってきて思わず兄様の上着の裾をギュッと握る。
「……というわけで、魔獣の報告があったので辺境伯家を代表して調査に来ました。よろしくお願いします」
「そうですか。いやぁ、ドラゴンじゃないかって騒いでいるのは冒険者たちだけなんですよ?しかも冒険者なりたてほやほやの余所者の初心者が……。正直、私は信じてません」
ニコーッとさらに笑みを深くするけど……、圧を感じる。
「僕も勘違い、見間違いだったと辺境伯様に報告できればいいなと願っています。では、この調査計画書に許可をください!」
兄様が、セバスが差し出す書類をずずいっとエドガー様に見せて、ここですよ?と指でトントンと署名場所を叩く。
「……仕方ないですね。ふうーっ」
にこやかな表情が一変して、嫌そうに眉間にシワを寄せて、ペンを走らす。
「ありがとうございます」
エドガー様から署名済の書類を受け取り確認すると、セバスに渡す。
「で、お坊ちゃまたちは子爵邸に居候するんですか?」
ドオッとソファに背を預け足を組んだエドガー様。
急に態度を変えましたね?それに、兄様を侮ってたりする?
「いいえ。せっかく弟と来たのであちこち見て回りたいのです。ブルーフレイムでは宿を取ってますので、お構いなく」
兄様はニコリと天使の笑みを向け、ぼくを促して部屋を出ようとする。
もういいの?終わったの?
戸惑ってまごまごするぼくの背中を押して、兄様は「では、何か分かったら報告しますね」と言い捨てて、セバスの開けた扉からスタスタと部屋を出て行く。
白銀と紫紺も、ピョンとソファを飛び降りて、ぼくたちを先導するように尻尾をふりふり歩いて部屋を出る。
なんか……街長さんへの挨拶って、これでいいのかなぁ?
和やかな挨拶とは、ほど遠いんだけど……、先行きが不安になりました。
街の高台にある子爵邸を後にして、再び馬車に乗りガタンゴトンと揺られてます。
「あー、感じ悪かった!」
「にいたまも?」
最後までにこやかな兄様の表情に、てっきり兄様はあの失礼な態度を許せるんだーと思っていたんだけど……やっぱり嫌だったんだ。
「そうだよ。坊ちゃまとか言って子供扱いだし、ドラゴンなんていないって思わせようとしていたし。まあ、邪険に扱われる理由は分かるけど……」
「どうちて?」
兄様が話してくれた内容は、あのエドガー様と弟のローレンス様で、辺境伯のハーバード様の側近の座を争っていたときの昔のことで。
結果、弟のローレンス様が側近になったんだけど、その選ぶ際にぼくたちの父様、ギルバート・ブルーベルの意見が用いられたことが原因。
「別に父様は、ふたりの能力に差があるって評したわけじゃないんだ。ただ、ハーバード叔父様にはローレンス様の方が相性がいいって理由で」
相性って大事だよね……。
いつも側にいて仕事をするなら、仕事のし易い人と組みたいと考えたハーバード様の性格に合う人、父様曰く「神経質で細かくて腹黒い」政策に付いていける人はローレンス様の方だった……らしい。
「父様が言うには、エドガー様は朗らかで人心掌握能力に長けているけど、細かい作業とか書類処理とかはイマイチだったから、側近にはローレンス様、子爵家の領地経営にはエドガー様がいいって判断しただけなんだって」
でも、エドガー様は弟のローレンス様の方が評価されて、自分はダメな烙印を押されたと未だにやさぐれている……らしい。
そして、八つ当たりというか、逆恨みというか、全てはハーバード様に助言した父様が悪いって思ってる……て、迷惑だね?
「だから、父様の息子の僕には当たりがキツイんだよーっ。父様から聞いていたけど、面倒で困った相手だね……」
「できるだけ、私がフォローしますので」
セバスが苦笑する。
「あー、疲れたよ……。レン、今日はもう宿に行ってゆっくり休もう。明日は冒険者ギルドに行ってドラゴンを目撃した冒険者たちに話を聞こうね」
「あい!たのちみ!」
「ヒューバート様たちが冒険者ギルドに行かれている間、騎士の何人かはハーヴェイの森からオルグレン山の麓まで調査に行かせましょう」
「うん。頼むね、セバス」
ぼくたちは街の中心にある、明日行く冒険者ギルドの建物や、役所、教会を馬車の中からワクワクした気分で見ていた。