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決勝戦 4

ぼくに見えている試合会場の床は黒くてズモモと蠢いているのに、白銀たちにはただの白い床に見えているらしい。


床から大きな蛇みたいなものがズルズルと動いて、それが兄様とアリスターに襲い掛かっている人の体へと繋がっているんだけど、見えないのか……。


だからね、たぶんこの床は黒いモヤモヤである瘴気が溜まっていると思うんだ。


「しょーき!」


ビシッと窓の外を指差すぼくに、白銀たちとセバスは困惑顔です。

んゆ? 見えないからわからないのかな?


「しょーき! にいたまと、アリスター、きけん!」


だから、急いで助けにレッツゴー!


なのに、白銀と紫紺は顔を見合わせてから頭を横に振ります。

セバスは、バーニーに命じて兄様たちの元へ騎士たちを連れて行かせました。


「セバス? バーニー、じょーか、できないの」


瘴気を消すには「浄化」の力のみ、だから浄化ができる人が行かないとダメなのよ?


「ふーっ。あのねレン。アナタはその浄化の力を使っちゃダメなの」


「んゆ?」


「レンの体が浄化の力に耐えられないからだ。レンは無理しないでここで待機していろ。俺と紫紺でヒューたちを助けに行くから」


「……う~」


た、確かに浄化の力を使うと、ぼくはバッタリと倒れてしまうことも多いけど、他にできる人がいないでしょ?


「ダイアナは何をしているのかしら? セバスは何か聞いてないの?」


「旦那様が王国騎士団の出動、または剣術大会の中止を申し出ましたが、一部の高位貴族の反対で動くことができません」


セバスの言葉に白銀と紫紺の鼻にグワッとシワが寄った。


難しいことはわからないけど、偉い人にいろいろと頼んだけど反対されてどうにもできないってこと?

王国の騎士は動かないし、剣術大会も中止されていない。

ダイアナさんは来ないし、兄様たちは危険。


「やっぱり、ぼく、いく!」


ギュッと両手を握って、白銀たちに止められる前に扉までダッシュです!


「しんくーっ、いくよー」


こういうときは真紅が一番の味方になってくれるんだ。

案の定、ぼくの呼びかけに面白そうと興味を持った真紅は、ボワッと人化してトタタタッとぼくを追い駆けてきた。


「ちょっ、ちょっと、待てーっ!」


「セバス、せめて会場の観客を避難させなさい。白銀が暴れたら、ここが崩れるわ」


後ろで白銀と紫紺が何か叫んでいるけど、捕まらないうちに兄様のところへ、急げーっ!


























剣術大会の会場の扉が開かない。

小さな扉も窓さえも開かない。


「団長。どうします?」


「う~ん。既に魔法も剣も試し済みだしなぁ。こりゃ、何かの魔法で空間が閉じられているのか?」


俺は腕を組んで考える。


この会場の中には、愛する息子二人とまだ若い騎士がいる。

セバスがいるからある程度のトラブルは回避できると思っていたが、さすがに神気が混じった瘴気の対処は無理だろう。

あいつなら「浄化」も使えるようになりそうだが、そんな楽観的に構えていられる時間の余裕はない。


「俺には見えないが、たぶん会場全体が瘴気に包まれているのかもしれない」


浄化能力のある精霊にしか見えない瘴気。

レンも浄化の力があるから、瘴気が黒いモヤモヤとして見えるが……まだ幼いレンが浄化の力を使えばその体が損なわれてしまう。


俺が側にいても何もできないが、愛しい者たちを危ない場所から避難させることはできる。

しかし……会場に入れないことには、何も守ることができない。


アドルフと頭を悩ましていると、騎士たちの後ろからざわざわとうるさくなり、徐々に道が左右に分かれていく。


「?」


口だけは出したい厄介な貴族でも来たのかと警戒したが、そこに現れたのは……ブリリアント王国の第三王子、ウィルフレッド殿下だった。


「で、殿下。どうしました? ここは危ないですよ。すぐに避難してください」


できたら王族の皆さんは王都から離れてほしいぐらいだ。


ウィルフレッド殿下は、厳しい顔で会場を仰ぎ見るとフルルと頭を横に振り、真っ直ぐに俺を見た。


「ギルバート殿。ここを突破するための案があります。協力してくださいますか?」


「そ……それは、殿下に危険があるのでは?」


「いいえ。本当はダイアナがいてくれれば簡単なことだったのでしょうけど、彼女はここ数日姿が見えないのです。彼女は自由の身ですから、文句を言う筋合いではないのですが……。せめて僕がなにかできればと思って」


それでも未知なものは怖いのだろう。

プルプルと唇が震えている殿下の姿に、俺こそが何もできずに唇を噛みしめた。


「これを……使ってみようと思います」


殿下が後ろに付き従う者から受け取ったのは、見慣れない道具? だった。


「これは……レンたちに探してもらっている精霊楽器の一つです。ぼ、僕は精霊に認められ契約している者ではありませんが、でも、試してみたいのですっ」


グッと殿下の強い視線に晒された俺は、その勢いに負けてコクリと頷いてしまった。


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
― 新着の感想 ―
楽しかったです。おにいたまを思うレンが可愛くて次も楽しく待ってます。
周囲が及び腰過ぎていつまでも進展しないのがね、ちとストレスだわ
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