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出会い 5

焚火の火がチロチロと赤く燃えている。

人間って燃えている火を見ると、なんだか落ち着くんだよね。


ぼくは学校に行ってないし、ママが()()だったから、キャンプとかバーベキューとか経験がないんだけど、テレビで見て知ってたから憧れてたんだ。


僕の知識はとても偏っていると思う。

小学校に上がる頃は、ママの友達は優しいおじさんだった。

ランドセルも買ってもらったし入学式用のお洋服も買ってもらった。教科書もあったし、おじさんは辞書と図鑑も買ってくれた。


でも、おじさんが来なくなって、学校にも行けなくなって、ぼくはテレビを見て言葉と文字を覚えなきゃならなかった。

ママのいない間の時間、ニュースを見て教育番組を見てアニメやドラマを見て、いろんな知識を蓄えていったけど、足りないものもいっぱいあると思うんだよね。

だってママはぼくのこと、グズとかバカとか呼ぶんだもん。


「レン、スープができたぞ」


白銀がぼくの隣に座る。

スープを持って来てくれたのは、白銀じゃなくて団長さんでしょ。


「ありがと」


ちゃんとお礼を言いたいが、カミカミの言葉にぼくの羞恥心が…。

なので幼児らしくカタコトで喋ります。ごめんなさい。


紫紺もぼくの隣に座る。団長さんともう一人の騎士さんは反対側に座ってスープを食べ始めた。


「レン、大丈夫?ひとりで食べれるかしら、熱いから気を付けてね」


「あい」


ぼくはコクリと喉を鳴らして、スプーンを手に持ってフーフーと息を吹きかける。

具沢山のスープだった。

お肉も入ってるけど…この肉ってあのニワトリもどきの魔獣のお肉なんだって。いやー、異世界あるあるだけどね、魔獣の肉が食用って。


「はむ」


んー、あったかくて美味しい。

野菜も甘くてお肉も臭くない。なによりも、誰かが作ったちゃんとしたご飯は久しぶりだ。

それだけでニコニコしちゃう。


ぼくが食べたのを見て、白銀と紫紺も皿に盛られた焼いたお肉を食べ始める。

な、生肉じゃなくてよかった。


「ところで、レンどのを連れてブループールの街へ行きたいというのは…」


「レンを保護したのはいいけど、アタシたちと一緒に森で過ごす訳にはいかないでしょ。人の子は人の街で育てないと。だから、近い街に行くつもりだったのよ。アンタ、ブループールの街は子供が育つのに都合の悪い治安の悪い街なの?」

「いいえ。ブルーベル辺境伯の領主邸もある街で、我ら騎士団の本拠地でもあります。治安はいいですが…辺境領ですので、この森も魔獣が多く危ないですし、海に面した所は隣国への警戒も必要ですし…安全かと言われると……」


げふっと白銀が大きな塊肉を平らげて、ペロペロ毛づくろいしながら言う。


「かまわん、俺たちも一緒だ。魔獣も隣国の兵も問題にならん」


「えっ…!」


「なんだ、俺たちが一緒だと嫌なのか?」


白銀の意地悪な問いかけに、団長さんと騎士さんは激しく首を左右に振って否定する。


紫紺たちの話で、ぼくは森で保護した迷子扱いになってる。

どうやら団長さんは、ぼくが捨てられたと思って同情してくれてるっぽい。

保護したぼくを安全な所に連れていくだけで、紫紺たちがぼくと一緒に街で生活するとは思ってなかったんだろう。普通の魔獣なら従魔使い(テイマー)の従魔として街で生活しているらしいけど、紫紺たちは自分たちがやんごとない存在ってバラしちゃったもんね。


「孤児は教会併設の孤児院で保護されます。そこに…神獣フェンリル様や聖獣レオノワール様もご一緒にとは…難しいかも…しれません」


語尾がどんどん小さく弱々しくなるのは、白銀と紫紺の目つきが段々キツくなっていくから。


んー、でも困ったな。

ぼくは白銀と紫紺と離れたくないし。

孤児院ってみんなと共同生活でしょ?ぼく…馴染めるかな?


ちょっと、しょんぼりした顔をしてしまったぼくを見て、白銀の機嫌が益々悪くなる。


「ガォッ。俺は、レンと離れないっ。もういい、俺とこいつとレンとで三人で住む!誰にも邪魔させないからなっ」


「そうねぇ。三人で生活したほうがいいかしら。冒険者になって魔獣を狩って狩って狩りつくせば、お金も手に入るし安全にもなるし……いいわね」


キラーンと紫紺の目が光る。

狩りをする野性の本能なのか、それともお金の魅力なのか…。


「待って、待ってください。さすがにそのお姿で幼児のレンどのと一緒にいるのは…マズイのでは…」


白銀と紫紺はお互いの顔を見合わせて、ひとつ頷くと立ち上がる。


「どうちたの?」


「レン、見てろよっ」


白銀と紫紺は団長さんと騎士さんたちの方へ行き、二人のことをジロジロと見る。見る。見回す。

そして、ウンウンと満足そうに頷き、ぼくの方へ戻ってきて…。


「あれ?」


2人の体をもくもくと白い煙が覆っていく。

もくもく。もくもくもくもく。

真っ白で二人が見えなくなってしまう。


「しろがね?しこん?」


サアーッと風が吹くと、白い煙は霧散していった。


そして、そこに見慣れない二人の騎士さんが立っていた。


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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