火山の街へ 2
馬車がガタンゴトンと揺れながら、ブルーフレイムの街へと続く一本道を進んでいく。
その馬車には、ぼくと兄様、白銀と紫紺とチルとチロが乗っている。
護衛として、いつものアドルフとバーニーじゃなくて、今回はクライヴとレイフがメインで組まれています。
アリスターもいるよ。
危険視されている魔獣がドラゴンなので、単純に剣術などに優れている騎士じゃなくて、魔法士を中心に組んだって父様が言ってました。
そして、ぼくたちの専属メイドのリリとメグと、セバス一緒です。
ぼくたちだけじゃ心配だから、父様がセバスも同行するように命じてくれたんだよ。
兄様が教えてくれたけど、今頃はハーバード様がユージーン様とプリシラお姉さんを連れてブルーパドルの街へ出発していて、父様はお留守番。
ハーバード様の護衛で副団長のマイじいもブルーパドルの街へ行ってしまうので、父様はブループールの街から離れられないんだ。
「どうちて、レイラさまは、いかないの?」
「うーん、今回はレイラ様と母様はお留守番なんだよね…。だから、僕がブルーフレイムへ行くことになったんだけどね」
そうなんだよねぇ?
母様はブルーパドルの街に一緒に行けなかったから、次に皆でお出かけするのを楽しみにしてたのに……今回もお留守番なんだよね……。
レイラ様も……お留守番するような大人しい人じゃないのに……、なんでだろう?
この旅に出てから、兄様とずっと考えているんだけど、なんでだか理由は分からないままなんだ。
父様に尋ねても、顔を赤くして答えてくれないんだよ?
でも……兄様に危険な「ドラゴン退治」を命じるぐらいだから、理由はちゃんと教えてほしいのにぃ。
「ははは。レン。さすがにドラゴン退治は無理だよ?ドラゴンがいるかどうかを確認して、できれば……街から追い出すぐらいはしたいね」
兄様は、首を傾げて優し気に言うけど、なかなかに強気な発言かもしれない。
ドラゴンについては、白銀も紫紺も口を閉ざして教えてくれないから、夢の中で会える瑠璃に訊いてみたんだ!
そうしたら、ドラゴンだとみんなが思っているドラゴンは、亜竜に近くて本当のドラゴンではないって教えてくれた。
本当のドラゴンは北の標高の高い山に棲んでいて、人里に降りてくることはほとんどないんだって。
亜竜は強いけど、本物に比べたら大人と子供……赤ちゃんぐらいに力が違うらしいよ?
白銀と紫紺だったら、簡単に退治できるって。
父様や兄様には、白銀と紫紺がいれば退治できることは伝えてある。
だから、今回の旅は仮令亜竜のドラゴンが攻めてきても安全だと……思うよ?
あっ、街の門が見えてきた!
人が……冒険者みたいな人たちと旅商人の馬車とかが沢山並んでいる。
「おおきなまち?」
「そうだね。ブルーベルでは、僕たちの住んでいるブループールの街、お祖父様たちが住んでいるブルーパドルの街、次に大きいのがここ、ブルーフレイムの街だよ」
「ふおおおっ!」
「特にここは、珍しい魔獣がハーヴェイの森から出てきたり、オルグレン山から下りてきたり、初心者用のダンジョンがあったりするからね。冒険者が大勢訪れる街なんだ」
「ぼうけんちゃ……いっぱい?」
「そうだよ。冒険者ギルドはかなり大きいらしいから、一度行ってみようね」
「あいっ!」
わあーい!楽しみだなぁ。
そして、ブルーフレイムの街の門も、ぼくたち一行は騎士団専用の門から入りました。
……そろそろ、ズルをしている気分になってきたな……。
ちょっと、しょんもりしていたら、両側からもふもふ……じゃなくて白銀と紫紺が慰めてくれた。
「レン、宿屋に行く前に、このブルーフレイムの街をまとめている街長のところへご挨拶にいくからね」
「あい」
ぼくは、馬車の窓から街を見学。
うん、ぼくたちの住む街よりも、鍛冶屋さんや道具屋さん、武器防具のお店とか冒険者向けのお店が多いかな。
歩いている人も、防具を身に着けた冒険者っぽい人がいっぱい。
女の人もいるし、兄様と同い歳くらいの子供の冒険者もいるみたい。
街からも兄様が教えてくれたバース山脈の高い山々が見えるし、一番手前にあってハーヴェイの森に近いオルグレン山の山頂からは白い煙がふわふわと湧き上がっている。
なんか、ワクワクしてきた!