海の覇者 4
誤字脱字報告ありがとうございます!
いつも、ありがとうございます。
「ブルーベル辺境伯領騎士団、団長ギルバート・ブルーベルの第1子、ヒューバート・ブルーベルです」
「レンでしゅ」
兄様の真似をして片膝を付き、片腕を曲げて胸に当て、ペコリと一礼。
「ふぉふぉ、儂は聖獣リヴァイアサン。神に創られ母なる海を守る者よ。不本意だったろうが、ようこそ海へ」
渋い声で歓待してくれたリヴァイアサンさんは、とても大きな体なので、全体像を見ることができません。
すっごく遠く離れたら見えるけど、そうしたらぼくたちを包む、しゃぼん玉もどきのコントロールに不安があるということで、しばらくは声と鱗だけです。
白銀と紫紺みたいに「縮小化」スキルは持ってないんだって。
それを聞いた白銀が、
「けっ。聖獣リヴァイアサンともあろうが、こんな簡単なスキルも身に付けていないなんてな!怠慢なんじゃね?海に漂ってボケたか、ジジイ。けけけ」
と口悪く馬鹿にしていました。
ダメだよ!白銀。
人それぞれ得手不得手があるんだから、とぼくはお説教モード。
「ふふふ。レン、いいのじゃよ。フェンリルのいうとおり、儂がのんびりしていたせいじゃ。海深く棲んでいるだけじゃしな、暇で暇で」
「もう!しろがね、メッ!だよ」
ぷくっと頬を膨らませるぼくを見て、くすくすと笑う兄様。
「ところで、さっきからフェンリルのことを、白銀と・・・」
「あー!あー!そうだわ、リヴァイアサン!この子、人魚族らしいけど、どこの子かわかるかしらぁー?」
「そうだ、そうだ!なんか人魚族が人の世で絶滅扱いにもなってたぞー!なんでだろうなぁーっ!」
ふたりが急に大声で喋り出した。
「う・・・うるしゃい」
ぼくと兄様は耳を塞いで、しかめっ面です。
白銀と紫紺は、そのとき・・・
(冗談じゃないわよ!アタシたちがレンから名前をもらって契約したなんて、知られたら・・・)
(おいおい!ジジイまでレンと契約するなんて騒がないよな?だいだい、あの方に頼まれたときに、レンの保護を断ってんだろうが!)
((これ以上、レンの保護者を増やしてたまるかーっ!))
と、心中穏やかじゃなかったらしい。
リヴァイアサンもあっさり、フェンリルやレオノワールの別の呼び名があることの疑問から、しゃぼん玉もどきの中で意識を失っている少女へと興味を移した。
「ふむ。確かに人魚族ではあるが・・・、血は薄いな?他の種族との混血じゃろう。海に入っても足がヒレに変化しないところを見ると」
「ヒレ?」
なにそれ?人魚の足って変化するの?
「人魚族は成人すると、陸に上がるとき自然に2本足に変化して、歩行可能になるんじゃよ。水や海に入るときは、ヒレに戻る。ただ、混血児の場合は、逆じゃな。成人すると足がヒレに変化できるようになる」
おおぅ!魔女のお婆さんから怪しい魔法薬をもらって、変化するんじゃないんだ・・・。
さすが、異世界ファンタジー・・・。
「ふーむ、とりあえず近くに海王国という人魚王が治める国があるから、そこへ行ってみよう。この子の血縁者がいるかもしれん」
「人魚族は僕たちの中では、もう誰も残っていないと伝えられています。なのに・・・王国があるんですか?」
「ああ、小さな騎士よ。人魚族は陸への覇権争いから手を引いただけで、今も変わらず海に君臨しているぞ。儂も守護しているしな。大きな国は海王国だが、海のあらゆるところに人魚族は住んでいる」
人魚族は王制で、海王国に王家の一族と主たる貴族がいて、他の集落は、街とか村とか規模は違うけど、それぞれ信頼できる領主人魚が治めているらしい。
なんでバラバラに住んでいるかというと・・・。
「くだらない理由じゃが、好物の魚や貝の生息地の近くだったり、暖かい海流や冷たい海流、深さの度合い、あとは近くに住みやすい人の地があるとかじゃな」
意外と普通な理由だった。
「人の住む陸にも、人魚たちは住んでいる。ただ、ほとんど人族と姿が変わらないから、気がつかないんじゃろう。人魚たちも、わざわざ自分たちの種族をひけらかすことは、せんだろうしな。人魚の涙やら、血肉を食らうと不老不死になるとかの迷い言を信じる奴がいる限り。だが、よく見るとわかるぞ。あ奴らは耳殻がないし、水かきがあるしな」
へえーっ、じゃあブルーパドルの街にも、人魚さんが居たのかも。
気が付かなかったな。
「このまま、海王国に行ってみよう、案内するぞ。儂が居れば、すんなり海王国も入れるし」
「いってみたい!」
ワクワクする!人魚だけの国なんて、どんなところなんだろう!
目をキラキラして兄様を見ると、兄様は少し「うーむ」と考えて、
「父様たちも心配してると思うけど、この子を保護するにしても、人魚族との混血児ってハッキリしてる方がいいし・・・僕も行ってみたい海王国・・・」
「ああ・・・、ヒューまでジジイの甘言に惑わされているわ・・・」
「くっそう、このままじゃ、ジジイの思惑どおりに・・・」
「なんじゃ、お前らは行かんのか?別に儂は構わないが?」
「「行きます!」」
じゃあ、みんなで海王国までレッツゴー!