神様に会いに行きましょう
汗をふきふきパニック状態の神官さんを、父様が問答無用と捕まえて、予約していた祈祷室へと案内してもらいます。
こちらもこじんまりとした白い部屋で、窓は色硝子、ステンドグラスになっていました。
「んゆ?るり?」
そのステンドグラスに描かれていたのは、聖獣リヴァイアサン……に見えるような?
「ああ、そうだよ。この教会の祈祷室に飾られたステンドグラスは、神獣様や聖獣様が描かれているんだ。レンが聖獣リヴァイアサン様と友達になったと聞いたから、この部屋を予約したんだよ」
「うれちい!とうたま、ありがと」
むむ?ということは、神獣フェンリルと聖獣レオノワールが描かれた部屋もあるのかな?
いつか、見てみたいなー!
白銀と紫紺は、瑠璃の姿が描かれたステンドグラスを不思議そうに見ていた。
いつか、ふたりのステンドグラスも見ようね。
「さあ、レン。お祈りしよう」
「あい!」
ここにも神様の像が、祀られている。
正面の椅子にぼくを降ろした父様は、ひょいひょいと白銀と紫紺も椅子の上にあげる。
父様たちは、ぼくの後ろの席に座るみたいだ。
「僕は、レンを僕の弟にして下さったことのお礼を」
「俺も家族になったお礼だな」
「あら、母様もよ?」
そんな、ぼくの家族の声を嬉しく聞きながら、静かに手を合わせ……。
「ちょっ、ちょっと、レン。ちゃんと座りなよ?」
兄様がぼくの体を後ろから抱き上げる。
「?なんで?」
ぼくのお祈りスタイルは、正座してお手々をこう合わせるんだけど……違うの?
「普通に座りなさい、レン」
「あい」
ぼくは足を下ろして座り、今度は指を組んで目を閉じた。
「シエルしゃま……」
パチッと目を開けると、いつかの空間、真っ白いお部屋にぼくたちはいました。
そして、ぼくを見て泣きそうに顔をくしゃって歪めたシエル様が、両手を広げてぼくに突進してきた。
「レーンーくーん、待ってたよー!」
ぎゅむぎゅむと抱きしめられて、うう……くるちい。
「「はなせ」」
白銀と紫紺が、シエル様を力尽くで引きはがしてくれた。
「アイタ!ひどいなー、君たち。僕……いちおー神様だよ?」
尻餅ついたシエル様が、恨めしい顔で白銀と紫紺を睨む。
そこへ、ぼくがたいへんお世話になった、狐の神使さんたちがわらわらと出てきて、テーブルや椅子をセッテングして、お茶とお菓子を出してくれた。
ぼくはちょこんと椅子に座って、お菓子に手を伸ばす。
白銀と紫紺は初めて会ったときに見た大きさになって、ぼくの両隣りに侍る。
ぼくがお菓子食べて、白銀のお口にお菓子を入れて、次は紫紺のお口にお菓子を入れて……を繰り返します。
「もう、すっかり仲良しだね。よかったよかった」
ニコニコのシエル様。
「よかったじゃないわよっ。レンの周りでトラブルばっかりなんですけど?レンの保護者ってヒューたち家族じゃなかったの?」
「そうだな……。レンの周りで不穏なことばかり起きる。命の危険もあったし……。アンタ、ちゃんと仕事してんのか?」
「ひ、ひどいっ!僕はちゃんと仕事してますぅ。大体、レンくんと合流したらすぐに教会に来るように、お願いしたじゃないかっ!」
シエル様の半泣き状態の訴えに、ふたりは揃って明後日の方へ顔を背ける。
「教会に来たら、ヒューくんの呪いの解呪と怪我の治癒をするつもりだったの!僕が直接施す訳にはいかないから、一旦君たちに力を譲渡して、それから治してもらうつもりだったの!」
「そ……それは……」
「なのにっ、教会に来ないからふたりして誘拐されちゃったんだよ?呪われていたことが分かれば、ブルーベル家の粛清も、もっと水面下で行うことができたのにぃ」
シエル様は、ぶうっと子供のように頬を膨らませる。
そして、両手でお菓子を掴んで口に放り込み、むしゃむしゃと咀嚼する。
「あとのトラブルは僕のせいじゃないよ。……レンくんが、危ないことに首を突っ込みがち?お節介すぎる?だからかなぁ……」
んん?
後半はシエル様の声が小さくて、よく聞こえなかったよ?
でも白銀と紫紺が、まさに神様の言う通りとばかりに何度も頷いてるんだけど?
「あとあと、教会に来てくれたら加護も付けられるし、授けた能力についての説明もできるし……」
シエル様は口の中のお菓子を、ゴックンと飲み込んで、
「あのねレンくん。君にはこの世界で、のびのびと生きていけるように沢山の能力を与えてあるんだ。でも幼いときにその力を行使すると、体にすっごく負担がかかるから、大きくなったら使えるように封印してあるんだよ」
「……、まほー、つかえりゅ?」
「うん。使えるようになるよ!」
「よかったー!ありがと、シエルしゃま」
ぼくは、シエル様にいっぱいいっぱいお礼を言いました。
家族のこともお話ししたし、お友達のこともお話ししたし、アースホープ領のこと、ブルーパドルの街のことも、いっぱいいっぱいお話ししました!
シエル様は、ちゃんとひとつひとつ大切に、ぼくのお話を聞いてくれたよ。
とっても楽しくて嬉しくてそんな宝物の時間が、あっという間に過ぎていって、とうとうお別れの時間。
「また、会えるよ?この街と王都と幾つかの教会には、僕と繋がるモノがあるから」
「あい……。あい、また、あう……あいにきましゅ……」
「うん。待ってるから。レンくん、お友達いっぱいつくってね!また、お話聞かせてね!」
「あい!」
段々とシエル様の姿が薄れていって、眩しい光に包まれて……。
目を開けると、祈祷室の神様の像が優しく微笑んでいるように見えました。





