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【11月コミックス2巻発売!】ちびっ子転生日記帳~お友達いっぱいつくりましゅ!~  作者: 沢野りお
目指せ剣聖への道 悪役令嬢編

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黒くて悲しいモノ 6

上から、たぶん空から聞こえてきた気の抜けた声に、シエル様へのお祈りを中断して仰ぎ見ようとした瞬間、黒くて柔らかいものにもふんと包まれた。


「危ないっ」


紫紺の切羽詰まった叫びと、紫紺に押しつぶされた真紅の「ぐえっ」という呻き声、そして周りに吹き荒れる強い風。


上から黒い兎さんに叩きつけられるように吹いた風は、その近くにいた白銀と兄様たちを呆気なく吹っ飛ばし、その他の人たちもゴロゴロと転がっていく。


ぼくは、獣化した紫紺の体の下で、真紅と一緒に守られたから大丈夫だけど……強い風が目に当たってしぱしぱするよぅ。


「なんて風。これ……風魔法じゃないの!」


紫紺が顔を上に向けて「ガルルルッ」と唸った。

風魔法? 白銀が使ったの? それともあの黒いモヤモヤでできた兎さんは魔法まで使えるの?


「ちげぇーっ。これは精霊たちが使う魔法だーっ。あのちっこい奴ら水の精霊王じゃなくて頭の軽い風の精霊王でも連れてきやがったか?」


真紅がむぎゅっと紫紺の体に潰されながらも、キャンキャンと文句を吠える。


「あら? なにか落ちてくるわよ?」


紫紺の言葉にぼくも顔を上に向けると、兄様とアリスターが獣化した白銀に後ろの襟元を咥えられて空を飛んでいるのが見えた。


え? すごい! ぼくも飛びたい。


あとで白銀に聞いたら、飛んでいたんじゃなくて、空を駆け上がっていたんだって。

すっごぉ~い!


ぼくが白銀たちの姿にポカンと口を開けていたら、空からポトポトと何かが落ちてきた。

その何かは叫んでいる。


「ぎゃああああああっ。バカーっ。おーちーるーぅ」


「ア、アルぅぅぅぅ。風魔法を使えーっ」


「うわああああああっ」


「……神よ」


なんか一人、すっかり諦めてシエル様にお祈りしている人がいるみたい?


「はあっ? あいつらギルの弟と愉快な仲間たちじゃねぇか」


真紅が顔に手を翳し目を細めて見上げると、見知った顔に首を傾げる。


そう……ぼくの見間違えじゃなければ、あの空からヒュルルルルと落ちてくる四人の男の人たちは、父様の弟のアルバート様とその冒険者パーティーだ。


でも、アル様は最難関ダンジョンに挑戦しているって……。


んゆ? 最難関ダンジョンを見事踏破するとお空から降ってくるご褒美があるのかな?

ご褒美って、空から落ちたら痛いと思うんだけど……アル様たち、どうやって着地するつもりなのかなぁ?


ヒュルルルルッと落ちるアル様を眼で追っていくと、大事なことに気づいた。


あれれ? 黒い兎さんはどこいった?

































「あー、ヒドイ目にあった」


さすさすと打ち付けた尻を撫でていると、ゴツンと鬼の形相のギル兄から拳骨をもらう。

俺はまだいいほうだ。

リンなんて、兄のセバスティーノにどつきまわされている。

かわいそうに……、そんな身内に折檻される俺たちを震えあがって見ているのが残りの冒険者仲間のミックとザカリーで、大口開けて笑っている失礼な奴が最難関ダンジョンボスモンスタートラップ部屋で会った面倒な奴だ。


「おい、アルバート! 聞いているのか? ダンジョンに籠って長い間連絡もせずに帰ってこないと思ったら、こんなところに落ちてきやがって!」


ギル兄はかわいい弟の顔を見て、面倒なことが起きていると察知し、うるさく囀る王国騎士団を「客の避難」という命令で追い払い、周りをアドルフたちブルーベル辺境伯騎士団で固めた。


なんだか知らんが、ここら辺にゴロゴロと転がっていたガタイのデカイ奴らは、怪我人として会場の外に運び込まれている。


「俺だってわかんないよ! ボスモンスタートラップを倒したら、あいつにここまで運ばれちまったんだ! あ、モンスター討伐のドロップアイテムは?」


俺は自分の両手になにも持っていないことを確認すると、周りをキョロキョロと見回して、お宝を探す。


「ひいーっ。ティーノ兄……もう許してよ。おーいっ、アル。ドロップアイテムはザカリーが回収している」


俺の相棒が最凶の兄に激しい躾をその身に受けながら、俺のほしい答えをくれる。


あー、よかった。

あんなにたいへんだったボスモンスタートラップの戦いがタダ働きなんて、とんでもない。


「アル……。お前、この状況でドロップアイテムの心配か?」


「いてっ。いでででででっ」


やめて、ギル兄。

あんたのバカ力で握り拳を俺のコメカミにぐりぐりすんなっ。


「それに、あいつって誰だ?」


「痛ぁーいっ。放せって。あいつってあいつだよ。最難関ダンジョンの最下層で俺たち全員の傷を治し、見たこともない風魔法でここまで俺たちを運んできた……精霊?」


そう、ダンジョンで会った、陽気で人の話を聞かない厄介な奴は精霊だと思う。


しかも、かなり力のある精霊で、ヒューやレンにくっついている妖精とは比べものにならない、アリスターと契約している中級精霊よりも強力な……。


「アドルフ。あの謎の男の姿を見ることができているか? 他の者はどうだ?」


ギル兄の問いかけにアドルフたち、ブルーベル辺境伯の騎士たちは困惑した顔で頷いた。


「全員に姿を見せることができる精霊。かなり上位だな……。風魔法……風の精霊か」


「だと思う。なんか……掴みどころのない奴で、好奇心の塊でさぁ……俺、気に入られたかも」


言いたくないが言わないと、ギル兄にもっと怒られる。

ギル兄は、続きを言えとばかりに片眉を上げてみせる。


「ハハハ。なんか……俺、あいつと契約しちゃったみたい」


風の精霊と契約してしまったけど、あれは不可抗力だと思うんだよねぇ。

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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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