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風の精霊の気まぐれ 1

「まずは現状を把握しよう。アドルフ、関係のない者を会場外まで避難させろ」


渋い顔をした父様がアドルフたちに命じて残っていた人たちを会場の外まで追い出してしまった。

残ったのは……ぼくと兄様とアリスター。白銀と紫紺と真紅。

もう白銀と紫紺は人化してないよ。真紅は人化したまま。

んっと、父様とセバスがいて、騎士たちはみんな外へ行っちゃった。

あと、空から降ってきたアルバート様とリン、ミックとザカリー。

ああ、あの子もいるね。


それと……お空をフワフワと優雅に飛んでいる見知らぬ精霊さん?


「……アルバート叔父様。いったいどこから落ちてきたのですか?」


兄様の質問にアルバート様は目をウロウロと泳がし、人差し指でポリポリと頬を掻いた。


「あ~、俺たちは最難関ダンジョンに挑戦しててな……」


「「最難関ダンジョン!」」


あ、兄様とアリスターの声が揃った。

二人とも目がキラキラと輝きだしたぞ。

二人がこの剣術大会で優勝して、父様の許しを得て挑戦したかったダンジョンだもんね。


「う~ん、一応踏破はしたんだ。ボスモンスターも倒したし。だけどな……そこで会ったのが、アレだ」


アルバート様は人差し指を上に向ける。

リンたち他の三人は反対に目を逸らし、その存在を排除しようとしている。


「精霊だ。風の……たぶん、中級……いや上級かな?」


「え? 風の上級精霊ですか?」


兄様もびっくり! だってダイアナさんからのお願いには「風の精霊との契約者」を探してほしいってあったもん。

この精霊さんが誰かと契約していれば、ダイアナさんも大喜びだよね。

今はどこかに行ってしまってダイアナさんはいないけど。


ぼくたちが揃って空へ顔を向けて精霊さんの姿を目で追うと、精霊さんはニコニコ顔で手を振ってくれました。


「アルバート。それで、精霊と契約したとはどういう意味だ?」


父様が目を三角にしてアルバート様の胸倉を掴んでガクガクと揺する。


「ひいっ。だ、たから、あいつが勝手に俺と契約したんだよーっ」


「ギル様。アルはボスモンスターと戦い瀕死の状態でした」


「アルが全力で風魔法を使ったから、あの精霊はアルを気に入ったんだと思う」


「精霊の治癒魔法によって、アルや私たちの傷も治りました」


アルバート様、リン、ミックとザカリーの話を聞いた父様は深いため息を吐いて、セバスとバトンタッチ。


「それではアルバート様。契約した精霊様をこちらへお呼びいただけますか?」


「えっ? あいつ……俺の命令なんて聞かないけど?」


セバスに対してビクビクと体を震わしたアルバート様は、チラリと精霊さんを見ると、フルフルと頭を横に振った。


ぼくも気になることがあるからキョロキョロ。

あっち見て、こっち見て……、あ、父様、あの子の避難を忘れてますよ。


ぼくが父様のマントをクイックイッと引っ張って、あの子、ミランダ嬢を指差すと、父様はとうとう頭を抱えてしゃがみこんでしまった。


「セバス。ミランダ・ホワイトホースがいる。どうしよう……」


「いいではないですか。今回の騒動の発端は彼女です。重要参考人として尋問しましょう」


キリリと顔を引き締めてセバスは父様にハッキリと言い切ったけど、ミランダさんはまだ子どもでしょ?

尋問するのは、かわいそう……。

それに……。


「もう、くろいのないの。モヤモヤないの。うさぎしゃんもいないの」






























あんなに剣術大会の会場に蔓延していた黒いモヤモヤがキレイさっぱりなくなっていた。

白銀と戦っていた黒い兎さんも姿を消している。


白銀はあちこち痛そうで、紫紺が支えてやっと立っている。

つまり……黒い兎さんはぼくの見間違えではなく、ちゃんといたはずなのに、消えてしまった。


兄様も父様も白銀たちも黒いモヤモヤが見えないから、ぼくの言っていること信じてもらえるかな?


「レン。確かに俺と戦っていた《《ナニ》》かはいない。それぐらい気配でわかるぞ。……イテテッ」


「アンタはポーションでも飲んでなさい。確かに会場全体から感じていた不穏な空気はなくなってるわ」


うんうん。

そうでしょう? もう、黒いモヤモヤはないから大丈夫なの!


でも、どうして黒いモヤモヤはなくなったのかな? 黒い兎さんはどこにいってしまったの?


「ふふ~んだ! 浄化したのさっ、この風精霊様が!」


「わあっ!」


び、びっくりしたぁ。

空を飛んでいたはずの精霊さんが、ぼくの後ろから「バアッ」て顔を出すから、心臓がドキドキしちゃった。


「んゆ?」


いま、精霊さん「浄化」したって言った?


「は? お前が浄化したのか? この会場全体に溢れていた瘴気を? 神気が混ざった瘴気を?」


真紅が腕を組んで、ちょっとバカにした目で精霊さんを睨む。


「うわぁ。やだやだ。せっかく拘束魔法が解けて、お気に入りの人間を見つけてご機嫌だったのに、神獣と聖獣までいるじゃないか……。うわぁ、やだなぁ。あっちへいってよ」


「な、なんだとぅ?」


うん……やっぱり神獣聖獣と精霊さんは仲が悪いみたい。

真紅と精霊さんの喧嘩をぼくたちは生温い目で見守った。

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